ダイエットに失敗するとお金が飛んでいく

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肥満の人に運動させるには何が一番効果的か。その最終回答ともいえる決め手がわかった。それは、「名誉や報酬を与えるよりも罰金を科すことだ」という研究成果を米ペンシルバニ大学のチームがまとめ、米医学誌「Annals of Medicine」(電子版)の2016年2月16日号に発表した。

「人間は儲けることより、損をしないことを重視する」という経済学の行動心理に根ざした方法だというのだが......。

ヤル気が出るのは「賞金」か「名誉」か「罰金」か

「肥満大国」米国では、国を挙げて肥満解消に取り組んでおり、企業もあの手この手で従業員に運動をさせるプログラムを推進中だ。どうすれば従業員がヤル気を出してくれるかが経営者の悩みの種だが、同大のミティシュ・パテル助教授は面白い方法で従業員の「ダイエット意欲」を調べた。

ある企業の協力を得て、肥満度を示す体格指数「BMI」が27以上の肥満の従業員281人に、1日7000歩のウォークを目標とする健康増進プログラムに参加してもらった。期間は90日間である。その際、目標を達成すると「ほうび」に何が得られるかで、参加者を次の4つのグループに分けた。

(1)目標達成日ごとに1.40ドル(約160円)の賞金をもらえる。全日数で目標を達すると総額126ドル(約1万4400円)の賞金になる(=賞金方式)。

(2)目標達成日ごとに、賞金5ドル(約570円)か50ドル(約5700円)が当たるくじを引くことができる。ただし、くじに当たる確率は非常に低い(=ギャンブル方式)。

(3)賞金42ドル(約4790円)を前払いでもらっておく。目標を達成できない日ごとに罰金として1.40ドル(約160円)ずつ引かれる。3日に1日の割合で目標を達すると収支はトントンだが、それ以下だと出費に(=罰金方式)。

(4)最終日に歩数計と記録証のみをもらう(=名誉方式)。

その結果、4つのグループのうち目標達成率はいちばん低いのは(4)の名誉方式で30%だった。続いて低いのが(1)と(2)の賞金方式・ギャンブル方式で35%。群を抜いて高かったのが(3)の罰金方式で、実に45%だった。賞金をもらうより罰金をとられる方が肥満者の「ヤル気」を刺激したわけだ。

経済学のプロスペクト理論と一致した肥満者の心理

今回の研究について、米の金融・軍事戦略シンクタンク「ランド研究所」のソーレン・マッティ研究員はこう分析している。

「この結果は、人間の行動心理と一致しています。経済学では『プロスペクト理論』としてよく知られた現象で、人間は同じ100ドルの金額でも、その額を獲得することより損失しないことの方を重視します。だから、減量プログラムも罰金制の方が報酬制より効果はあがりますが、企業は従業員との関係上、罰金制は後味が悪いので採用するのは難しいでしょう」

しかし、研究リーダーのパテル助教授は「禁煙プログラムでも罰金システムを取り入れて成功した例があります。記録証などの名誉を与える方式では成績は良くないので、金銭的な動機付けは必要です」と語っている。

アナタもいっそ、ダイエットに失敗したら○○万円を払うと宣言する「罰ゲーム」を始めてはいかが。