歯科恐怖症(デンタルフォビア)は大人にも多い(shutterstock.com)

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 キーンという歯を削るドリルの音、歯を削られることで生じる痛み、仰向け状態で長時間口を開け続けるという治療の体勢、見ることのできない治療の様子、不安にさせる歯科医のマスク姿......。

 歯科に対してのマイナスイメージを挙げるときりがない。事実、歯科というものに対し、個人差はあれど、恐怖感を持っている人は多いのではないだろうか。

 そうした恐怖感が極端になり、歯の治療が困難になってしまった状態のことを歯科恐怖症(デンタルフォビア)と呼ぶ。

歯科恐怖症(デンタルフォビア)の症状とは?

 歯科恐怖症に陥ると、歯医者に行くことを想像しただけで不安になったり、息が苦しくなるなど体が反応したりする。ひどい場合には、口の中に手を入れられることを嫌がって、激しく嘔吐してしまうことすらある。そのため、歯の治療が必要な状態になっても、受診になかなか踏み切れず、虫歯や歯周病といった症状が悪化してしまうのだ。

 むかしの歯科医院の待合室には、泣きじゃくる子どもが珍しくなかった。当時は、死ぬほど痛い歯医者が珍しくなかったのだ。いま歯科恐怖症を患っている大人の多くは、そうした子ども時代の歯科治療がトラウマとなり、その後、歯医者に行くのが苦手になった人たちなのだろう。
歯科恐怖症を改善するトークセラピーの可能性

 歯科恐怖症を克服する治療法の一つとして、有効だと考えられるのが「トークセラピー」である。2015年11月27日公開の「British Dental Journal」オンライン版に、歯科恐怖症は心理療法であるトークセラピーで緩和できる、という主旨の記事が掲載された。

 英キング・カレッジ・ロンドン歯科研究所心理学教授のTim Newton氏らによるグループは、男女130人(平均40歳)を対象として、認知行動療法(CBT)と呼ばれる方法を実施した。その対象者だが、4分の3は完全な歯科恐怖症、4分の1は歯科治療の一部に不安を抱く人たちであった。

 この実験によって「セラピー後、対象者の79%は鎮静を行わずに歯科治療を受けることができた。6%は治療を受けるときに鎮静を必要とした。15%は治療を中断したか、その他の問題のために治療開始に適さないと判断された」という結果が出た。

 それを受けて同氏は、「セラピーによって恐怖に関連する思考の特定と、それを有用な思考に置き換える方法を学習したり、役に立たない思考に対抗する情報を得た。また歯科受診時に起こりそうな不安への対処法も学習した」と感想を述べている。

 博士の実験結果を生かし、日本でも医師のカウンセリングによる恐怖症緩和が、今後は可能になっていくかもしれない。

笑気ガスや麻酔による緩和

 歯科恐怖症が緩和できない状態でも、緊急的に治療が必要な場合がどうしても出てくる。その時、笑気ガスや薬物で恐怖感を鈍くさせたり、最終的には、全身麻酔をかけた上での治療も考えられる。

 局所または全身の麻酔を施す場合、麻酔医の協力が欠かせない。というのも麻酔の深さの加減や呼吸抑制が起こるかどうかについての見極めや、鎮静法を使用した場合の局所麻酔の併用の検討といったことが必要になってくるからだ。そうした治療を受ける場合に気をつけたいのは、歯科口腔外科医が麻酔医の資格を持っているかどうかだ。

 「ストレスフリー歯科(無痛治療)」を売りにしている某歯科医院では、じっくりカウンセリングした後、どの麻酔があっているのかを選択する。メニューには、リラックスして治療が受けられる笑気吸入鎮静法、眠っている間に治療が終わる静脈内鎮静法・麻酔法、全身麻酔で、日帰り集中治療が可能になる全身麻酔法がある。この医院には、もちろん歯科麻酔専門医が常駐している。

 このような歯科医院はかなり少なく、歯科麻酔専門医として登録しているのは全国に約250人しかいないという話だ。歯科医院選びは、しっかりやる必要がある。
(文=編集部)