平均初産年齢が上昇、2014年時点では30.6歳に(shutterstock.com)

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 女性の晩婚化、晩産化が浸透するとともに、高齢出産への不安、卵子の老化による妊娠率の低下や不妊への懸念も強まっている。2016年2月2日付けの毎日新聞によれば、大阪府内の女性看護師(44)は、将来の出産に備えるために、数年前に凍結保存した自分の卵子を使って、昨夏に女児を出産した。

 この女性は、30代後半から大阪市内にある2カ所のクリニックで、計10数個の卵子をマイナス196℃の液体窒素タンクに凍結保存。仕事が多忙のため未婚だったが、出産を願っていた。その後、現在の夫と2年前に結婚。夫の同意も得られたため、解凍した卵子に精子を注入する顕微授精(体外受精)を行い、受精卵を子宮に移植して成功した。

 女性の卵子を凍結した大阪市内のオーク住吉産婦人科によると、クリニックは2010年から健康な女性の卵子凍結をスタートし、昨年末までにこの女性を含む229人の卵子を凍結保存。そのうち17人が体外受精したものの、出産できたのは、この女性だけだった。

 オーク住吉産婦人科の船曳美也子医師は「自分の卵子を自分に戻すので倫理的な問題はない。将来の保険として卵子凍結という方法があることを知ってほしい」と話す。

平均初産年齢は30.6歳で30年前より約4歳もアップ、体外受精が最も多い年齢は39歳

 卵子凍結出産の問題点は何か?

 まず、健康保険は適用されない。この女性は、1回当たりの治療費約50万円や保管料など、総額数100万円を自己負担している。

 卵子は壊れやすく、凍結保存は困難だったが、1990年代以降、凍結技術が改良されて普及した。抗がん剤治療などで排卵が難しいケースや、卵巣機能が低下するのに備えて卵子を保存するケースなどが主流だった。がん治療などの医学的な理由から、妊娠・出産した例はあるが、仕事などの社会的理由から、妊娠・出産が確認されたのは、今回が初めてという。

 昨年、日本産科婦人科学会は「健康な女性が社会的な理由から行う卵子凍結を推奨しない」と発表。推奨しない理由は「卵巣出血や感染症などが起きる恐れがある、受精卵や胎児への影響が不明である、将来の妊娠・出産を保証できない」などだ。一方、日本生殖医学会は、2013年に40歳以上は推奨しないと条件付きで認めている。これらの医学会は、卵子の保存期限を取り決めていないが、50歳までなどの年齢制限を設けているクリニックもある。

 年々、女性の晩婚化、晩産化が進み、加齢で妊娠率が低下する卵子の老化への不安から、健康な女性が「卵活」するケースが増えている。

 女性が第1子を出産する平均初産年齢は、30.6歳(2014年)。30年前より約4歳もアップした。また、体外受精が最も多い年齢は39歳。出産リスクが高くなる年齢でも、子どもを望む女性が多いのが分かる。
女性たちの切なる希望をかなえる卵子凍結出産は、どうあるべきなのか?

 毎日新聞が昨年4月に実施した全国調査によれば、女性が卵子凍結を希望する理由は「パートナーが見つからないため」「仕事を優先するため」が多い。また、仕事など社会的な理由で卵子凍結した女性は全国で353人。ただ、卵子凍結を受け付けている医療機関は、全国に12施設ある。したがって、今回の女性以外の出産例もあるかもしれない。

 だが、受精卵に比べて未受精卵は壊れやすいため、卵子凍結による妊娠・出産率は、36歳で16.8%、40歳で8.1%、42歳で5.0%、45歳で1.0%と、加齢に伴って低下する。高齢出産は、流産や合併症のリスクも高まるため、卵子凍結が出産率の上昇や少子高齢化の歯止めになるか否かは不明だ。

 昨年2月、順天堂大学浦安病院と浦安市は、加齢による不妊を防ぐために、20〜35歳の健康な女性が自分の卵子を凍結保存する「プリンセス・バンク」構想を発表、市民を対象に凍結保存費用の助成を推進している。

 慶応大学の吉村泰典名誉教授(元日本生殖医学会理事長)は「凍結すれば子どもが産まれるというものではない。仕事と育児を両立しやすい社会環境を整備することが先決だ」と指摘している。

 どうしても子どもが産みたい! そんな女性たちの切なる希望をかなえる卵子凍結出産は、どうあるべきなのか?

 問われているのは、母子の生命と人権を守り切れない社会システムの矛盾かもしれない。
(文=編集部)