ノーザン・トラスト・オープンを制したバッバ・ワトソンが18番グリーンでTVインタビューを終え、クラブハウスにつながる細い階段を登っていった。
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 階段の上には練習グリーンが広がっており、そこには愛妻アンジーと長男カレブくん、長女のダコタちゃんが待っていた。家族のところへようやく辿り着いたワトソンは、子供たちを抱き上げ、妻とキスを交わし、感極まって涙を流した。
 ワトソンにとって、この勝利は米ツアー9勝目。リビエラでは2度目の優勝だ。かつてのワトソンは、2010年の初優勝のときも、2011年の2勝目のときも、そして2012年のマスターズ初優勝のときも、まるで子供のように号泣していた。
 いつぞやのインタビューのときは「僕は何勝しても必ず泣く。優勝は思い切り泣くに値する偉業だから」と宣言さえしていた。しかし、2014年に2度目のマスターズ制覇を果たしてからのワトソンは、優勝しても以前のように泣かなくなっていた。
 それが、なぜだったのかは、わからない。優勝経験を重ねるうちに以前ほどの感動がなくなったのか、それとも以後の勝ち方がたまたま号泣するような感動を感じられないものだったのか。ともあれ、最近の彼は勝利のうれし涙を見せなくなっていた。
 だが、今日のワトソンはおおいに泣いた。2014年の秋に養子縁組したばかりのダコタちゃんを抱き上げ、2012年の春に息子になったカレブくんを抱き上げ、そして妻のアンジーの胸に顔を埋め、目を真っ赤にして泣いた。
 泣かなくなっていたワトソンが久しぶりに見せた涙。その陰には、こんなストーリーがあった。
 思ったことをそのまま口にしてしまい、ついでに言葉足らずで誤解され、報じられ、批判される。ワトソンは、そんなトラブルに陥りやすい。
 松山英樹が優勝した2週前のフェニックスオープンの開幕前にもワトソンはジョークのつもりで「僕はスポンサーのためにここにいるけど、僕自身はスコッツデールの街もこの大会もコースも本当は嫌いなんだ」と語り、大騒動になった。
 「そんなつもりで言ったわけじゃないけど、そんなふうに書かれた。僕はスコッツデールに8年も住み、この地が大好きなのに、、、。フェニックスオープンの土曜日には毎ショット、ブーイングを受けた」
 エモーショナルだと言われ続けてきたワトソンは、マスターズ2勝目以後は「感情のコントロールができるようになった」と喜んでいた。だが、フェニックスの大観衆から受けた激しいブーイングはさすがに心に刺さった。
「ついに、以前の僕に戻ってしまった」
 その日は73を叩いた。「それでも(最終日は巻き返して)14位になった」が、翌週のぺブルビーチ・ナショナルプロアマでも心の乱れは止まらず予選落ちした。その翌日の日曜日には血尿まで出た。以前にも患った腎結石だったそうだが、「死ぬかもしれないと思った」。毒舌家、トラブルメーカーなどと言われるワトソンだが、彼は彼なりに苦しんでいた。
 ノーザントラスト最終日。大混戦ではあったが、スコアを伸ばす競争というよりは、難しさが増したサンデーバック9のリビエラはスコアを落とさない我慢合戦の様相。その中で、心もゴルフも我慢を重ね、1打差で勝利したワトソンは、家族の顔を見た途端、心の堤防が崩れ、号泣した。
 しばしば言葉足らずで誤解され、それが報じられてしまうワトソンは、2人の我が子に「いつ、どんな言葉で養子縁組の事実を伝えたらいいのか」と悩むことがあるそうだ。「でも、今の時代はコンピューターやビデオがある。本当の愛と涙は、僕の優勝の映像で伝えることができると思う。もう僕は勝ったこと自体に涙することはない。すべては家族のためだ」
 ワトソンの久しぶりの涙には、そんな意味が込められていた。
文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)
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