アルトワークス(スズキHPより)

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 モテ車を解説する「週刊ポスト」連載の「死ぬまでカーマニア宣言!」。これまでにクルマを40台買ってきたフリーライター・清水草一氏(53)が、150万円で買える軽スポーツカー、アルトワークス(スズキ)について解説する。

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 ご同輩諸君。我ら中高年はカーマニア世代である。バブル期には、続々登場する国産バカッ速軍団に青春を燃焼させたものだ。その頂点は日産・スカイラインGT-Rやホンダ・NSXであった。

 一方あの頃は軽自動車業界でも、スズキ・アルトワークス、ダイハツ・ミラターボTR-XX、三菱・ミニカ ダンガンというバカッ速軍団が次々登場し、覇を競ったことを覚えているだろうか? 中でもアルトワークスは軽自動車中、最強と言われたものだ。

 アルトワークスは2代目アルトから設定されたスポーティーグレードで、発売は1987年。当時の軽自動車のエンジンは550ccだったが、初代アルトワークスの最高出力は、現在(660cc)と同じ64馬力を誇った。車両重量は約600kgときわめて軽かったから、そのじゃじゃ馬的な加速感は、ある意味GT-Rに匹敵したほどである。

 何を隠そうこの私も、1989年にアルトワークス(2代目)同士で競うワンメイクレース『アルトワークスカップ』に参戦した経験を持つ。軽とは思えない強烈な加速やコーナリングは、我が青春の思い出の1ページである。

 その後のバブル崩壊によってパワー競争は下火になり、軽自動車は燃費が命に。アルトワークスも長らく消滅していたが、昨年12月、15年ぶりに復活したのはやはり、近年の景気回復のおかげか? ホンダがS660、ダイハツがコペンという軽スポーツカーを発売している手前、スズキはアルトワークスの復活で我ら中高年の焼けぼっくいに火を付けようという算段だろう。

◆ハードな乗り心地で男をみなぎらせよ!

 で、復活したアルトワークス、その走りはどうか? とにかく軽い。ひたすら軽い。車重は670kgと、昔のアルトワークスとさほど変わらない。昔より衝突安全基準がはるかに厳しくなっている中、これだけ軽く仕上げたのは、スズキの執念の賜物である。

 トランスミッションは5速MTと5速AGS(セミAT)が選べるが、スポーティな走りを満喫するなら、当然MTがオススメだ。足回りは固く締め上げられており、乗り心地はかなりハードだが、回春剤としてはこれくらいの強烈さがあってしかるべきだろう。

 もう少し乗り心地がソフトなほうがいいなら、アルトターボRSがある。パワーはワークスと同じ。ただこちらにはマニュアルの設定はなく、セミATのみだ。

 どちらもボディはアルトだから、大人4人がしっかり乗れる。S660やコペンは2人乗り。実用性では断然アルトワークス有利である。しかもボディが断然軽い分、加速もアルトワークスが一番鋭い。150万円ちょっとの実用的な軽自動車で、これだけ速いクルマが買えるのは、実に素晴らしいことではないか!

 実はスズキには、もうひとつオススメの派生モデルがある。主に女性をターゲットにしたラパンだ。

 女性がターゲットだけに、ルックスは実にかわゆいが、オッサンから見ても本気でかわゆい。子犬を飼うような気分で、このかわゆいラパンを飼いたい気分になってしまうのは、禁断の欲望だろうか?

 女性向けだけあって、乗り心地はフンワリとマシュマロのようにソフトだ。アルトワークスとはまるで真逆である。しかし逆もまた真なりと言う。復活したアルトワークスがオッサンの焼けぼっくいに火を付けるように、このかわゆいルックスのラパンに恋してしまうオッサンは少なくないはず。

 確かに「オレが乗っても似合わないよナ」とは思う。しかし世の中、似合わな過ぎると逆にハマることがある。ブサイク芸人の女装のように、オッサンがウケ狙いでパステルカラーのラパンを飼うのも悪くない。

※週刊ポスト2016年3月11日号