第9回「未来を強くする子育てプロジェクト」受賞者と来賓、選考委員、住友生命保険相互会社取締役代表執行役社長ら

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住友生命保険の「未来を強くする子育てプロジェクト」は、子育て支援活動に取り組む個人・団体の表彰と、育児を行いながら研究を続けている女性研究者をサポートする社会貢献事業だ。2016年2月22日にホテルニューオータニ(東京都千代田区)で表彰式が開催され、合計で25組の団体・個人が受賞した。

「スミセイ未来大賞」に選ばれたのは2組。「てんやく絵本ふれあい文庫」(大阪府大阪市)は「同大賞・文部科学大臣賞」に選ばれた。「てんやく絵本」の製作・貸出・普及を通じて、誰もが絵本を楽しむことのできる環境づくりに貢献したことが評価された。

「同大賞・厚生労働大臣賞」に選ばれたのは「療育ファミリーサポートほほえみ」(沖縄県南風原町=はえばるちょう)。重度障がい児のファミリーサポートと子どもをなくした家族に対するグリーフケア活動が認められた。

「他人に助けてもらったから、私もお返しがしたい」

表彰式を控えて、大賞受賞団体の代表者にそれぞれ話を聞いた。

てんやく絵本ふれあい文庫は、市販の絵本に塩化ビニール製のシートを貼り付けて文字と絵にてんやくをほどこす「てんやく絵本」の製作・貸出を続けている。代表の岩田美津子さん(63)は先天性の視覚障がい者。わが子に絵本を読み聞かせようと思ったところ、点字付きの本がなかったことから1984年に活動を始めた。ボランティアの協力を得て年間350冊ペースで「てんやく絵本」を製作し、蔵書数は1万冊を超える。絵本を必要とする学校や図書館に郵送で貸し出すサービスも行っている。さらに絵本出版社に働きかけ、市販の点字付き触る絵本の発行・流通でも大きな役割を果たした。

出版物製作の過程で誤植の発生は付きもので、点字もその例外ではない。地道で根気のいる作業だが、ボランティア数は約150名に達する。これほどの規模に成長したのは、岩田さんの熱意や誠意あればこそだろう。

「誰もやらなかったから私がやったんです」

言葉の端々から彼女のバイタリティが伝わる。そういえば現在放送中のNHK朝の連続テレビ小説「あさが来た」の主人公・白岡あさは、女性実業家として成功を収め、日本初の女子大学校設立に情熱を傾けた。本人は「とても及ばない」というが、新しい分野を切り開く姿は「あさ」と重なる。

もう1組の大賞受賞者、「療育ファミリーサポートほほえみ」代表の福峯静香さん(45)は、見るからに人当たりの柔らかい、面倒見の良さそうな女性だ。彼女が活動を始めたのは2005年のこと。前年に重度の障がいをもった長男、宙(そら)ちゃんを亡くしている。宙ちゃんは全国の病院を何度も転院した。すでに女の子が2人いて、行政や他人からさまざまなサポートを受ける。その経験が彼女の人生観を変えた。

「それまでは自分だけで生きている気がしていました。いざ困った状態になり、『こんなに人の助けがいるんだ』とすごく感じて。やってもらった分、私もやろうと思って立ち上げました」

福峯さんの活動拠点は沖縄県那覇市中心部から車で約7.5km。その拠点がある県中・南部地域は障がいをもった子どもとその家族に対するサポート体制が徐々に整いつつある。一方で北部地域では公的サービスがまだまだ不足していることから、直接の支援と高低支援の開拓・充実に注力したいそうだ。本土の障がい者の子どもが沖縄に遊びに来られるホスピスを開設するのが夢で、それに向かって頑張りたいと語った。

このほか「スミセイ未来賞」には以下の10組が選出された。

うりずん(栃木県宇都宮市)かわね来風 ―ママ宅事業部―(静岡県榛原郡川根本町)ぐるぐるアート 世話人会(鳥取県米子市)元気アートプロジェクト(福岡県福岡市)シェイクハンズ(愛知県犬山市)しぶたね(きょうだい支援たねまきプロジェクト)(大阪府大東市)そらいろプロジェクト京都(京都府京都市)ダルク女性ハウス(東京都北区)発達凸凹サポートデザインかたつむり(東京都八王子市)余市教育福祉村(北海道余市郡余市町)

スミセイ震災復興応援特別賞を受賞したのは小学6年生

「スミセイ震災復興応援特別賞」は、東日本大震災からの復興支援を目的として13年7月に創設された。今年は「こおりやま福来(ふっこう)応援隊」(福島県郡山市)、「こそだてシップ」(岩手県大船渡市)、東日本大震災圏域創生NPOセンター「いしのまき寺子屋」(宮城県石巻市)の3組が選ばれた。

受賞者代表の挨拶のスピーチを行ったのは「こおりやま福来応援隊」の遠宮昭真さん(12)と保護者の昭則さん。応援隊は14年4月、当時小学5年生だった昭真さんを含む3人が発起人となり、『自分たちでできる震災復興活動』としてスタート。ご当地グルメの開発や子どもラジオ、子ども応援CM、子ども農場、被災地への研修旅行といった活動を、大人を巻き込みながら行ってきた。

壇上で昭真さんは少し照れた表情を浮かべつつ、堂々たるスピーチを披露。中学校に進学した後も活動を続け、また次に続く世代を助けていくと元気よく宣言した。

「スミセイ女性研究者奨励賞」は、育児のため研究の継続が困難となっている女性研究者を支援するため設けられた。今回は10名が受賞した。

代表でスピーチをしたのは、京都大学大学院 人間・環境学研究科のアリポヴァ・カモラさん。2006年にウズベキスタンから国費留学生として来日し、近代日本における国語の歴史の解明に取り組んでいる。在籍中に2度の出産を経験し、留学生としては今年大学院を満期退学した。日本での研究継続を希望していたものの、経済的な条件がネックに......。流暢な日本語で彼女は次のように述べた。

「帰国を考えたこともありました。でも――この助成金の対象に選んでくださったおかげで、私は日本に残って研究を続けることが可能になって、そして子どもたちが大好きな保育園に通い続けることができて、私は大変幸せです。これからもこの賞に恥じぬように全力で頑張りたいと思います」

住友生命「多くの社会問題と切り離すことのできない大切な事業」

未来を強くする子育てプロジェクトは、住友生命保険の創業100周年記念事業として2007年からスタートし、今年で9回目を迎えた。これまでに80組の子育て支援活動と、81人の女性研究者を表彰・支援している。

日本がいま直面している大問題の一つは言うまでもなく「少子化」だ。家族の形が急速に多様化し、家庭と地域の結びつきは弱くなり、孤立する子育て家庭が増えている。環境を再確立すべく政府や地方自治体も対策を講じているけれど、スピード感では民間の方が上だ。「子育て支援活動の表彰」は、そうした取り組みを長年続けている人や団体に焦点を当てるだけでなく、金銭面でもサポートする。

「女性研究者への支援」は、自然科学分野に比べて、まだまだ支援が少ないといわれている人文・社会科学分野の女性研究者を対象としている。「女に学問は不要」と言われた時代は過ぎ去ったが、妊娠や出産、育児に直面して断念する人はいまだに多い。

住友生命保険相互会社の橋本雅博取締役代表執行役社長は、本プロジェクトの報告書のなかで事業の意義を次のように強調する。

「こうした子育て支援事業への取組みは、現在の日本において、女性活躍推進や日本の人口構造の変化、地方創生等多くの社会問題と切り離すことのできないとても大切なものであると考えております」