今さらながらアドラーに学ぶ――「トラウマ」を言い訳にするビジネスマンは一生うだつが上がらない
【石原壮一郎の名言に訊け】〜アドラーの巻

Q:高校大学とバレー部に入っていたが、バリバリの体育会系で先輩の言うことには絶対服従だった。そのトラウマなのか、今でも「先輩」という立場の人を前にすると、とにかくビビッてしまう。「もっと普通に接すればいいんだよ」と注意されることもしばしばだが、そう言われるとまた激しく恐縮してしまって……。先輩とフランクに接している同僚がうらやましい。もう、どうにもならないんだろうか。(静岡県・26歳・販売)

A:「先輩」っていう響き、なんだか憧れますね。学園ラブコメマンガの読みすぎでしょうか。いや、ぜんぜん違う話ですいません。いまコーヒーの出前で、喫茶「いしはら」と同じビルに入っている雀荘に来てるんですけど、ちょうどいい人がいました。町内の老若男女から「先輩」と呼ばれているダイスケさんです。ダイスケ先輩、どう思いますか。

 なんだよ、見てわかるように、俺いま麻雀してる最中だし。おっと、それポン! なに? しながらでいいからって。わかったよ、答えりゃいいんだろ。こういうタイプのヤツは、先輩のイメージを悪くするだけで、先輩界にとっても迷惑な存在だからな。俺たち先輩は、べつに威張りたいわけでも、ビビッてほしいわけでもねえんだよ。

 こいつの言うことにも一理ある。体育会系の世界で過ごした経験は、たしかに影響が大きいかもしれない。だけど考えてみなよ。会社の先輩とバレー部の先輩は、ぜんぜん別人だよな。「もっと普通に接してくれ」って言われているらしいけど、「先輩」という立場に対する考え方も、ぜんぜん違うよな。いっしょにするのは乱暴すぎるし、けっこう失礼だよ。

 アドラーって心理学者のこと知ってるか。その考え方を元にした『嫌われる勇気』って本が大ベストセラーになったり、最近も続編の『幸せになる勇気』ってのが出たりしてんだけど、俺けっこうハマッてんだよね。アドラーは、たとえばこんなことを言ってる。

「人は過去に縛られているわけではない。あなたの描く未来があなたを規定しているのだ。過去の原因は『解説』になっても『解決』にはならないだろう」

 アドラーは「トラウマ」ってヤツを否定してるんだよ。元体育会系のヤツは、全員がおまえみたいに「先輩恐怖症」になるのか。ならないだろ。ってことは、お前が心のどっかで望んで「先輩を怖がる自分」になろうとしてるんだよ。そのほうが楽チンだからなのか、元体育会系ってことにプライドの拠り所を見つけようとしているのか、理由は知らねえけどな。

 過去の経験のせいにしたところで、何も「解決」しねえよ。本気でいまのままじゃいけないと思っているなら、「先輩と普通に接することができる自分になる」という未来をイメージして、そこに向かって歩き始めりゃいいんだよ。俺も、この半チャンでトップを取ることを目指して、せっせと歩いてるんだよ。あっ、テンパった。リーチ!

 アドラーは、こうも言っている。「人生が困難なのではない。あなたが人生を困難にしているのだ。人生はきわめてシンプルである」。過去がどうしたとか言って話をややこしくしたり、変われない理由を一生懸命に探したりしてないで、なりたい自分になればいいじゃねえか。よし、一発ツモ! ア、ドラー! ……ん? これを言わせたいから、わざわざ雀荘って設定にしやがったな。

【今回の大人メソッド】
◆「トラウマ」とか言っている人は変わる気がない

 こういう言い方をすると、怒る人もいそうですね。しかし、過去がどうであろうと今の環境がどうであろうと、誰にだって「変わる自由」はあるはずです。そりゃ、自分や状況を変えるのは容易ではありませんが、「トラウマ」を言い訳にしたり変わる難しさを解説したりしていても仕方ありません。本気で変わりたいなら、とにかく行動を起こしましょう。

【相談募集中!】ツイッターで石原壮一郎さんのアカウント(@otonaryoku )に、簡単な相談内容を書いて呼びかけてください。

いしはら・そういちろう/フリーライター、コラムニスト。1963年三重県生まれ。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』(扶桑社)でデビュー。以来、さまざまなメディアで活躍し、日本の大人シーンを牽引している。『大人力検定』(文春文庫PLUS)、『大人の当たり前メソッド』(成美文庫)など著書多数。近年は地元の名物である伊勢うどんを精力的に応援。2013年には「伊勢うどん大使」に就任し、世界初の伊勢うどん本『食べるパワースポット[伊勢うどん]全国制覇への道』(扶桑社)も上梓。最新刊は、定番の悩みにさまざまな賢人が答える画期的な一冊『日本人の人生相談』(ワニブックス)