『費用・技術から読みとく巨大建造物の世界史 (じっぴコンパクト新書)』実業之日本社

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 奈良県奈良市の東大寺にある国宝"奈良の大仏"。正しくは盧遮那仏といわれる奈良の大仏は、聖武天皇が災害や飢饉に苦しむ人民の心を和らげ、国の安泰を図るため、743年に大仏建立の詔を発し、752年に完成、開眼供養会が開かれました。その建設現場となったのは、平城京近くの若草山のふもと。高さ約16メートルの大仏ができるまでには、のべ260万の人員が必要だったといいます。

 では、この巨大な大仏をつくるために、いったいどの位の費用がかかったのでしょうか。

 建築エコノミスト・森山高至さんが監修する書籍『巨大建造物の世界史』には、こう記されています。

「大仏本体だけで500トンの銅を要したといわれる。また、表面を黄金でメッキするための金は、このころ陸奥(現在の東北地方)で発見された金を使用している。関西大学の宮本勝浩教授が試算したところ、500トンの銅、人件費、住居費で3363億5000万円かかるとし、このほかの費用も含めると、さらに費用は増えるという」(本書より)

 本書ではこの他にも、世界中の歴史的建造物をつくるために、現在の価値でいったいいくら位のコストがかかったのかを独自に試算していきます。

 たとえばギリシャのパルテノン神殿は、人件費だけで500億円。イタリアのコロッセオは、材料費と人件費だけでも1000億円以上。スペインのアルハンブラ宮殿は、1600億円程度。ちなみにこれは東京都庁の建設費と同じだそうです。

 さらにカンボジアのアンコール・ワットは、材料費だけで2000億円、人件費が3兆1500億円近くにものぼるそう。

 では再び日本に戻り、富山県にある"黒部ダム"はどのくらいかかったのか予想がつくでしょうか。堤の全高186メートル、総貯水量は東京ドームの160倍にもあたる約2億立方メートル。黒部ダムを利用した黒部川第四発電所の発電量は年間10億キロワットであり、富山県で年間に消費される電力の13分の1をまかなえるそうです。この黒部ダム、工事費用は513億円にのぼったといいます。

「黒部ダムの工事に着手したとき、関西電力の資本金は130億円だったが、最終的な工事費用の総額はその4倍近い513億円にのぼった。当時の大卒初任給は約1万6000円なので、現在の10分の1以下だ。結局、関西電力は世界銀行から133億円相当の融資を受ける」(本書より)

 ギザのピラミッド、万里の長城、マチュピチュ、エッフェル塔......。歴史的建造物をつくるためには、どのような技術が用いられ、いったいコストはどの位かかったのか。その巨額の費用からは、当時の為政者や国家の、建造物に込めた思い入れの強さが伝わってきます。