「膝折れ」による転倒を防ぐには?(shutterstock.com)

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 歩いている時に膝が"ガクッ"と折れてしまったという経験をしたことはないだろうか? この「膝折れ」という現象は、バランスを崩して転倒を招くこともある。

 先日、膝折れが転倒リスクやさらなるケガを招く非常に重要な要素となることが報告された。

 アメリカの科学雑誌『Arthritis Care & Research』(2016年2月号)で発表された「Symptoms of Knee Instability are Risk Factors for Recurrent Fall」というタイトルの論文だ。日本語に訳すと「膝の不安定性は転倒リスクになりうる」。

 この論文では、1800人を超える「変形性膝関節症」を発症している高齢者を対象にして、膝関節の不安定(膝折れ現象)がどの程度起こるかを調査。さらに、その膝折れが起こった対象者の転倒リスクを調べている。

 その結果、膝折れで転倒した対象者はその後(2年間)、転倒が再発するリスクが4倍以上、転倒により重度の受傷を生じるリスクが2倍、転倒関連の損傷により活動が制限されるリスクは3倍、平衡感覚の問題を生じるリスクは4倍になるなど、さまさまな事実が明らかになったという。

 膝折れは、転倒リスクやさらなるケガを招く非常に重要な要素となることをを改めて紹介している。

"膝を守る"大事な筋肉を知っている?

 なぜ膝折れは起こるのか? 膝折れを防ぐために使われている重要な筋肉は「大腿四頭筋」である。私たちの太ももの前面を覆っている大きな筋肉だ。この筋肉は、主に膝を伸ばす時に働く。

 もし、あなたが椅子に座っているなら、そのまま膝を伸ばすように動いてみてほしい。その時に太ももの前面を触ると筋肉が硬くなっているのを確認できるだろう。それは、その大腿四頭筋を使っている証拠なのだ。

 この「膝を伸ばす動作」のほかに重要な役割が、歩いてる最中の膝の制御である。大腿四頭筋(正確には他の筋肉も当然使っている)が、歩いている最中に適切に収縮してくれているからこそ、私たちは身体を支え、膝折れが起きずに歩くことができる。

 だが、その大腿四頭筋の筋肉が弱っていたり、うまく働かないと「膝折れ」が起こる。その結果、膝を痛めてしまったり転倒してしまったりするのだ。つまり、この大腿四頭筋が"膝を守る"大事な筋肉なのだ。
膝が少しずつ変形を起こしてしまって可能性も!?

 では、この大腿四頭筋を鍛えて、膝折れを防ぐにはどうしたらよいだろうか? 鍛えるにはエクササイズが一番効果的だ、その方法を一つ紹介したい。

 まず、足を伸ばして床に座って(長座位)みよう。ちなみに、この時に膝の裏が床につかない(浮いてしまっている)人は、膝が少しずつ変形を起こしてしまって可能性がある。膝が伸びきらないなら、一度、医療機関で医師や理学療法士に診てもらうことをおすすめする。

 次に、膝の裏にタオルを丸めたものを入れる。床と膝の裏の間にタオルがある状態だ。そして、タオルを圧し潰すように下向き(床方向)に力を入れる(約5秒間)。この時に膝前面の筋肉が硬くなっていたら、大腿四頭筋が適切に使えている。

 もし、うまく力が入らなかったり、力の入れ方がイメージできない場合、普段から大腿四頭筋を使えていないのかもしれない。膝折れを起こしてしまう危険性があるので、注意が必要だ。

筋肉を使う感覚を「体に覚えさせる」

 このエクササイズを毎日、10回程度行ってみよう。大腿四頭筋の強化はもちろんながら、筋肉を使う感覚を「体に覚えさせる」という点でも有効である。筋肉を使う癖がうまくつくけば、無意識に筋肉が反応することにつながる。

 普段から大腿四頭筋を意識して使っている人はいないはずだ。無意識に筋肉を使えるようになることは、人間の身体に重要だ。この機会に、日頃から鍛えておくことをすすめたい。転倒リスクや膝の痛みの軽減や予防につながる。
(文=編集部、監修=三木貴弘)

三木貴弘(みき・たかひろ)
理学療法士。日本で理学療法士として勤務した後、豪・Curtin大学に留学。オーストラリアで最新の医療、理学療法を学ぶ。2014年に帰国し、現在は東京都で理学療法士として医療機関に勤務。その傍ら、一般の人に対しても正しい医療知識をわかりやすく伝えるために執筆活動にも力を入れている。執筆依頼は、"Contact.mikitaka@gmail.com"まで