A/バラエティ番組プロデューサー B/ドラマディレクター C/ワイドショー芸能デスク D/編成局中堅幹部 
(発言については、座談会参加者が特定されるのを避けるため、一部を客観的な言い回しに変えています)


●テレビ局内もジュリー派、飯島派、真っ二つに割れていた

──SMAP騒動では、テレビ局がジャニーズ事務所という一芸能プロに支配されていることが明らかになってしまいましたよね。象徴的だったのが各局のワイドショー。とにかく、騒動勃発から、『SMAP×SMAP』(フジテレビ)の生謝罪まで、批判どころか何も語らなかった。解散報道のときは「びっくりした」、収束した時は「解散しなくてよかった」、それだけ(笑)。テレビってタブーをたくさん抱えているメディアだとは思うけど、あの凍りつき方はちょっと異常でした。

A 今更言うまでもない話だけど、各局とも、ドラマやバラエティ、情報番組などに、SMAPだけでなく数多くのジャニーズタレントを起用してるうえ、ジャニーズ事務所がとにかくうるさいからね。タレントの扱いからワイドショーのちょっとした報道まで細かく注文をつけてきて、気に入らないことがあると、すぐにタレントを引き上げる!と脅してくる。テレビ局は今や、企画からキャスティング、共演者、プロモーションのやり方まで、ジャニーズの言いなりですよ。こんな力関係でまともな報道なんてできるはずがない。

B しかも、テレビ局は、メリー喜多川副社長、藤島ジュリー景子副社長のジャニーズ本体と、SMAPのマネージャー・飯島三智氏率いる飯島派両方に付き合いがあるから、簡単に片方に乗っかるわけにもいかない。となると、フリーズするしかない(笑)。

C うちの局では、上層部からワイドショーの制作現場に具体的な指示がおりてきたらしい。指示はふたつあって、ひとつは「独自取材はするな」、もうひとつはスタジオのコメントや「どっちを支持する?」風の街頭インタビューで世論をつくるなというもの。

D 他の局も似たような感じじゃない? 第一報直後に、各局の編成幹部にジャニーズ事務所からホットラインで指示がきたようだよ。それで、編成から報道や社会情報系の部署に話がいった。テレビが芸能系のネタで自粛するときって、現場プロデューサーがあうんの呼吸で上の意向を忖度してやるのが普通で、ここまで露骨に指示が出るのは珍しいんだけどね。それくらいジャニーズを怖がっているということですよ(笑)。

C おかげで、ワイドショーの現場は大変でしたよ。何も言えないのに、この話題を扱わないわけにはいかない。リテラも書いてたけど、コメンテーターに事前に何を言うつもりかチェックしたり、スタジオで話題にする時間を減らすために、当たり障りのないVTRを必死でつくったり。

D でも、ワイドショーの被害なんて可愛いものだよ。大変だったのは、やっぱり、ジャニーズと直接仕事をしているバラエティや音楽、ドラマの制作、それから我々編成だ。昨年の春頃、SMAPが独立するという話が最初に出て、一時はそれが確定的と言われていたのに、途中で中居たち4人だけが独立する、さらに独立は失敗して4人は干されるという話になり、最後はジャニーズに戻ることになったわけだけど、そうやって状況が二転三転するたびに、情報の確認に走り、対策を立て、体制をつくり直すという繰り返し。スポンサーからは問い合わせが殺到するし、まさにパニックだった。

A テレビ局はこの数年、ジャニーズの派閥抗争に完全に巻き込まれてたからな。我々の業界では、ジュリー派をJ1、飯島派をJ2と呼ぶんだけど、実はテレビ局の内部もJ1とJ2に真っ二つに割れている状態だった。J1の番組、つまり、嵐や関ジャニ∞の番組にJ2のSMAPやKis-My-Ft2が出ることはない。もちろん、逆もない。局の人間もそうで、SMAPの番組に一旦関わったら、嵐や関ジャニ∞の番組にいくことはない。つまり、社員やスタッフまでがJ1とJ2にはっきり色分けされ、どっちが力をもつかで、出世も変わるというような状況が起きていたわけだ。

D 局全体としても、ジュリー派か、飯島派かという色分けがありましたよね。たとえば、フジは両方と付き合いがあるけど、『SMAP×SMAP』を抱えている関係で飯島派の力が強いと言われていたし、嵐を早くから推している日本テレビは、完全にジュリー派。TBS は中居正広の番組をずっとやってきたうえ、数年前にジャニーズ本体とトラブルがあって以降、すごく飯島派の色が強くなっていた。テレビ朝日はもともとジャニーズ本体と太いパイプがあったけど、最近、飯島派に接近し始めたところだった。

A そのへんは後で詳しく説明するけど、とにかく局内にそういう構図が出来上がっていた中で、SMAPが独立、分裂するとなると、あらゆることに影響が出てくる。放映中の番組の打ち切りもありうるし、新番組が頓挫して、新しい企画が必要になったり、キャスティング、スタッフ編成をやりなおさなきゃいけなくなったり。さらには、局全体の方針までがひっくり返って、人事も大きく動く可能性もある。


●メリー氏の圧力で3年前から飯島派外しを進行させていたフジテレビ

──そこまで影響があるとは......。でも、そういえば、飯島派が強いと言われていたフジテレビが昨年6月の人事で、SMAPと飯島氏独立をにらんで、飯島派の主要スタッフを全員左遷したという話がありましたね。今回のSMAP報道で「週刊文春」(文藝春秋)が書いていましたが。

B たしかに、あの人事では、飯島派の番組スタッフが別の部署に異動になったり、関連会社に飛ばされたり、というケースが結構あった。たとえば、フジには、日本財団の笹川陽平会長の息子がいて、山下智久の『大人のKiss英語』『山Pのkiss英語』や『中居正広のISORO』をプロデューサーとして手がけ、飯島氏とも非常に近かった。SMAPが日本財団の運営する東京パラリンピック応援サポーターになったのも彼との関係がきっかけと言われていたほど。ところが、その笹川ジュニアが昨年の人事では制作現場から離れてしまったんだ。

A でも、全員が左遷、というのはちょっとオーバーだね。『SMAP×SMAP』のチーフプロデューサーの黒木彰一氏は、飯島氏が企画した『キスマイBUSAIKU!?』も手掛けており、バリバリの飯島派だが、昨年6月の人事では、編成制作局に残っていたし。むしろ、この時の人事で注目すべきなのは、左遷よりシャッフルが行われたことじゃないか。さっきも話に出たけど、今までは、飯島派、ジュリー派の間の人事交流なんて絶対にありえなかった。ところが、今回は、飯島派の番組スタッフがジュリー派の番組に異動する人事が結構あったんだよ。たとえば、キムタクの『HERO』のプロデューサーが、長瀬智也の『フラジャイル』のプロデューサーになったり......。これは、飯島氏独立をにらんで、使えるスタッフをジュリー派に移そうとしていたということだろう。

C ただ、フジではもう少し前から"脱飯島"が進行していたという見方もある。2013年に飯島氏の最大の後ろ盾である荒井昭博編成局長が外されたけど、そのあたりから始まっているんじゃないか、と。荒井氏は『夢がMORI MORI』に無名のSMAPを起用、『SMAP×SMAP』を立ち上げた"SMAP育ての親"と言われるプロデューサーで、編成局長になってからも、SMAPをさまざまな番組に起用し続けた人物。ところが、2013年6月の人事でフジ・メディア・ホールディングスの総務局長に異動になって、制作から外されてしまった。

B 荒井氏の人事の裏には、ジャニーズの"女帝"メリー氏の圧力があったと言われていたしね。当時はちょうど、ジャニーズのジュリー派、飯島派の対立が顕在化してきた頃で、人事の少し前、2011、12年くらいには、メリー氏が娘のジュリー氏のために飯島派の切り崩しを始めていた。飯島氏がプロデュースしていたKAT-TUNやHey! Say! JUMPをジュリー派に戻し、テレビ局、とくに飯島派が強いフジとTBSには露骨に圧力を加え始めていた。フジに対してはトップに近い人物にメリー氏自ら「ジュリーをとるのかを飯島をとるのか」と直談判したとも言われている。

A その頃、SMAPは停滞気味で、嵐が絶頂期を迎えていたからね。フジはそれもあって、飯島派と少しずつ距離を置き始めたようだ。事実、その後も、飯島派と目される人物たちがじわじわと外されていった。

C 飯島氏の信頼が厚かったと言われた音楽番組担当のきくち伸プロデューサーも2014年6月の異動で地上波の制作から外れていますね。きくち氏は『FNS歌謡祭』を担当していた大物プロデューサーとして知られているが、すでに13年からジュリー氏が同番組から嵐を引き上げるなど、かなりジュリー派から圧力を加えられていた。

B きくち氏については、2011年に嵐が出演した際、「口パク」を禁止して、「放送事故か」というくらいの下手な歌をオンエアしてしまった一件があったじゃない? その件で、ジュリー氏と対立が深まったという見方もあるね。まあ、口パク禁止については、AKBサイドもクレームを入れてきており、そっちとのトラブルもあったらしいが。

C でも、きくち氏の異動にともなって同氏がプロデューサーを務める草なぎ剛司会の『僕らの音楽』も打ち切りになっているでしょう。やはり、飯島派外しの意図はあったんじゃないかな。飯島氏はこのことを直前まで知らされておらす、激怒して、フジにねじ込んだとの話もあったね。

D きくち氏が外された2014年の人事では編成部長も変わったけど、新しい編成部長はAKBとも近いが、ジュリー派と非常に近い人物だった。実際、この編成部長が『僕らの音楽』や中間派のKinKi Kidsの『新堂本兄弟』を打ち切ったわけだし。この編成部長は昨年、わずか1年で異動になってしまったが、新しいポストはバラエティ室長、編成制作の脱飯島路線はそのまま維持された。

──3年前からフジが飯島派外しをしていたというのは驚きですね。フジのジャニーズ系の番組は『キスマイBUSAIKU!?』など、飯島派のほうが視聴率がよかったし、『SMAP×SMAP』にしても、フジの黄金時代を築いた看板番組。なのに、メリー氏にねじこまれただけで、こんな露骨な手のひら返しをするとは......。

B でも、結果的にはこの変わり身の早さのおかげで、ジャニーズがジュリー派に一本化された今後は対応がしやすくなったとも言える。スタッフをシャッフルしたおかげで、ノウハウも活かせるしね。編成幹部も「うちは先見の明があった」なんて自慢してたらしいよ(笑)。

A いやいや、フジはテレビ東京に抜かれるくらい視聴率が低迷しているのに、そんなことを自慢してる場合じゃないでしょう。飯島派外しの人事も、背景にはテコ入れで大規模人事を行わざるを得なくなって、そのついでに、という側面が強いようだし。

D ただ、フジのSMAP、飯島派離れは今後、一気に加速するだろう。視聴率の低落傾向が続いている『SMAP×SMAP』打ち切りもありうるかもしれない。もともと『SMAP×SMAP』については、昨年くらいから予算削減の命令が出るなど、かなりプレッシャーをかけられていた。打ち切り説も何度か流れていたしね。

C スポーツ紙などは、騒動後、『SMAP×SMAP』で始まったメンバーの好きな曲を歌うという企画がジュリー副社長のアイデアだとして、ジュリー氏が陣頭指揮をとっているかのように報道していたが、あれは、ただのキャンペーン。実際は、歌のコーナーも昔やったことのある企画の焼き直しで、ジュリー氏はほとんどタッチしていない。というか、最近の『SMAP×SMAP』って、再放送と未放送の過去映像特集ばかりでしょ。ビストロの観覧も入れてないし、スタッフも本人たちもやる気を完全に失っている。タイミングを見計らって打ち切り、という可能性はかなり高いんじゃないか。

──ここにきて、昨年の人事では残っていた、『SMAP×SMAP』のチーフプロデューサーの黒木彰一氏も更迭されたことが、「東京スポーツ」の取材で明らかになし、打ち切りの可能性はますます高まりましたね。ただ、今のフジに代わりになる番組を作れるとも思えない。SMAPとともに、フジの時代が完全に終わるということになるかもしれません。


●ジュリー派と決裂のTBSは「中居を守る」と宣言したが...

B ところで、この手のひらを返したフジと対照的だったのがTBSだね。TBSもフジと同様、SMAP騒動前から、飯島派が強いと言われていた局だったんだ。音楽・バラエティでは、『中居正広の金曜日のスマたちへ』をずっとやっているし、稲垣吾郎の番組もある。ドラマもキクタクが定期的に日曜劇場に出ているうえ、2012年の中居&Kis-My-Ft2玉森裕太の『ATARU』や同じくキスマイの藤ヶ谷太輔&北山宏光の『ビギナーズ!』、山下智久&香取慎吾の『MONSTERS』など、飯島派のタレントが続々キャスティングされてきた。そんなところにSMAPに独立の動きが起きて、どうするんだろう、と注目されていたんだけど、少なくとも、音楽・バラエティについては全く路線を変えようとしなかった。

A 象徴的だったのは、昨年6月の『音楽の日』だね。この番組は東日本大震災を契機に始まった大型音楽特番で、中居正広が司会。ジャニーズからはSMAPはじめ飯島派のグループしか出ないことで有名だったんだが、2015年もSMAP、Kis-My-Ft2、Sexy Zoneと飯島派のみの出演、ジュリー派は一切出演なしだった。

C それどころか、独立が失敗に終わった後の今年2月に、『中居正広の金曜日のスマたちへ』のタイトルを『中居正広の金曜日のスマイルたちへ』に変更した。TBSはSMAP問題と関係ないとコメントしているが、これは明らかに、もし今後SMAPという名前が使えなくなっても番組と中居の出演を続行できるよう配慮したものだ。

A こうした方針を打ち出したのは、『金スマ』のプロデューサーでもある阿部龍二郎制作部長らしいね。阿部氏はTBSの音楽・バラエティ制作のトップで、中居が司会の『うたばん』を立ち上げたプロデューサー。飯島氏とももちろん、中居との信頼関係が厚い。これまでも『火曜曲!』『UTAGE!』『Momm!!』そして『金スマ』と、中居司会の番組にはほとんどかかわっているし、『吾郎の細道』『Goro's Bar』『ゴロウ・デラックス』など、SMAPの他のメンバーの番組も積極的につくってきた。さっき話に出た『音楽の日』も阿部氏が立ち上げたものだしね。

D 阿部氏は、さっき言ったSMAPの独立・解散騒動を受けて『金スマ』のタイトルを変える際、「うちは何があっても中居を守る」と宣言したらしいしね。

A 実は阿部氏は、過去にジュリー氏、メリー氏とトラブって、決裂状態にあるんだよね。フジの時も話が出たけど、2012年頃に、メリー氏は飯島派が強いフジとTBSに圧力をかけていた。おそらく、飯島派の番組を減らして、ジュリー派の番組を増やせというような話だったと思うんだが、しかし、阿部氏がそれに応じなかった。そのため、阿部氏の手がけた特番を嵐がドタキャンするという事件が起きた。

D 2012年のクリスマスに放映された、中居司会のスペシャル音楽番組『火曜曲!〜聖なる夜の4時間生ライブSP〜』でしょ。嵐がゲスト出演するはずだったのが、メリー氏、ジュリー氏の意向で引き上げてしまったという。J1とJ2の共演NGというのは、ここから始まったという話もある。

C しかも、2013年3月には、嵐の冠番組『ひみつの嵐ちゃん!』が打ち切りになった。『ひみつの嵐ちゃん!』は嵐がプライムタイムのバラエティで初司会となった記念すべき冠番組だったんだけどね。これも、メリー氏が激怒し、嵐を引き上げたと聞いている。

A 普通ならここまでいくと、局側が土下座して許しを請い、番組存続となるはずなんだが、阿部氏はそれでも、ジャニーズの要求には応じなかった。TBSとしても阿部氏の手がけた中居の番組はバラエティ班の稼ぎ頭だったし、阿部氏の局内の発言力も大きかったからね。そのためTBSは仕方なくワイドショーを管轄する情報制作局担当で『櫻井有吉アブナイ夜会』をスタートさせることでジュリー派と話をおさめた。

B その後、ジュリー派とのパイプは情報制作局に移り、2014年にスタートし低視聴率であっという間に打ち切りになった『いっぷく!』に、その後番組の『白熱ライブ ビビット』でもMCに国分太一を押し付けられることになるんだが......。

A でも、最後までメリー氏の圧力に屈しないで中居を守る、というのは、テレビマンとは思えない、骨のある対応だよね。

B ただ、この路線がどこまでもつかはわからないけどね。ジュリー派とのパイプをもつ情報制作局からは「バラエティ班は何を考えてるんだ」と風当たりが強いし、ドラマ班は、今回のSMAP独立の動きを察知して、飯島派からジュリー派にシフトしつつある。

C そうそう。日曜劇場に、嵐の松本潤を出すんだよね。松本はもともと今、フジで放映されている長瀬主演の『フラジャイル』に主演する予定だったんだが、この話が急遽決まって、ドタキャン。代わりに長瀬がやることになったらしい。

A バラエティもこれからはどうなるかわからない。中居のマネジメントだって、これからはジュリー派が握るわけだし、『金スマ』の視聴率がちょっとでも落ちたら、阿部氏が外され、一気にジュリー派になる可能性もある。あと、中居が独立する可能性だって残されているだろうし......。そうなった時に、TBSはどうするのか。いずれにしても、まだ、しばらくはいろいろありそうだね。

──なんだか、テレビ局のドロドロした裏側をいっぱい聞かされて胸焼けがしそうですが、まだ、日本テレビ、テレビ朝日、NHKの話が残っているんですよね。後編ではこの3つの局のジャニーズ支配の実態を話してもらうので、引き続きよろしくお願いします。
(構成/編集部)