2016年2月1日。元・TBSドラマプロデューサーの柳井満さんが亡くなった。

武田鉄矢主演の「3年B組金八先生」シリーズをはじめ、長渕剛主演の「家族ゲーム」「親子ゲーム」「とんぼ」など、「演劇以外の世界」から連れてきた人を主役に抜擢するという、意外性のあるキャスティングで数々の人気ドラマをプロデュースしてきた柳井さん。

その辺の話は前回書いたが、もちろん主役以外の脇役陣をセレクトする目も、かなり鋭かった。「金八先生」の生徒役などは、そのいい例だろう。

杉田かおる、鶴見慎吾、三原じゅん子、小林聰美、沖田浩之、ひかる一平、伊藤つかさ、川上麻衣子、浅野忠信、萩原聖人、小嶺麗奈、上戸彩、中尾明慶、斉藤祥太、本仮屋ユイカ、濱田岳、平愛梨、岩田さゆり、忽那汐里……等々、金八の生徒役から人気俳優となった人たちは数知れず。

次期・朝ドラ「とと姉ちゃん」のヒロインに決定している高畑充希も金八の生徒出身(第8シリーズ)なのだ。

ほぼ素人の状態から半年以上にわたる「金八先生」の撮影に参加し、役者として鍛え上げられた……ということもあるだろうが、無名の新人たちの中から実力を持った原石を見つけ出す、プロデューサー・柳井さんの選球眼も大きかったといえるだろう。

そして金八の生徒役といえば、外せないのがジャニーズ事務所の新人たちだ。


実は現在のジャニーズ事務所の隆盛の陰には、柳井さんと「金八先生」が大きな影響を与えている。

柳井さんに見いだされた田原俊彦、野村義男、近藤真彦


現在では芸能界において一大勢力を誇っているジャニーズ事務所も、1970年代には低迷期を迎えていた。

人気アイドルグループのジャニーズ、フォーリーブスは既に解散してしており、新人アイドルの売り出しにもことごとく失敗。看板アイドルだった郷ひろみは、バーニングプロダクションに移籍してしまった。

そんな時期に新番組「3年B組金八先生」(TBS系・1979年)の生徒役オーディションがあると聞きつけた、ジャニー喜田川が突然「今、TBSに来てるから、とりあえず会ってください」と柳井さんに電話してきたのだ。

実はその時、既に生徒役のオーディションは終了しており、合格者も決まっていたのだが、とりあえず会うだけ会ってみたところ、それまでオーディションで散々見てきた児童劇団出身の子たちとは違った明るい雰囲気を持つジャニーズ事務所の子たちに目を引かれたという。

その時、ジャニーさんが連れてきていたデビュー前の新人アイドル10数人の中から柳井さんが選んだのが、田原俊彦、野村義男、近藤真彦の3人だったのだ。

柳井さんがこの3人を選んだから金八がヒットしたのか、金八に出演したからこの3人が売れたのかは分からないが、「金八先生」の注目度が高まるとともに、ジャニーズ事務所から選ばれた3人の人気も爆発する。

「悪ガキトリオ」「金八トリオ」などと呼ばれていた3人は、後にジャニーさんから「たのきんトリオ」と名づけられ、それぞれ大ヒット曲を連発。ジャニーズ事務所復権の起爆剤となった。

ジャニーズのタレントもオーディションで選ぶ!


その後も、柳井プロデュースの「2年B組仙八先生」(TBS系・1981年)にシブがき隊の3人が生徒役で出演(当初は「仙八トリオ」と呼ばれていた)。「金八先生」の続編シリーズにも毎回、ジャニーズ事務所からデビュー前の新人が選ばれている。

ひかる一平、森且行(元・SMAP)、長野博(V6)、風間俊介、亀梨和也(KAT-TUN)、増田貴久(NEWS)、加藤シゲアキ(NEWS)、薮宏太(Hey!Say!JUMP)、八乙女光(Hey!Say!JUMP)などなど……。

「3年B組金八先生・ファイナル〜最後の贈る言葉」(TBS系・2011年)で金八先生最後の教え子となったのも、Hey!Say!JUMPの岡本圭人だった(父親の男闘呼組・岡本健一も金八先生スペシャル4に出演している)。

現在のジャニーズ事務所のイメージからすると、事務所側が売り出したい新人をゴリ押しして番組に送り込んでいそうなものだが、「たのきんトリオ」以来の信頼関係があるからか、「金八先生」に関してはジャニーズ事務所のタレントであってもオーディションを受けさせて、金八のイメージに合った人が選ばれているという。

SMAPの中井正広、木村拓哉、TOKIOのメンバーが(おそらく第3シリーズの)生徒役オーディションで落とされていた、というのは金八ファンの間では有名な話だ。

ちなみに「金八先生」第1シリーズには、たのきんトリオとともに、ジャニーズ事務所・次期社長候補として何かと話題の藤島ジュリー景子も生徒役として出演している。

タレントを売り込むついでに、ちゃっかり自分の姪っ子も売り込んでいるあたり、ヌケメがない!

ジュリーさんの演じる越智はるみは、ヒステリー全開で暴れ回るという、なかなかデンジャラスな生徒役なので、一見の価値アリだ。

今後の「ドラマのTBS」に期待


俳優としての武田鉄矢、長渕剛。さらに金八の生徒役からも数多くの新人俳優、ジャニーズ事務所の新人タレントを世に送り出してきた名プロデューサー・柳井満さん。

日本ドラマ史のみならず、日本の芸能史においても重要な役割を担っていたことは間違いないだろう。

そんな柳井さんの死は残念でならないが、TBSには柳井さんのDNAがちゃんと残っている!

「金八先生のようなドラマを作りたい!」いう思いを抱いてTBSに入社し、「金八先生」第5シリーズから第7シリーズまでチーフディレクターを務めた福澤克雄だ。

「GOOD LUCK!!」(TBS系・2003年)「華麗なる一族」(TBS系・2007年)MR.BRAIN(TBS系・2009年)「南極大陸」(TBS系・2011年)といった、TBSでのキムタク主演ドラマをはじめ、最近では「半沢直樹」(TBS系・2013年)「下町ロケット」(TBS系・2015年)とヒット作を連発し、今、一番視聴率が取れるといわれているドラマディレクターだ。

確かに「半沢直樹」「下町ロケット」あたりを見ると、最近のドラマにありがちな、とりあえず人気タレントをいっぱい集めてきて……というドラマとは一線を画した骨太なキャスティングが印象的で、柳井流のドラマプロデュース術を思わせる。

「ドラマのTBS」と呼ばれながらも、TBSのドラマ枠が縮小され続けているのが気になるところだ。
(北村ヂン)