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●足りないのは覚悟!
誰もが大切だと分かっているお金。だけど思うようには手に入らなかったり、積極的に儲けることに後ろめたさを感じたり――。私たちがお金を稼ぐことを妨げているものとは、一体なんなのだろうか。

人気漫画『賭博黙示録カイジ』から経済学を学ぶ、累計34万部のベストセラーシリーズの4作目となる『カイジ「したたかにつかみとる」覚悟の話』(サンマーク出版/1,500円+税)を発表した木暮太一さんは、同書の中で「したたかさ」を持つ人が勝つと繰り返し語る。私たちに足りない「したたかさ」や必要な心構えについて聞いた。

○「理念さえあればいい」は間違い!

――ずばり、お金を稼ぐために、まずは何をしたらいいでしょうか?

まず前提として、「理念」と「利益」が対になるものだということをしっかり認識することが必要です。今、社会起業やNPOなどが流行っていて、「理念が大事」だとすごく言われている。もちろんそれも大事なんですけど、理念だけでうまくいくわけではないんですよ。でも、みんな分かっているはずなのにそこは目をつぶって、「理念さえあればいい」とか「理念がないのは全部ダメだ」みたいな空気があるんですよね。

じゃあ、街中の商店街のお店も全部理念があってやっているのかと言ったら、多分そんなお店はほとんどない。むしろ「生活のために始めた」とか「代々から引き継いでやってる」いうお店のほうが圧倒的に多いので、それらを否定することになっちゃうんですよ。

理念がなければいけないとか、崇高な取り組みをしなければならないということに強くとらわれるあまりにお金を稼ぐことに対して非常に後ろめたい感情を持ってしまっている人が僕の周りにすごく多いんです。でもそんなの、「何言ってんの?」みたいな話で(笑)。

「理念」と「利益」は両方とも大事で、片方なくなっても進まないということをまず認識することがスタートじゃないかなって思います。

――著書の中でも、日本人はお金に対して積極的になれないというか、お金の話を遠ざける風潮があることを指摘されていますが、やはりそういう気持ちがお金を稼ぐことを妨げているんでしょうか。

そうだと思います。特に「値付け」に関して、ものすごく引け目を感じている人が多いですね。相場感がある出版業界は比較的ラクなんですよ。例えばビジネス書が1冊1,500円だとしても、別に誰も「え〜!?」って言わないじゃないですか。

でも、その本と同じ内容をリアルのセミナーで語ろうとしたら1〜2日かかるし、自分の労力が全然違うので1人あたり1,500円では到底まかなえないと思います。じゃあ、それをいくらにするかというときに、相場がないからみんな値付けができない。僕がやるとしたら2日で10万円以上にしますが、みんな「いやいや、10万円なんて……」ってなっちゃう。でも10万円以上の価値があると自分で思うのであれば、どんどん付ければいいんですよ。

――多くの人は自分が出すものの価値を低く見積もってしまう傾向が強いんですか?

ものすごく強いと思いますね。特に形がないものに関しては、日本人はなかなか値付けができない。逆に形があると、全然価値に見合わないような意味の分からない値付けをしますよね(笑)。「これだけの材料を使っているから、100万円!」とか。でもモノがないと自分のさじ加減になるので、全然値段を付けられなくなるんですよね……。

○自分の仕事の価値に自信を持つには?

――「10万円の価値がある」と自分で思えない人もいると思うんです。自分が出すものに対して自信がないというか、謙遜しているというか。これも、お金に関する話を避けているからなのでしょうか? どうやったら自信が付けられますか。

「これくらいのものがいくらの価値だ」っていうのは決まってないので、ビジネス的に考えたら、相手がそれ以上の価値を認めればその値段でいいんですよね。例えば内容を完全に理解したら人生が変わるセミナーだったら、200万円でも構わないし、もしかしたら1,000万円でもいいかもしれない。

だけど、そういうことにお金を使う人がいることをまず自分で理解できていない。そもそも値付けができない人は大抵、自分でそういうお金を使ったことがないですね。その差は大きいです。高額のセミナーに参加すると、やっぱり不満が残って至らないところがすごく目に付くんですよ。それで、「あ、この程度で50万円とか設定してるのね」と思うと、じゃあ自分のやつも20万円はいけるかなって考えられようになります。

――経験を重ねていくことで、自分の出すものに対する価値の見定められるようになるんですね。

その上で、「あそこはこのくらいのレベルなんだから、自分はもっとやっていい」という自己肯定感を高めないといけないと思います。日本人は、自分の成果や商品がいくらいいものであっても、それ以上の値付けができないんですよね。日本社会において商品の値付けって、簡単に言うと"原材料費の積み上げ+社会的に認められている利益幅"というロジックに基づいて決まっているんです。

例えばICレコーダーだったら、「部品がいくらかかって、このくらい労力がかかって、デザインにこれくらいかかるから●●円」といった具合に「証拠積み上げ方式」みたいになっている。そうなると、値付けの感覚がなくなっちゃうんですよ。原材料費を積み上げて1万円っていうのと、1万円のメリットがあるから1万円っていうのは、全然尺度が違うわけです。フリーランスでもそういう考え方をしている人が多くて、「何時間かかるから●●円」などと自分の労力で設定するけど、自分の原稿がどのくらいすばらしいかについてはあんまり考えない。

――……心当たりが(笑)。

(笑)。時給換算している人が多いですよね。日本の社会がそうなってるから、世間的な尺度で考えるとそういう発想になってしまうんですよね。

●社会にはびこる「暗黙のルール」はどんどん破ろう
――こんな世の中でも、「したたかさ」を身に付けていくと、もうちょっと生きやすくなるんでしょうか?

この本の中でも書きましたが、「したたか」って漢字で書くと「強か」なんですよ。したたかさを身に付ける=強さを身に付けるということなんですけど、何が来てもはね返すようないわゆる「鉄の強さ」ではなくて、ただある一点を勝ち取るためにはあらゆる手段を探していくという強さです。

自分がとり得る手段はすべて使ってでも、自分が目指すところに行くというのが、したたかさの定義だと思います。したたかささえあれば、なんでもできる。というのは、結局みんな能力の差なんてそんなにないからなんです。あるのは「覚悟の差」なんですよね。覚悟を持ってやるかやらないかです。

僕の友人に、海外へ行って世界的な評価を受けた職人がいるんです。本人も言っていますが、最初に勉強のために現地を訪れたときは、厳密に言うと「不法滞在」なんですよ(笑)。10代で日本を離れて、働いちゃいけないのに現場でいろいろと勉強していって……今ではその国の政府から賞をもらうまでにいたっている(笑)。

もちろん彼に才能がなかったわけでは当然ないですし、圧倒的な努力をしたんですけれど、でもそこに至るまで何が違うのかなっていうと、「やるかやらないか」だけだったと思うんですよね。これはなんとしてでも最後までやるんだ、どんな手段を使ってでもやる、っていう覚悟さえあれば、何でもできるんじゃないかなって。まあ、この例はあんまり勧められるものではないんですけどね(笑)。

――ルール違反をしてでもやり遂げるという覚悟というか、したたかさがあったから、その方の「今」があるんですよね。

当然、法律は犯してはいけないのですが、世間的な常識とか定説とか、いわゆるこの社会の「暗黙のルール」みたいなものはどんどん破ってもいいと思います。例えば、誰も決めていないのに、中学を卒業したら高校に行かなきゃいけないとか。で、大学を卒業したら一括就職。そうしないと、「何でお前はしないの?」みたいになりますよね。別に何もなければ世間のレールに従ったほうがラクだし体力は温存できるんですけど、もし何かやりたいことがあるんだったら、変えてもいいんじゃないの? って。

○計画は立てても意味がない?

――私、特に明確な目標がなくのらりくらりとフリーでやっているので、ちょっと今後が不安です。

僕は、目標を無理に作る必要はないと思ってます。僕自身、あまり計画とか立てないんですよ。計画を立てても、いい意味でも悪い意味でも、結局そのとおりには行かないので。この3年くらいを振り返ってみてもやってることが変わってきていて、ベクトルが変わっちゃう。方向性自体が変わるから、全然元の目標の意味がなくなってしまうんです。

ただ、今目の前でやっていることに関しては、「もっと売上げを上げる」とか「人に対して価値を発揮する」といったことに、かなり覚悟を持ってやってます。そして、自分の発揮できる価値が高まったら、それだけ価格も上げています。

――ただ、フリーランスの人はある程度自分の仕事の値付けができますが、会社勤めをしている人だと給料が決まっているので、なかなか難しいですよね?

やっぱり、サラリーマンだとキツイですね。自分だけ覚悟を持ってやったとしても給与体系は変わらないので、自分一人だけ倍稼ぐっていうのはちょっとむずかしい。でもフリーの場合は結構な割合で覚悟を持って決めれば、収入がドンと上がります。

●"いい人"でいる限り、欲しいものは手に入らない
――著書の中で、就職活動のときに金銭面での条件を聞いたら落ちてしまったというエピソードがありましたよね。

あれは某外資系企業なんですけどね(笑)。お金の条件を聞いた瞬間に顔が変わったのが分かりましたから、相当ムカついたんでしょうね。「金の話をここで聞くとは、何たる無礼者!」と。もちろん聞き方はあって、「カネ払いってどうなってるんですか?」なんてダメに決まってるけど(笑)、仮に最低限の配慮として相手に失礼にならないようにしても、今の日本はそういうことを聞いちゃいけないって雰囲気が根強いですよね。

――いい人であるのをやめましょうみたいなことも書いてあったと思うんですけど、嫌われることを恐れていては何もできないということでしょうか。

そうですね。いい子ちゃんであろうとすると突き抜けることはできないし、みんなと一緒に丸くなるしかないと思うんですよね。おとなしくまとまるのが本当の願望だったらそれで構わないんですけど、そうじゃなければ、自分の欲しいものは自分で取りにいかないともらえないぞっていうのが現状だと思います。

○稼ぎたいなら言い訳をせず、まず動く

――例えば目標が「お金を稼ぐこと」で、でも自分に何ができるかわからないとか、何から始めたらいいか分からないと思っている人には、何かアドバイスはありますか?

分からないのか、それを言い訳にして動かないだけなのか、ですよね。実際、うまくいっている人でもやり方が分かっている人なんてほとんどいないですから。ユニクロの社長の柳井正さんが以前『一勝九敗』という本を出しましたが、結局みんな、10回勝負して9回負けてるんですよ。だから、100%完璧なプランになるまで考えぬくっていうのは、アホ中のアホだと思うんです(笑)。答えなんて出るわけがないので、結局いつまでたっても動かないということになる。だったら、何でもいいから思いついたものをやってみて、ダメだったところを次に修正すればいいんです。

――何ができるか分からないと言い訳をしていないで、とにかく動きなさいということですね!

何をやっていいか分からないって、体のいい言い訳だって思っちゃいますね。お金を稼ぐ術なんてたくさんある。そこに正解なんかないので、やるかやらないかです。

この前、ある上場企業で講演してきたんですけど、そこで最初に問いかけたんです。「成功者はかつていろいろ失敗をしてきた」というのが正しいかどうか、と。すると結構みなさん、これは正しいっていうんですよ。でも僕は次のスライドで「……は、間違い!」というのを出しました。

どういうことかというと、成功者はたしかにたくさん失敗してきているんですけど、"かつて"ではなく現在進行形で失敗している、ってことなんです。自分が失敗するとどうしても「あの人は全部うまくいってるのに、自分はうまくいかないんだ」って思っちゃうんですけど、そうじゃなくてみんな失敗しているんだから、同じなんだと。成功するまでやるかどうかが違いなんだという話をしたんです。

――なるほど。たしかに、成功者の「失敗」には気がついていませんでした。

○鶏より卵が先に決まってる!

あと、ずーっと本を読んで何もしない人。成功ノウハウ本マニア、いますよね(笑)。僕、「ビジネス書はエンターテインメントである」ってずっと思ってるんです。ジャッキー・チェンの映画を見て「自分も強くなった!」みたいな気になるのと同じで、本を読んで「俺もこうすれば億万長者だぁ!」ってなって、本を閉じて、元の日常に戻っていくという。本来はそうなってはいけないんですけど、ほとんどの人にとってはそうなっちゃうんですよね。

――会議をすると仕事をした気になっちゃう感じと似ていますね。私も耳が痛いです。

みんな少なからずそうだと思いますよ。『一勝九敗』と一緒で、100%うまくできる人なんていないので、どんなにがんばってもどんなにがんばっても9回は負けちゃうということを理解して、そういう前提で動かないと萎えちゃいますよ。

「鶏が先か、卵が先か」っていう言葉がありますよね。あれって、環境を鶏が作っていれば卵は生まれる、でも卵を最初に産んでおかないと鶏や環境が育たない……っていうことじゃないですか。でも、それを言ってる人は一生迷ってると思います。言うまでもなく「卵が先」なんですよ。誰かが産むしかないんです。産んで育てて鶏にするんですよ。そうしたら育った鶏が卵を産んでくれる。「どっかから鶏が来ないかな?」とか待ってる時点でアウトですよね(笑)。だって、絶対来ないもん。卵が先なんだよ(笑)

――肝に銘じておきます(笑)。今日はありがとうございました!

『カイジ「したたかにつかみとる」覚悟の話』
(サンマーク出版/1,500円+税)
「カイジ×経済学」シリーズの最新作。
"カイジは、ろくに努力したこともなく、
何か特別な能力や知識を持っているわけでもありません。
にもかかわらず、大事な勝負ごとの局面で力を発揮し、勝つことができます。
それは彼が、「したたかさ」を持っていたから――。"

(二ッ屋絢子)