南シナ海の領有権紛争は、米中双方の軍事的対立エスレートする中、平和的解決の「道筋」は全く見えてこない。写真は南シナ海・西沙諸島。

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2016年2月26日、アジアで緊張が高まっているのは、朝鮮半島だけではない。南シナ海もそうだ。広範な領有権を主張する中国は人工島建設など軍事拠点化を着々と進め、米国はイージス艦派遣やB52戦略爆撃機の飛行などの対抗措置を取る。紛争解決の「道筋」は見えず、穏やかな海は「天気晴朗なれど波高し」(日露戦争の日本海海戦直前に連合艦隊が大本営に打電した文面の一節)だ。

米FOXニュースが相次いで伝えた西沙(パラセル)諸島・永興島(ウッディ島)への地対空ミサイル配備や戦闘機派遣も、周辺諸国は中国による軍事拠点化の動きの一環とみている。配備されたのは、「紅旗9」と呼ばれる射程約200キロのミサイルシステムとされる。さらに、南沙(スプラトリー)諸島には対空機関砲が複数配備されたほか、高性能レーダー施設を建設中という。周辺諸国は中国が南シナ海にも東シナ海同様に、「防空識別圏」を設置する布石ではと警戒している。

中国メディアによると、地対空ミサイル配備について、中国外務省の洪磊(ホン・レイ)報道官は「防御能力を引き上げることと軍事化は全く別のことだ」と主張した。中国の習近平国家主席は昨年9月の訪米時にオバマ米大統領に対し、「(南シナ海で)軍事化を進める意図はない」と発言しているが、地対空ミサイルや対空機関砲は防御目的であり、習発言とは矛盾しないとの論理とみられる。

中国が南シナ海進出を強めた背景には、在フィリピン米軍基地撤退が関係しているとの見方がある。クラーク空軍、スービック海軍両基地はフィリピン国内のナショナリズムの高まり、東西冷戦の終結に加え、ピナツボ火山の爆発で基地機能が大きく損なわれたことなどが重なり、1992年までに撤去された。

米軍基地があった当時から、中国は南シナ海の領有権を声高に叫んでおり、基地撤去が直ちに進出加速にはつながらない。しかし、南シナ海ににらみをきかせていた基地の撤去により、「重し」が取れたとみたのは間違いなさそう。中国と領有権紛争を抱えるフィリピンは2014年になって米国と「防衛協力強化協定」を締結し、米軍の一時駐留に道を開いたが、中国支配の既成事実化の前には「後の祭り」だった。

南シナ海をめぐっては、東南アジア諸国連合(ASEAN)も一枚岩ではない。フィリピンやベトナムは中国と対立しているが、ラオスやカンボジアは経済面で中国に大きく依存している。地域大国のインドネシア、タイは「中間派」に分類される。米国とASEANは16日、中国が実効支配を強める南シナ海を念頭に共同声明「サニーランズ宣言」を発表し、「国際法に沿った平和的な紛争解決」「航行と上空飛行の自由を尊重」などを求めたが、日本メディアによると、「中国」や「南シナ海」への直接的な言及はなかった。

フィリピンは13年、南シナ海での中国の領有権主張に根拠がないとオランダ・ハーグの常設仲裁裁判所に提訴した。年内にも裁定が出る見込みだが、仮にフィリピン側の主張が認められても中国が受け入れる可能性はまずない。中国の実効支配を強める中、米国と対立する構図はますます鮮明化、緊張は高まる一方だ。(編集/日向)