第58回:白鵬杯

初場所(1月場所)を終えたあと、
横綱が主催する『白鵬杯』が開催された。
今年は横綱の息子が初参戦。
同大会の舞台裏に迫る――。

「なにわに春を告げる」と言われる、大阪・難波開催の春場所(3月場所)。その番付が2月29日に発表され、3月13日には本場所の幕が開けます。そうした時期を迎えて、私自身、春の訪れをじわじわと感じているところです。

 さて、初場所(1月場所)が終わって以降、私は目まぐるしい日々を過ごしてきました。1月31日には、私が主催する『第6回 白鵬杯』を観戦。今年も、日本、モンゴル、アメリカ、中国、韓国から多くの子どもたちが参加してくれて、白熱した戦いを見せてくれました。大会規模が徐々に大きくなって、相撲のレベルも年々上がっているような印象を受けました。

 一方で、子どもたちの相撲を朝早くから見守ってくださっていた熱心な方々もたくさんおられました。子どもたちにとって励みになったでしょうし、そうしたファンの方々には感謝の言葉しかありません。

 実は今大会、私の長男で小学校1年生の眞羽人(まはと)が、初めて出場しました。幼い頃から「相撲をやりたい」などと言ったことはなかったのですが、昨年あたりから興味を持ち始めたようです。父親としては、子どもが関心を持ったことには協力し、できるだけサポートしてあげたいですからね。大会に向けて、まわしをプレゼントし、少しは指導もしたんですよ。

 肝心のデビュー戦の結果は、残念ながら黒星でした(笑)。それでも、少しずつ相撲の楽しさに目覚めていってくれたらいいな、と思っています。今後が楽しみです。

『白鵬杯』が終わって、2月に入ってからもイベントが目白押しでした。2月は巡業が行なわれないので、地方などに出かけることはありませんが、「花相撲」と呼ばれるトーナメント戦などが、この時期に開催されるんです。

 2月7日には、『第40回 日本大相撲トーナメント』が国技館で行なわれました。そこで私は、4大会ぶり4度目の優勝を果たすことができました。決勝戦では、横綱・日馬富士と対戦して勝利。本場所とはまた違った喜びがありましたね。

 本場所は一日一番、15日間で争われますが、トーナメント戦は一日で決着がつきます。その分、決勝戦まで勝ち進むと、その日だけで5、6番の相撲を取ることになります。それでも、負けたら終わりの一発勝負。力士たちは"勝負師"本能がかき立てられるのか、土俵上は異様な熱気に包まれます。そういう意味では、会場に詰め掛けたお客さんやファンの方たちも、本場所とは別物の楽しさや面白味を味わえたのではないでしょうか。

 2月11日には、これまた毎年恒例の『NHK福祉大相撲』が国技館で行なわれました。横綱・大鵬関が現役時代から開催されているもので、今年で49回目となります。同イベントでは毎年、大会の収益金で全国各地の福祉施設に「福祉車両」を贈っていますが、今年は私がプレゼンターを務めさせていただきました。

 この『福祉大相撲』では、さまざまな催し物があって、相撲を学ぶコーナーをはじめ、ちびっこ力士の取組や人気力士とちびっこ力士の対戦、さらに人気歌手と人気力士による歌の共演まであるんですよ。そのうえで、十両、幕内力士による相撲の取組まであって、とても充実した内容となっています。

 また、早い時間帯には、幕下力士によるトーナメント相撲が行なわれていて、これがまた白熱した戦いが繰り広げられるんです。「1日も早く関取になりたい!」と、若い力士たちも必死ですから、それらの取組にも大きな拍手が飛んでいたようです。

 15日間満員御礼だった初場所同様、おかげさまで、これら「花相撲」も早い時期からチケットはほぼ完売していたと聞いています。会場に足を運んでいただいたファンのみなさまには、本当に感謝しております。力士一同、さらに相撲界を大いに盛り上げていきたいと思いますので、これからもよろしくお願いいたします。

「花相撲」を終えたあとは、久しぶりに親孝行をすることができました。私の両親は、今年で結婚50周年。つまり、金婚式を迎えるということで、以前からこのタイミングで何かお祝いをしようと思っていたんです。

 ただ、ここ数年、父の体調が優れませんでした。できれば、父に体の負担をかけたくないなと思っていて、そこで考えたのが、暖かなハワイで金婚式を祝おうというプランでした。そして実際、ハワイは本当に穏やかな気候で、そんな環境の中で祝った金婚式には、両親もとても喜んでくれました。

 モンゴル相撲の横綱を張った父と、医師をしていた母。ふたりがどんなきっかけで結婚することになったのか、その辺りの詳しい話は聞いたことがありませんが、ふたりで幸せな家庭を築いて、私を含めて5人の子どもたちも立派に育ててくれました。これからも、とにかく健康に気をつけて、子どもたちや孫たちの成長を見守っていてもらいたい。そう願うばかりです。

 ところで、初場所では、大関・琴奨菊が初優勝。日本出身力士による10年ぶりの栄冠獲得に大いに盛り上がりましたが、その興奮さめやらぬ1月30日、当の琴奨菊が盛大な結婚披露宴を挙げました。私は、披露宴、二次会に出席させていただきました。どちらも、苦労人である大関の優しさ、暖かさといった人柄がにじみ出た、とてもいい宴でした。

 その琴奨菊ですが、そうした多忙の中、披露宴の翌日には『白鵬杯』にも顔を出してくれたんです。「チーム琴奨菊」から5人の選手を大会にも送り出してくれて、大関には多大な協力を得ましたね。

 また、他にも嘉風、豊ノ島、里山といった現役の関取衆が、大会当日の審判を務めるなど、いろいろと手を貸してくれました。

「未来の関取を育てる」――言葉で言うのは簡単ですが、実際は並大抵のことではありません。けれども、そのために力を注ぎ、協力を惜しまない力士はたくさんいます。子どもの頃から相撲に親しみ、今なお相撲を続けている琴奨菊らは、まさにそうした気概にあふれた関取衆です。彼らには、本当に感謝しています。同時に、春場所での健闘を互いに誓い合いました。

武田葉月●構成 text by Takeda Hazuki