中国国内で最近、習近平共産党総書記(国家主席)を「党の核心」と持ち上げる動きが目立つ。これは「反腐敗」を旗印に政権基盤を固めてきた習氏への「権力の一極集中」が進んでいるかにも見える。写真は2月2日に江西省を視察する習近平国家主席。

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2016年2月27日、中国国内で最近、習近平(シー・ジンピン)共産党総書記(国家主席)を「党の核心」と持ち上げる動きが目立っている。現在の中国は、党政治局常務委員7人の「チャイナセブン」による集団指導体制が建前。こうした動きは「反腐敗」を旗印に政権基盤を固めてきた習氏への「権力の一極集中」が進んでいるようにも見える。

複数の日本メディアは先ごろ、中国メディアを引用して「『習氏は党の核心』忠誠訴え、地方指導者ら発言相次ぐ」などと伝えた。それによると、口火を切ったのは、習氏に近いとされる天津市の黄興国代理書記らで、その後、北京市や湖北省などのトップもこれに追随した。

党内有数の政治勢力である共産主義青年団(共青団)の有力者で広東省トップの胡春華・党委書記も「核心意識を強めねばならない」と間接的な表現ながら「核心」言及。2月中旬までに、中国本土の31の省・直轄市・自治区のうち、すでに約20人が表明したという。地方から声を上げさせて輪を広げ、中央に浸透していくのは、よくある政治手法だ、

習氏は、習仲勲・元副首相の息子で、共産党高級幹部の子弟グループの太子党の一人。しかし、文化大革命で父親が批判されたため、7年間下放されるなどの辛酸をなめた。その後、北京の精華大学を卒業。党内の出世の階段を順調に上がり、廈門副市長、福建省長、浙江省党委書記などを歴任し、07年3月、上海市党委書記に就任した。これにより、第17期の党中央政治局入りは確実とみられていたが、同年10月の第17期党中央委員会第1回全体会議で、一気に中央政治局常務委員にまで昇格する「二階級特進」し、一躍注目を集めた。

中国共産党のトップは、権力移行を円滑に進めるため、その前の政権時代に時間をかけて慎重に後継者が選ばれるといわれる。胡錦濤前総書記と同じ共青団出身の李克強(リー・カーチャン)首相らも有力候補だったが、最終的に習氏が12年11月、総書記になった。何が決め手になったかは深いベールに包まれている。

後継者になるためには「敵」をつくらないとこが極めて重要で、いったんトップに上り詰めたら、今度は「敵」をどうやって排除し、自らの地位を不動のものにしていくかが大きな課題となる。

中国共産党の歴代指導者で「党の核心」と呼ばれたのは、毛沢東、トウ小平、江沢民の3氏。中でも毛氏は天安門に肖像画が掲げられ、遺体が安置されている記念堂には連日長蛇の列ができるなど、別格の存在だ。

中国専門家の一人は習氏について、「そもそも『虎もハエも同時にたたく』という反腐敗運動は、毛沢東の『大虎も子虎も同時にたたく』の言い換えであり、風紀を正すための『四風運動』は、毛沢東が延安時代に行った『整風運動』の模倣である」と指摘する。

「建国の父」といわれる毛氏は、実は党内に「敵」が少なくなく、一連の権力闘争を通じて主導権を握ろうとしたが、最後は文革に行きついてしまい、国内に深い傷を残した。毛氏と習氏。そういえば、毛氏夫人は女優だった江青女史で、習氏の妻・彭麗媛(ポン・リーユエン)さんは著名な歌手だ。不思議な共通項もある。(編集/日向)