毎日のようにニュースでさまざまな事件が報じられていますが、逮捕される犯人は圧倒的に男性が多いことに気付きます。これはなぜなのでしょうか?メルマガ『そうだったのか! この違いがわかれば、きっと許せる「男女の違い105」』では、犯罪研究を調査し、男性の方が犯罪を犯しやすい3つの説を紹介しています。

なぜ犯罪は、男子に多いのか?その理由1

なぜ、女子より男子の犯罪が多いか?

犯罪研究(心理、プロファイリング、データ)などを調べてみると、いくつの説がありました。

その説を3つほどまとめてみます。

もっとも、犯罪研究はまだまだ発展途上ですので、これからもっといろいろなことがわかってきて、違う見解もでてくるかもしれません。

あくまで、現在の説であること、また、私が調べた範囲内であることをご了承ください。

では、詳しくみていきましょう。

1.男性ホルモンの影響

ご存知のように、男性ホルモンの代表格の「テストステロン」は、男性を男性らしくしてくれるホルモンです(第67号で詳しく紹介)。

ちなみに、ホルモンとは、内部から刺激するものとか目覚めさせるものという意味があり、そのような脳内物質とされています。

このホルモンの働きは、具体的に、

○身体的活動

男らしい体つきをつくる

強烈な性衝動、毛深さ、活動的、乱暴になるなどの身体的な活動や外見をつくりだす

○精神的活動

創造的なエネルギーや競争心、なにかを達成したいという願望、それに向かう力や元気も生み出す

というもので、男性を行動させ、成長させる原動力ともなるものです。

犯罪に向かう男子は、この「テストステロン」が「働きすぎる、強すぎる、濃すぎる」のではないかというのです。

こんなデータ結果もあります。

身体(暴力)犯罪の懲役囚は、非暴力的犯罪の服役囚よりもテストステロンの水準がかなり高い(Aronson et al.2005)暴力的非行少年は、非暴力的少年よりもテストステロン濃度が高い(Banks&Dabbs 1996)

「テストステロン」濃度が高いと、強い性衝動が起こったり、ケンカっ早くなる、ということがあるようです。こういう事例も研究され、現在では、犯罪者更正に、ホルモン療法を用いる実験などもなされているようです。

また、もう一つのホルモン説があります。

それは、「テストステロン」以外の、「アンドロジェン」という男性ホルモンの影響があるのではないかという説です。

この「アンドロジェン」は、男性の精巣で作られるホルモンで、男らしさを発現させるホルモンのひとつといわれています。

このホルモンは、単純にいえば、男性の体を筋肉質にし、声変わりを支配し、いわゆる「マッチョ」にするホルモンらしいのです。

これが出ることにより、男子は攻撃的になってケンカをするし、他人を殺すし、逆に殺されもするし、事故にも遭いやすく、また病気にもなりやすい、のではないかということです(これはまだ実証データがないようです)。

もしかしたら、テストステロン+アンドロジェンの両方が、影響しているのかもしれませんが、男子は、ささいなことでも、カッとなりやすい傾向があるようです。

こんなデータ結果があります(やや古いデータですが…)。

「ささいな口論がもとで殺す男たち」

親族外男性間殺人の理由(1972年アメリカデトロイトの場合)

1位 侮辱への仕返し  46%

2位 見栄の張り合い  16%

3位 嫉妬       12%

   不明       12%

4位 仕事上の対立   6%

5位 家族ゲンカの仲裁 3%

6位 その他の対立   1%

ささいな口論でも、男性ホルモンが刺激されると、一気に殺人事件にまで発展してしまう、ことがあるということで、特に、侮辱への仕返し、言い換えれば、プライドを傷つけられたときは、危険だということがわかります。

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なぜ犯罪は、男子に多いのか?その理由2

2.配偶子をめぐる争い

これは、動物学的視点からみえてくることで、簡単にいうと、「オスの精子が子孫を残すために、高リスクを冒し、競争に勝つための争いをする」からではないか、ということです。

具体的には、

精子は小さいので作るのにエネルギーがそれほどかからず、一度にたくさんのメスの卵を受精させることができるエネルギーがかからず、精子をつくれるので、どのオスもできるだけ多くのメスを手に入れようとするし、たくさんのメスと交配し、多くの子を残そうとするすると、多くの子を残せる強いオスがいる一方で、メスを一匹も得られず子を残せない弱いオスもでてくるそこで、子を残せる勝者と残せない敗者という構図が出来上がり、勝者と敗者とはっきりと分けられる。だから、勝つために、優位に立つために、争う戦う、という大きなリスクを冒す

という説です。

そのような遺伝子が、体に埋め込まれているのと同時に、争いや戦うことで、自分が強く優位に立ち、利益になることや役立つことを手に入れられる、ということを学んできているからではないかというのです。

つまり、「大きな危険を冒してでも、大きな利益を狙う」という戦略が、ヒトの男子に植え付けられてきて、それゆえ、男子の方が罪を犯しやすい、のではないかということです(Daly&Wilson 1988a)。

次ページ>>犯罪抑止のための臨床実験も行われている

なぜ犯罪は、男子に多いのか?その理由3

また、多くの犯罪研究本には、以下の影響も否定できないのではないかと書かれています(一部ダブりますが、ご了承ください)。

3.環境、その他の要因

男性は、太古から、

狩をして、敵と戦い、家を守るより多くの子を残す

ことが、原始的役割とされていました。この原始的役割が、現在にも大きな影響を及ぼしているのではないかということです。

日本でも、戦国時代や武士の時代、戦争では、戦いで人を殺し、それで、名声を得たり、たたえられたり、評価される時代がありました。

これらの影響もまだまだ残っていて、男性の遺伝子の中には、名誉のためなら、あるいは、信念のためなら自分の命もいとわずということもあり、これらの名残があるかもしれない、ということです。

それが、現在の犯罪とどう結びついているかは、明らかにつながる研究はないようですが、このあたりの勇ましさが、形を変えて、残っているのかもしれません。

また、そういう名残からか、

男子は、「ワル」がかっこいい、誰かの期待に応えるより、一匹狼的な反社会的な方に惹かれてしまう

という傾向もみられるようです。

さらに、脳的、心理学的には、

男子は女子と違い、周りとのコミュニケーションがうまくとりづらい脳で、それゆえ、ドロップアウトすることが多くなり、孤立しがちで、自暴自棄になりやすい。※それゆえ、自殺も女性より多い

とも言われています。

また、異常犯罪、性犯罪では、

脳のどこかに損傷がある、あるいは異常がある

場合もある、ということで、これは、現在かなりの研究が進んでいるようです。

そして、脳への薬物療法など、臨床実験も進んでいるそうです。犯罪抑止効果があるといいですね。

こうしてみてくると、男子に犯罪者が多いのは、

「争うこと、戦うことを宿命とした戦う性を背負わされてきたから」

といえるのではないかと思えてきます。

みなさまは、どう感じられるでしょうか。

image by: Shutterstock

 

 『そうだったのか! この違いがわかれば、きっと許せる「男女の違い105」』より一部抜粋

男女の違いを、様々な年代層への取材などを通じて自ら検証。「105の違い」にまとめました。「105もあるのぉ?」大丈夫です! むずかしいことは書いておりませんし、事例も身近で、読めばきっと、「そうそう」と頷かれることばかりだと思います。楽しみながら読んで、ちょっと実行して……みてくださいね。

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出典元:まぐまぐニュース!