言い訳がましい同僚と、うまくコミュニケーションをとるには?
 何かにつけて言い訳がましい人がいる。注意されても、「すみません」のひと言が出てこない。「知らなかった」「そんなつもりではなかった」「知ってはいた(けど、やらなかった)」と訴えてはばからない。そんな相手とうまくコミュニケーションをとるには、どうすればいいのか。

 今回はNHK大河ドラマ「真田丸」でも話題の真田昌幸・信之・幸村親子の生涯を描いた「真田太平記」シリーズから打開策を探りたい。『真田太平記(一)天魔の夏』(池波正太郎著/新潮文庫)では真田昌幸が長年仕えた武田家が滅びた。昌幸はいち早く離脱し、故郷に戻るものの、乱世における身の振り方の決断を迫られる。

◆「守るよりも、出て戦い、外に戦うことによって内を守る」

 真田家の当主・昌幸が仕えた武田信玄は「外に戦うことによって内を守る」を信念とした。積極的に合戦を仕掛け、領土を拡大。勝てば、功績に応じて家臣に土地を与える。また、占領地では丹念に民政を施し、信頼を育む。完全に味方になったのを見極めてから次の戦争に移るのが常だった。

 ここで言う「外」を“社外”、「内」を“社内”と置き換えるとイメージしやすくなる。言い訳がましい相手の対応もいわば、民政の一種だ。相手の言葉に耳を傾ける。日頃の傾聴があるからこそ、不毛な言い訳を止められるのだ。

◆「情にもろいのです。ですから、構えて強ういたしております」

 昌幸の甥・角兵衛は12歳で、父親を亡くす。だが、泣くどころか、「父上のことを悲しんだとて、物事は始まりませぬ」と言い放つ。母親が呆れると、「情にもろいのです。ですから構えて強ういたしております」と語る。その毅然とした態度は真田家の家中でも、評判になった。

 角兵衛がとった行動は、現代のビジネスシーンにも応用が利く。情にもろいなら強くし、饒舌なら極力黙る。いつもと違う行動は相手の意表を突く。関心の矛先がこちら側に向くよう、強引にリセットするのにも役立つ。

◆「一膳の飯へかける汁の分量もまだわからぬのか」

 大河ドラマ「真田丸」第1話にも登場した、北条氏政(劇中では高嶋政伸が熱演)の汁かけ飯。氏政が食事中、汁をつぎ足したところ、父親の氏康が嘆いた逸話に由来する。氏康曰く“日々の食事の適量すら学習できないバカには、家臣はついてこない”というのだ。

 すべての日常は「学び」の場だ。言い訳がましい相手は、言い訳したくなる状況や相手を苛立たせるツボを教えてくれる。ここはひとつ、“師匠”と自分に言い聞かせ、敬意を持って接すれば、自然とコミュニケーションもうまくいく。

 言い訳には、人間の本音が詰まっている。生々しい声に耳を傾け、心の動きを知ることは、人を統率する上で必ず役立つ。“高きに登るには低きよりす”なのである。<文/島影真奈美>

―【仕事に効く時代小説】『真田太平記(一)天魔の夏』(池波正太郎著/新潮文庫)―

<プロフィール>
しまかげ・まなみ/フリーのライター&編集。モテ・非モテ問題から資産運用まで幅広いジャンルを手がける。共著に『オンナの[建前⇔本音]翻訳辞典』シリーズ(扶桑社)。『定年後の暮らしとお金の基礎知識2014』(扶桑社)『レベル別冷え退治バイブル』(同)ほか、多数の書籍・ムックを手がける。12歳で司馬遼太郎の『新選組血風録』『燃えよ剣』にハマリ、全作品を読破。以来、藤沢周平に山田風太郎、岡本綺堂、隆慶一郎、浅田次郎、山本一力、宮部みゆき、朝井まかて、和田竜と新旧時代小説を読みあさる。書籍や雑誌、マンガの月間消費量は150冊以上。マンガ大賞選考委員でもある。