心臓病などの研究で知られる医学博士・内浦博之氏が言う。
 「心臓から飛んできた血栓が突然、脳の血管を詰まらせる。これを予防するには、抗凝固薬で血液をサラサラにし、血栓ができにくくする、また、心房細動が起きた部分をカテーテルで焼く治療などがあります。しかし、心房細動には動悸や息切れ、胸の痛みと言った症状が現われる一方、自覚症状のない場合も多い。そのため、少しでも動悸を感じたら自分の手首で脈を測る習慣をつけること。そしてリズムの乱れに気づいたら、すぐに病院に行くことです」

 そもそも再発する可能性が高いという脳卒中。予防のためにも、リスクを高める高血圧や糖尿病などの管理を欠かさず、自治体による取り組みも盛んになってきた。
 例えば、広島県呉市の場合、まず診療報酬明細書のデータや医療機関からの情報をもとに、対象者に連絡が入る。プログラムへの参加に同意すると、6カ月間にわたり保健師、看護師の面談や電話による助言を受けながら、生活習慣の改善に取り組むことになる。

 同市内に住む寺内比呂志さん(仮名=65)は、2年前の夏の夜、自宅でテレビを見ていたときに左手にしびれを感じた。疑問を抱きながらも就寝すると、翌朝もしびれが残り、顔の左側も感覚がなくなっていた。家族の付き添いで近所の総合病院で診察を受けると、軽い脳梗塞と分かり入院。2週間で退院できたが、左手のしびれは残った。
 「血圧や血糖値が高いので、病院に行くようにと健康診断で言われたのに行かなかった。症状が進行し、自分が脳卒中になるとは思っていなかった」(寺内さん)

 約1年後、市からプログラムへの参加を勧める手紙が届き参加を決めた寺内さんは、担当者の助言で間食や夜遅い時間の食事をやめ、散歩するようになった。さらに毎日体重や血圧も記録し、6カ月間のプログラムは終了。その後も血圧や血糖値はやや高いままだが、“状態を悪化させない”というプログラムの目的からすれば、成果が出ていると言える。
 この事業を受託したのは、広島大学森山美知子教授(成人看護開発学)が生活習慣病の発症や重症化の予防を目的に設立したベンチャー企業。事業の目的について森山教授は「生活習慣の改善や、高血圧や糖尿病などの基礎疾患を悪化させないことが、再発予防につながる」と話し、今後は退院直後の患者が参加しやすい仕組みづくりや、国民健康保険の対象にならない75歳以上の高齢者が参加できるようにしたいと言う。

 脳卒中は加齢とともにリスクが高まるのは防ぎようがないが、食生活を見直し、高血圧を予防、喫煙や肥満など生活習慣を変えることでリスクは減らせる。家族など周囲の人も参加し、その環境に注意を払うことを心掛けたいものだ。