今週は長谷部誠(フランクフルト)にとって勝負の1週間になるかもしれない。

 今シーズンここまで、長谷部は主に右SBとして起用されてきた。チームには本職の右SBがいるものの、アルミン・フェー監督を満足させることができず、ボランチが本職の長谷部の方が良いパフォーマンスを見せていたからだ。

 しかし、チームは冬の中断期間中に新たな右SBヤンニ・レゲゼルを補強し、長谷部が出場停止となった第20節から3試合連続で先発している。長谷部はというと、第21節ケルン戦はボランチとして出場したものの、第22節ハンブルガー戦は左SBバスティアン・オチプカが出場停止だったために、その穴埋めとして左SBで出場せざるをえなかった。

 しかし次節シャルケ戦、左SBのオチプカは出場停止が明け、右SBではレゲゼルが起用される可能性が高い。ここまでの長谷部は、ある意味で都合よく使われる立場であったものの、少なくとも右SBとしての出場機会は保証されている状態だった。つまり今週は、ようやく本職のボランチで勝負できるようになった一方で、ポジション争いに敗れれば出場機会を失うという緊張感に包まれた日々を送ることになる。長谷部はこの1週間をどのように過ごすのだろうか。

 今季、長谷部はなかなかボランチで出場できておらず、ここ数試合は毎試合のようにポジションが変わる中で、チームへの貢献を重視してプレーしてきた。

 フランクフルトが残留争いに巻き込まれるほどの不調にある現状は、その姿勢をより強いものにしている。フランクフルトは良くも悪くも勢いに左右されるところが大きいチームである。昨季は結果が出たことでチームとして勢いに乗っていくことができたが、今季は結果が出ないことで選手たちが自信を失い、チームとしても調子が落ちていく悪循環に陥っている。

 フェー監督が長谷部に信頼を置いているのは、そんな波のあるチームの中において、どんな時でも安定したパフォーマンスを発揮でき、常にチームのことを最優先に考えてプレーすることができるからだ。そうでなければこの緊急事態に、右利きのボランチを左SBで出場させはしない。

 左SBとして出場したハンブルガー戦も、チームのことを考えたプレーが多かった。立ち上がりこそ組み立てに加わって攻め上がるシーンも見られたが、相手のカウンターが脅威だと見ると攻め上がりは自重し、失点しないことを心がけた。チームとして攻撃の時間が増えた後半は高い位置を取るシーンも増えたが、なかなかボールは出てこなかった。

 慣れないポジションでのプレーだということを考えれば十分に及第点の内容だった。しかし、本人としては無難なプレーに終わってしまった印象が拭えないようだ。

「もちろんポジションが試合によって違う中で難しい部分はありますけど、今日みたいにこなすプレーじゃなく、チームが勝つために貢献するプレーというのをもうちょっと求めたいと思います。もう一個上に行くためには、自分でそういうところを求めていかないといけない。あまりやったことがないポジションだからしょうがないと考えてしまうと、それ以上は望めないので」

 確かにいまのチーム状況を考えると、バランスを考えて無難なプレーに終始しているだけでは十分とは言えない。チームを勝たせるために、もう一つ踏み込んだ動きが必要になってくる。分かりやすいところで言えば、ゴールに絡むプレーだ。今節ボランチとして出場したマルコ・ルスは本来CBの守備的な選手だが、攻撃の場面では積極的にクロスに飛び込んでいくシーンが目立った。

「このチームはボランチが結構前にいて、センタリングに対して入っていくとか、そこまで求められているので、そういうプレーを監督が求めている部分はあります。(中盤で一緒に)組む選手によっても違いますけど、自分は後ろに残っているという風になると思う。ただ、そこの(ゴール前に入っていく)部分は自分も求めていかなきゃいけないというか、自分がもう一歩上に行くためには大事かなと思います」

 実は、欧州を視察し長谷部とも会談したハリルホジッチ日本代表監督からも「もっとゴールを獲る意識を持つように」と言われたという。どうやら長谷部がもう一段上のレベルに行くために必要な要素については、本人も周囲も見解が一致しているようだ。

 いつもにも増してチームの結果を優先しなければならない現状では、チャレンジする部分とセーフティーにやる部分のバランスは難しい。ただ、チャレンジしなければチームの勝利に貢献できない状況にあるのもひとつの事実ではある。

 今週、長谷部はボランチとしてレギュラー争いに臨むことになる。目の前のポジションを奪うことだけではなく、チームの勝利に貢献することを求めていけば、おのずとポジションは見えてくるはずだ。

山口裕平●文 text by Yamaguchi Yuhei