カゴメトマトジュースについて話す家庭用企画部飲料グループ主任・安藤康洋さん

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カゴメ(本社・名古屋市)が日本で初めてトマトジュースを発売したのは1933年(昭和8年)。今日では、誰もが知っていると言えるほど身近な飲料だ。

時の流れや時代背景により、消費者の味の好みは微妙に変化してきた。同社ではトマトそのものの栽培に力を入れて品種改良を重ねると同時に、ジュースのおいしさや成分の充実を徹底的に追究している。

世界中のトマト7500種類のタネを保管

「カゴメトマトジュース」は2016年2月2日、機能性表示食品として全国で発売された。これまでも、「体にいい」イメージでトマトジュースを手にしてきた消費者は少なくないはずだ。機能性を表示する理由はどこにあるのか。

トマトには、抗酸化作用があるリコピンが多く含まれ、カゴメでは長年研究してきた。カゴメ東京本社家庭用企画部飲料グループ主任・安藤康洋さんによると、トマトジュースやリコピンの健康への作用を明確に伝えるにはどうするかを社内で議論するなかで、2015年4月に機能性表示食品制度がスタートし、「直接訴えた方が分かりやすい」との結論から消費者庁に申請、受理されたという。

ペットボトルや紙パックには「血中コレステロールが気になる方に」のメッセ―ジがある。価格や中身が変わったわけではないが、この訴求で消費者は「トマトジュースを買いたいとの意識が、より高まっていると思います」(安藤さん)。機能性表示を始めて日数はまだ浅いが、2月22日の発表によると「カゴメトマトジュース」4品の出荷実績は、前年比328%に達した。これまで飲んでいなかった新規顧客の取り込みにも成功しているという。

ロングセラーの秘訣は、「トマトを知る」を根本から徹底している点にありそうだ。まず、世界中のトマト7500以上の種子を保有しているというのが象徴的な例のひとつ。研究や調達部門の社員が海外出張の際に日本へ持ち帰り、実際に栽培して新たな種を取るなどしている。

これが品種改良につながる。例えば「ヘタのないトマト」だ。ヘタが付いたままジュースにすると苦みが残るうえ、色の見た目も悪くなる。そこで、実を収穫する際、ヘタが枝に残って実だけが取れるトマトを独自に開発したのだ。

「炎天下での収穫作業では、農家の方の負担も格段に軽減されます」

と、安藤さんは話した。

トマト栽培のプロ、味覚のプロが活躍

国内の農家がトマトを栽培するうえでの指導役が、カゴメ社内にはいる。「フィールドマン」と呼ばれ、畑に出向いて土を見ながら水や肥料をどのタイミングでまくか、栽培の過程で病気になったらどうするか、といった具体的なアドバイスを随時送る、いわば「トマトづくりのプロ」だ。一方、海外では数多くの輸入先を確保し、ある場所で不作でも別の場所からトマトを仕入れられる態勢を取り生産上のリスクの芽を摘み取っている。

ジュースの品質やおいしさの追求は、「生のトマトを絞った味わいに近づけたい」との強い思いが推進力だ。そのひとつに、カゴメ独自の「RO技術」がある。トマトにあまり熱を加えず、じっくりと水分を抜く加工法だ。こうして濃縮すると、栄養はもちろん香りや風味が残る。さらに「味覚のプロ」の活躍も大きい。製造工程で「この味に問題ないか」を判別するエキスパートだ。同じ色形のコップを複数用意して、それぞれ別のメーカーのトマトジュースを入れ、飲んだ後に「どこの商品か」をピタリ当てられるほどの優れた味覚を持つ。

消費者の健康に対する意識は、近年高まっている。ライフスタイルや味の好みも変化している。その影響からか、以前は食塩入りが最も売れ筋だったが、今日では食塩無添加の製品の売り上げが逆転してしまった。これは「トマトがおいしくなってきた」という事実もある。

機能性表示食品となったトマトジュースについて、店頭では「生のトマトから作ったジュース」「添加物により機能を高めたわけではない」点が評価されているという。自然由来へのこだわりは、日本で初めてトマトジュースを世に出したカゴメの、トマトやリコピンを長年研究してきた自負に基づいているようだ。