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●なぜ電子帳簿保存法は導入が進まなかったのか?
電子帳簿保存法におけるスキャナ保存制度の規制緩和が施行されたのが2015年秋。領収書を電子化してしまえば紙媒体とはおさらばできる制度として注目されたが、タイムスタンプの付与が必要なことと、読み取りデバイスがスキャナのみという点で、結局ハードルが残ってしまった格好となっているのが実情だ。しかし、今回この残ったハードルも低くなるという噂が聞こえてきた。出張・経費管理のクラウドソリューションで世界的なシェアを持つConcurの日本拠点であるコンカーの代表取締役社長を務める三村真宗氏に真偽について話を伺ってきた。

○導入が進まない電子帳簿保存法

「電子帳簿保存法は、10年前からある法制度ですが、適用しているのが130数社。それらの会社も請求書や領収書以外の用途で使っていて、領収書で適用させているという会社を、私は聞いたことがありません」(三村氏)

2015年秋、話題となった電子帳簿保存法の規制緩和だが、すぐに導入する企業も少なく、様子見状態だったのが実情だ。「2015年9月に始まった規制緩和ですが、実際にはそれでも高いハードルが残ったままだったのです」と三村氏は言う。

このハードルと呼ばれるものは、施行当初は、現金3万円の上限、電子証明書の添付、タイムスタンプ、スキャナ対応という大きく4つに分けられる。前回の規制緩和によって、前者2つが取り除かれたが、実際にはタイムスタンプの必要性と、スキャナのみが読み取りデバイスとして許可されるという点が残った。

「タイムスタンプは提供業者も少なく、自社システムに導入するとなると使用料のほかに、システム対応もしなくてはなりません。また、スキャナでの読み取りですが、そもそも領収書がより多く必要になる部署は社外で活動する営業部門であったりするわけですから、わざわざ会社に戻ってから読み取らなくてはならないのです」と語る三村氏。規制緩和といいつつも、実情に沿っているとは言いがたい部分が残ってしまったゆえに、一気に広まる気配がなかったのもうなずけるところだ。

「ですが今回、さらなる規制緩和によって、残りの2つも考えずに済むようになります。これによって電子帳簿保存法に対応しようという企業は劇的に伸びると思われます」と笑顔をみせる三村氏。昨年に続く、新たな電子帳簿保存法の規制緩和とはどのようなものなのだろうか?

●スマホで撮影した領収書はその場で捨てられる時代へ
○技術の進歩と政府の動きが合致

「私どもが国政に訴えかけたところ、非常に前向きに意見を聞いてもらえました。その結果、電子帳簿保存法のハードルとなっていた残りの2つである、タイムスタンプの付与、そしてスキャナのみの読み取りという部分も緩和されることがほぼ決定したのです」と語る三村氏は、自身が各関係省庁と対話してきたまさにその本人なのだ。

タイムスタンプについての付与は省かれないが、これはサービス提供ベンダーが工夫をすることでリーズナブルに提供できるのだという。「私たちが提供しているクラウドサービスを例にすれば分かりやすいと思いますが、自社でタイムスタンプを導入するのはコスト面でもシステム面でも負担が大きいですが、クラウドサービスなら私たちサービス提供者がタイムスタンプを導入すればよいのです。利用者がシステム改修を行う必要がありませんし、1件当たり幾らといったように費用を分散徴収することで、コスト面でもかなりの削減が期待できます」と三村氏は語る。

例えばコンカーの場合、現在500社以上の契約があるが、年度を経るごとにこの数は増加傾向にあるため、契約企業をまとめてディスカウントすることで、タイムスタンプ1枚当たりのコストを無理なく下げることができるというわけだ。もちろんこれはクラウドサービスならではの特長となるが、現在会計経理システムをクラウドに持つ企業も年々増えている現状をみれば見逃すことができないメリットとなるはずだ。

また、スキャナのみが読み取りデバイスだった件についてはスマートフォンやデジタルカメラでの撮影も許可されることになる。「これは大きな前進です。これを認めてくれるだけでも大きなインパクトとなり得ます」と三村氏。以前は、領収書のオリジナルサイズを重要視していたため、スキャナがクローズアップされていたが、領収書のOCR読み取りなどをモバイル環境で可能にする技術力がすでに存在することなどを理由に、紙サイズに固執することを廃止したのだ。

○「経費精算は会社で」がなくなる

「試算したのですが、領収証の整理に一人当たり月30分ぐらいは使っているわけです。これはバカにできない数値です。モバイルワーカーを増やそうと、ワークスタイル変革などといわれている割には、領収書の手続きは既存のままというのは、なんとももったいない話だと思います」と三村氏。タイムスタンプについては正当性、妥当性の担保にどうしても必要ということで廃止には至らなかったが、クラウドサービスの普及によって、使いやすい土壌が育っていることに間違いはない。

この規制緩和については平成28年度税制改正大綱でも触れられており、2016年3月末に公示、9月末に施行、9月30日から申請が開始され、2017年の1月1日から本格的な運用が始まる予定になっている。「今回はかなりの企業が前向きに対応することが予想されます。すべての企業、すべての働く人が恩恵を受けられる制度になりますから、非常にインパクトは大きいはずです」と三村氏は言う。

領収書の原本を長期間保存しておくというのが当たり前だった領収書の取り扱いが、経費管理クラウドがあれば、画像として撮影してそれを経費担当部署へ送信するだけになる電子帳簿保存法。話の中でも触れたとおり、会計・経理におけるクラウドサービスの活用が前提にはなるが、いよいよ現実のものにできるというわけだ。負担の大きかった制度だけに、解放されるメリットの大きさもまた計り知れないだろう。

「弊社の製品ですと、『Concur Expense』に領収書をスマートフォンで撮影して記録する機能が備わっています。これに加え法改正に合わせるための製品開発を現在進めています」と三村氏は言う。もともと、モバイルデバイスを使って領収書を撮影、自動取り込みによって経費計算ができる仕組みや、クレジットカード、交通系ICカード連携ができる、いわば経費計算に特化したサービスだっただけに、改正後の電子帳簿保存法への対応も素早く行えるのだ。

「これまで把握しづらかった経費の見える化にもつながりますし、使用する社員らにとっても負担を大きく削減することができるはずです。メリットが大きい法改正ですから、早くに取り組むほど、その恩恵も受けやすくなります」と三村氏は語る。

今年中に施行されることが予定されている電子帳簿保存法のさらなる規制緩和。早期から同社のConcur Expenseのような改正後の電子帳簿保存法に対応するクラウドサービスを活用することで企業の経費計算に大きく改革をもたらすはずだ。

(エースラッシュ)