昨年の全日本選手権で2連覇を達成、名実ともに日本女子のエースになったと言ってもいい宮原知子が、四大陸選手権で、ショートプログラム(SP)、フリーともに自己ベストを更新する快挙で初優勝を成し遂げた。

 SP72.48点、フリー142.43点。合計点の214.91点は世界歴代6位の高得点で、2位以下に21点以上の大差をつける強さを見せつけて、シニア参戦3シーズン目でついにチャンピオンシップ大会のタイトルをその手に掴んだ。

「3回目の四大陸選手権でやっと優勝することができてうれしいです。シーズン前半は自分の納得いく演技をしていましたが、結果的に2位が多くて、この大会も2年連続で2位だったので、この四大陸は優勝を目標にして臨み、それができたので、世界選手権につながるいい試合になったと思います」

 表彰台の真ん中に誇らしげに立った宮原は「1位を取れたんだと自分ですごく感じることができた」と感慨に浸っていたが、一方では次なる目標である3月の世界選手権に向けて、早くもやる気がふつふつと湧いてきているようでもあった。

 昨年12月にスペイン・バルセロナであったグランプリ(GP)ファイナル後、フラメンコの本場でプロダンサーから直接指導を受ける機会に恵まれたという。その本場仕込みのフラメンコがコンセプトのSP『ファイアーダンス』では、さらに磨きをかけた演技で見る者の琴線に振れるパーフェクトなパフォーマンスが際立った。スピンやステップで高評価を受け、GOE加点で1点以上を出したほか、演技構成点は40点に近い39.88点をマーク。SPでは初めて大台の70点を超える出来で、首位発進となった。

 実は、調子の良さと今回の戦いに手応えを感じ、少し緊張感が失われていたフリー前日の公式練習ではピリっとせず、濱田美栄コーチから檄を飛ばされという。「変に落ち着いていたので、緊張感を出すように気持ちを締めました」(濱田コーチ)と、あえて宮原を追い込んだ。

 それが功を奏したのか、濱田コーチから「丁寧に滑らず、大きく思い切って滑りなさい」と言って送り出されたフリーでもノーミス演技を披露。ミスを出していた他選手を圧倒する演技を見せた。142.43点の高得点は、2014年ソチ五輪で記憶に残る演技をした浅田真央がたたき出した自己ベスト142.71点に迫る得点だった。

「プレッシャーはあまり考えずに、フリーではいままで以上に自分のベストな演技をしようと考えました。今回はSPでもフリーでも自己ベストの得点を出すことができ、SPでもやっと70点を超えることができたので、点数的にも技術的にもうれしいです。(欧州選手権で表彰台を独占した)ロシア勢との差については、これからもっと自分が頑張るしかないかなと思っています」

 ジュニア時代から同世代のロシア選手の後塵を拝し続けてきた悔しさを持っているだけに、ロシア勢が参戦していない四大陸のタイトルを獲得したからとって、自分が置かれているポジションが世界のトップではないことは重々承知している。それでも、着実に力をつけて階段を一段ずつ上り、しっかりと結果と経験を積み上げてきた自信は、四大陸女王になったことでさらに深まったに違いない。

「今日のフリーで良かったところは、演技冒頭の3連続ジャンプで、1月終わりから練習し始めた両手を挙げるジャンプを入れることできたことと、ジャンプ以外のところではしっかり滑れたことです。自己評価は80点くらいです。マイナス20点はもう少しジャンプを思い切っていければ良かったかなと思いました。

 自分では毎回の試合で、しっかり自分がいまできることを、そして一番いい演技をすることを意識してやっています。今回もそれをしっかりできましたが、あまり自分が強い感じはなく、まだまだもっと強くなっていかないといけないと思っています」

 どこまでも貪欲に、誰よりも練習で努力を惜しまない才能の持ち主。2年後に迫る平昌五輪での金メダル獲得を目指している17歳にとって、今回の四大陸での勝利は、最初のステップといっても過言ではないだろう。

「今シーズン2位が多かったこともあり、優勝が一番だなと思っていたので、初めて(チャンピオンシップ大会で)優勝できてすごくうれしいのと、自分でももっと上の順位を目指していけるという自信がついたと思います」

 強敵ロシア勢力という大きな壁を乗り越えるためには、国際大会で目標に掲げる「いい演技をしてしっかりと優勝できる選手」になることが必要になってくるだろう。濱田コーチも「もうひと滑り大きく、そしてスピードも一段階挙げることが大事」と語っている。

 約1カ月後に迫る世界選手権でのロシア勢との勝負が楽しみになってきた。

辛仁夏●文 text by Synn Yinha