脳卒中と言えば、かつては“国民病”とも呼ばれ、1980年までは日本人の死因第1位だった。現在は第4位となったが、それでも死因全体の約12%。2013年の国民生活基準調査によると「介護が必要になった主な原因」で最も多く挙げられたのが脳卒中(18.5%)で、認知症(15.8%)や高齢による衰弱(13.4%)を上回っているのだ。
 「寝たきりの原因」でも最多の35.7%を占め、家族など周囲にも影響する脳卒中は、発生する仕組みによって、脳梗塞、脳内出血、くも膜下出血の3種類に分かれる。いずれも生活習慣病が大きくかかわっているとされるが、激しい頭痛や運動マヒ、意識障害などの典型的な症状の出方も少しずつ異なる。例えば、頭蓋骨と脳の間にあるくも膜の下で動脈瘤が破裂して起きるくも膜下出血では、激しい頭痛や意識障害が起きるが、通常手足などのマヒは起こらない。ただし、共通して厄介なのは、患った“その後”だ。

 東京都多摩医療総合センター総合内科外来担当医はこう説明する。
 「脳卒中が怖いのは、生命にかかわるということだけでなく、一度発症すると後遺症が残る可能性が大きいことや、再発しやすいことが挙げられます。発症した人の9割以上は救急医療によって命を救われていますが、そのうち7割の人たちは、マヒや感覚障害、認知症、高次脳機能障害などの後遺症が残ってしまう。軽度の後遺症であればリハビリで完治することがあるものの、重度な場合は介護が必要となります」

 脳卒中の治療は、種類やタイプによって手術や薬を使い分ける。脳梗塞の場合、一般的に発症後4時間半以内なら、血栓を溶かす薬を使うことが可能。血管内にカテーテルを入れて血栓を取り除く治療は、発症から8時間以内が対象になるという。
 '09年に約250人の脳卒中患者を調べた結果では、65歳以上の高齢者2人世帯や一人暮らしの場合、3人以上の世帯に比べて発症から病院到着まで3時間を超えやすいとの結果が出ている。さらに夜間に発症した場合、高齢者2人世帯では、この時間が極端に長くなる傾向も見られる。これは、相方が脳卒中の症状だと気づかず救急車を呼ぶことをためらうからだ。
 いずれにしても、「脳卒中を疑う症状が出たら、ためらわずに病院へ行ってほしい」と担当医は言う。早期に治療を開始できるかどうかで、後遺症の程度も変わってくるからだ。

 『脳卒中データバンク2015』(中山書店刊)という、全国の医療機関から登録された患者データを分析した書籍がある。それによると、脳卒中のタイプ別では、約9万6000人のうち脳梗塞が75.9%を占め、脳内出血は18.5%、くも膜下出血は5.6%だった。
 ある専門家によると、脳梗塞の中でも「心原性梗塞栓症」というタイプは高齢者に多く、重症化しやすい傾向にあるという。この病気は、不整脈の一種(心房細動)により、心臓や大動脈にできた血栓が脳に流れて血管に詰まることで起きる。これは太い血管が詰まるため、他のタイプの脳梗塞に比べ重症になりやすい。