下野紘 ソロプロジェクト始動!「笑顔を封印しての撮影は…やっぱり大変でした(笑)」
今年デビュー15周年を迎える人気声優の下野紘。2012年に第6回声優アワード歌唱賞を受賞(うたプリ名義)するなど、シンガーとしても高く評価されてきた彼が、ついにソロアーティストとしての活動をスタートさせた。アーティスト写真では笑顔を封印。革ジャンを身にまとい、強い眼力でこちらを見据える表情からは、覚悟と決意が感じられる。インタビュー中、何度も飛び出した“新しい下野紘”は何を意味するのか――?本人の口から解き明かしてもらおう。

撮影/後藤倫人 取材・文/照沼健太 
スタイリング/SUGI ヘアメイク/中島康平 (UNVICIOUS)
衣装協力/Roen produced by HIROMU TAKAHARA(tel.03-6303-4944)、原宿VILLAGE(tel.03-3405-8528)、glamb Tokyo(tel.03-5770-5683)


ソロデビューは“偶然”の重なり合わせ



――3月16日発売のデビューシングル『リアル-REAL-』で、ソロアーティストプロジェクトがスタートします。今回の決断に踏み切った理由から教えてください。

今までとは違う“新しい下野紘”を出していけるチャンスがあればやってみたいと、漠然と考えていました。ありがたいことに、デビューしてみないかとお誘いいただく機会も何度かありまして。でも、経験値が足りないと思って断念していました。一歩踏み出す勇気もなかったんです…。

――その気持ちが少しずつ変化していった?

いろいろ経験を積ませてもらっているうちに、声優としてもうひとつレベルアップしていきたい、新しいことに挑戦したいという思いが強くなりました。そのタイミングでちょうど、ソロアーティストとして活動しないかとお声がけいただきまして。

――声優デビュー15周年という“アニバーサリーイヤー”を意識しての決断だったんでしょうか?

いえ、違うんです。このお話をいただいて進めていくうちに「そういえば15周年だったね」と気づいて(笑)。いろんな偶然が重なっているんですが、これも運命だなと。

――確かに、運命的ですね!

正直、不安な部分もあったんですけど、スタッフとチームを組んで一緒にやっていきましょう!と言ってもらえたので、決断することができました。

――今回のアー写を見て、普段の下野さんから連想される、優しさ溢れるにこやかな笑顔が封印されていることに驚きました。

声優をしている普段の下野紘の「明るい」「笑ってる」「楽しそう」というイメージ自体を変えていこうとは思っていないけど、声優の下野紘はあくまで自分の一側面。だからアーティスト活動をするとなったときに、今までとは違う一面も見せていきたいなと思って。

――笑顔を封印しての撮影は難しくなかったですか…?

やっぱり大変でしたよ(笑)。スタッフさん含め、現場全体の意識として「笑っちゃダメ」というのがあったんですけど、「笑っちゃダメ!絶対に笑っちゃダメ!」って意識すればするほど、「押すなよ!絶対に押すなよ!」みたいになってきて…。気持ちを切り替えるのが大変でした(笑)。

――私たちが“普段の下野さん”だと思っている、にこやかな下野さんと、今回のクールな下野さん。実際の下野さんは、どちらのイメージに近いんでしょうか…?

僕の持論に“厳しくつらい経験をしてきた人ほどよく笑う”というのがあって。誰しも明るい部分だけじゃなく、ネガティブな部分だって持ってると思うんです。僕も同じですよ。




アーティストとして初挑戦の連続



――普段はどんな音楽を聴かれるんですか?

小学校高学年くらいからロックを聴き始めて、最初に買ったのはTHE BLUE HEARTSさんの『TRAIN-TRAIN』でした。そこからポップなのも聴くようになって、槇原敬之さん、L'Arc〜en〜Cielさんなど、どんどん広がっていった感じです。

――最近とくにハマっているアーティストはいますか?

高橋優さんは、曲も好きですけど、詞がとても印象的で。ものによっては「そこまで書く?」というようなところまで書いていて、胸に刺さるんですよね。

――歌詞をしっかり読み込まれるタイプなんですか?

歌詞カードを読むのは昔から好きです。行間を読んで、自分なりに何か感じとろうとしてみたりします。

――『リアル-REAL-』では作詞にも挑戦されていますね。

初挑戦です。作詞家のRUCCAさんと一緒に作りました。

――共同での作詞、どのように進めていったのでしょうか?

赤ペン先生みたいな感じといいますか…(笑)。メロディーに合わせてワンフレーズ書きつつ、「僕はこういうことを感じていて、こういうことを伝えたい」と相談し、それを受けてRUCCAさんが書いてきてくれたものを僕が見て「もっとこうしたい」とさらに書き足し、それをまたRUCCAさんに見てもらって…みたいな作業を繰り返しました。

――今回は曲が最初にあったんですね。

はい。疾走感がある派手めな雰囲気だったので、ネガティブなニュアンスの歌詞でも暗くなりすぎないし、いいのかなって。自分で書く以上は、言いたいことを全部書き出してやろうと思いました。

――下野さんが歌詞を通して伝えたかったことというのは…?

壁にぶち当たったりつらい目にあったりしても、そこにとどまるのではなく、言葉にしたり考え方を変えてみたり何かしら行動を起こすことで、ピンチがチャンスに変わる。そういうことを伝えたいと思いながら、歌詞を書きました。

――作詞はスムーズに進みましたか?

いやいや…。家で書くことが多かったんですが、フレーズがパッとひらめくのは夜が多くて。何を伝えていこう?どういう言い回しにしよう?…って考え始めたら興奮して目が冴えちゃったり。一度起きたら「もう寝られないから考えよう!」みたいな感じでしたね。

――タイトルですが、作詞をしながら決まったのでしょうか? それとも先にタイトルを?

詞を書いてからです。作詞中から「曲名どうする?」という話はずっとしていたんですけど、最後の最後まで迷って決まらなかったですね。スタッフと一緒に作っていこうという思いがあったので、自分だけでなく、みんなが納得できるポイントまで持っていきたくて。

――では、スタッフの意見も汲みつつ?

曲や詞に関してはスタッフみんなの意見が割とすぐに一致したんですが、タイトルについては意見がバラバラでした。それこそ「英語がいい」っていう人もいれば、「漢字にしよう」っていう人もいたりして。

――なるほど。最後の決め手は何だったんでしょうか?

いろいろ話し合った結果、「詞の中のフレーズを持ってきたほうがいいんじゃないか?」ということになり、「リアル」に決めました。