ベビーパウダーやファンデーションの使用で卵巣がん! 米で約80億円の損害賠償命令

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 2月23日、ロイター電は衝撃的なニュースを伝えました。

 米ミズーリ州巡回裁判所の陪審は、22日、医薬品・日用品大手メーカー「ジョンソン・エンド・ジョンソン」(J&J)に対して7200万ドル(約80億円)の損害賠償支払い命令を出したと報じたのです。

 卵巣がんを引き起こす恐れがあると指摘されている成分(タルク)の入った「ベビーパウダー」などの製品を、警告表示なしに数十年にわたって販売していことに対する損害賠償請求がミズーリ州巡回裁判所だけで約10000件も起こされたのです。

 今回、7200万ドルの損害賠償支払い命令が出たのは、長年にわたって同社の「ベビーパウダー」「シャワートゥシャワー」を使用した結果、卵巣がんで死亡した女性の家族が起こしていた訴訟でした。同様の訴訟は、ミズーリ州だけではなくニュージャージー州でも200件起こされています。
 
 また、ロイター電は、J&J社の広報担当者の「われわれは消費者の健康と安全性については十二分の責任をもっており、裁判の結果には失望している。原告の家族に対しては気の毒に思うが、化粧品用タルクの安全性は数十年におよぶ科学的証拠によって裏付けられていると確信している」との、コメントを紹介しています。
 
日本のメーカーが戦々恐々、ファンデーションや口紅、アイシャドウなどにも

 今回のミズーリ州での裁判でJ&Jに賠償支払い命令が出たことは、他州での裁判にも大きな影響を与えることは必至です。
 
 そして、なによりもこの裁判の結果に震撼しているのが日本の大手トイレタリーメーカーのはずです。専門家から卵巣がんの原因になる可能性があるとの指摘がある原料のタルクは、「ベビーパウダー」「白粉(おしろい)」「ファンデーション」「口紅」「アイシャドウ」「保護クリーム」「フェイスマウス」「パック」など、広範囲に使用されています。しかし、タルクの安全性を巡っては日本でも20数年来論議が続いています。
 
 タルクは滑石(かっせき)を微粉化したもので、白色顔料として使われています。また同じ白色顔料の酸化チタンのつや消しにも利用されています。主成分はケイ酸マグネシウムで、化粧品には古くから白粉用、メイクアップ用の下地として使われてきた経緯があります。

 肌を白く見せる効果のほか、タルクを皮膚に塗ると滑りが良くなり、吸着力が上がるという効果があります。そうしたことから、コンドームの潤滑剤にも使用されています。
 
 しかし、タルクは「1級発がん物質」に指定されているアスベスト(石綿)と非常に似た構造式を有しており、性質も極似しています。粉塵となったアスベストを吸入すると、呼吸器障害の「石綿症」や肺がんを引き起こす原因になります。潜伏期間は20〜50年間という長期間です。
 
肌のバリア層を破壊して侵入する化粧品のタルク

 卵巣がんで死亡したミズリー州の女性も数十年にわたってタルク含有製品を使用していたとのことです。タルクと卵巣がんとの関連では、1995年にアメリカのチャンドラー博士が「タルクは卵巣がん、卵管繊維症、不妊の原因となる可能性がある」(医学誌JAMA)と、指摘しています。
 
 実は1930年代まで、手術用の手袋を使う時に滑りをよくするために、タルクを手袋に付着させていました。しかし、術後の患者が肉芽腫性腹膜炎などを起こすこととの関連性が疑われ、タルクの使用をやめたという経緯もあるのです。
 
 化粧品は皮膚に塗るだけで、タルクは体内に侵入しないのだから問題はないという指摘もあります。しかし、今のタルクは以前と比較にならないほど微細化しています。しかも、今の化粧品は美白成分などの有効成分を肌の奥まで浸透させるために、合成界面活性剤で肌のバリア層を破壊しています。

 バリア層が破壊されれば、タルクなどの成分が体内に侵入していきます。その結果がどうなるかは、手術用の手袋のケースでも明らかです。

 「ベビーパウダー」などは、ただれ防止によく赤ちゃんの性器の周りにもパタパタつけていますが、最悪です。性器の粘膜には異物を体内に取り込まないようにするバリア層はありませんから、赤ちゃんの体内にもろにタルクを取り込んでしまうことになるからです。
 
 そして、もうひとつ重要なことを指摘しておきます。タルクは酸化チタンと併用されることが多い化粧品成分で、その酸化チタンは今、ナノサイズ化されています。なんと毛髪の直径の10万分の1という長さです。ここまで物質が「ナノ化」されますと、人体を異物から守るブロック機能は役にたちません。

 2009年に東京理科大学薬学部ナノ粒子健康科学研究センターは、ナノ化した酸化チタンをラットに投与した実験結果を発表しています。それは「酸化チタンのナノ粒子が次世代の脳神経や生殖系に悪影響を与える」というものです。妊娠中や子どもを作りたい人は、タルクや酸化チタンが含まれている化粧品や食品は、避けるべきでしょう。

郡司和夫(ぐんじ・かずお)
フリージャーナリスト。1949年、東京都生れ。法政大学卒。食品汚染、環境問題の一線に立ち、雑誌の特集記事を中心に執筆活動を行っている。主な著書に『「赤ちゃん」が危ない』(情報センター出版局)、『食品のカラクリ』(宝島社)、『これを食べてはいけない』(三笠書房)、『生活用品の危険度調べました』(三才ブックス)、『シックハウス症候群』(東洋経済新報社)、『体をこわす添加物から身を守る本』(三笠書房・知的生き方文庫)など多数。