ヒートショックは冬に頻発する!shutterstock.com

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 安全な入浴法とされる「湯温41℃以下/10分未満」の両方を満たしているのは42%――。消費者庁が発表した、このような調査結果(55歳以上の3900人を対象に2015年12月調べ)がある。また、少し前のデータだが、平成11年度、東京都健康長寿研究センターが、東京消防庁のデータを基に、全国で入浴中に急死した人の数を算出したところ年間約1万1000人、同年の交通事故死9006人を上回っていた。

 近年は、冬場に頻発する「ヒートショック」という用語や認識も、ようやく市民権を得たかに思えるが、高齢者自身も身内の方々も、どこか他人事として、ぬるま湯(いや、熱湯か!?)に浸かっている家庭が、まだまだ多いのだろう。しかも、独居老人(だけでなく中年層)も急増中の超高齢化社会だ。

 そこで浴槽死をめぐる意外な話を紹介しておきたい。もし、不幸にして身内の誰かが浴槽死に見舞われたらどうなるか? 起きてしまったことは取り返しが効かないものの、遺された側には不測の事態に対する事後処理が待ち構えている。まずは警察への通報が最優先だが、浴槽死の現場をどうするか......。

 実は、そのようなケースにも対応してくれる特殊清掃業者がある。

その後も浴槽を使う場合は特殊清掃を

 最近は換気機能が充実しているとはいえ、総じて狭い空間である浴室での死には、臭気が伴う。同居者が直後に発見した場合はまだしも、時間が経過すればするほど臭気の密度は高まる。日本法医学会調査委員会による『浴槽内死亡事例の調査』(平成24年度)でも、故人の入浴開始から溺没発見されるまでの経過時間は「6時間以上」が最多とのこと。浴室という環境を思えば、無臭は皆無だろう。

 さらに、遺体の発見が遅れたら、湯温や湯量の別なく、浴槽内の水には体液や脂、髪の毛や皮膚が状態や環境に応じて混ざっているだろう。動揺のあまり(あるいは警察の到着も待たずに)不用意に浴槽の栓を抜いてしまえば、それらが配管を塞いで詰まり、後々の処理を難儀にしかねない。

 そこで特殊清掃作業の発注、浴槽死処理に関するプロフェッショナルの登場である。事前に彼ら第三者の立ち入り許可も警察に申請しなければならない。かつてマツコ・デラックスが出演する番組でも紹介されたA社の場合、問い合わせ電話で依頼者の氏名・連絡先・現場の住所&状態・作業の希望日時を告げれば、概算の見積もり金額を口頭で伝えてくれる。
浴槽での死因と保険金の微妙な関係

 同社でも一番需要の多い湯沸かし機能付きユニットバスの場合、経験則から独自開発された散水剤で殺菌消毒と初期消臭がまず行なわれる。これは浴室内の臭気が外部に漏れ、他の生活空間に臭気が染み出てしまうとかの2次被害を回避するための必要性からだ。

 次に浴槽内の水に溜まった各種の汚染物を取り除く作業に入るが、他範囲にも広がった汚染物の除去作業はドアレールや排水管を外し、蛇口のボルト部分も擦り落として隅々まで丁寧に行なわれる。給湯器内など普段はあまり触れない箇所にもヌメリ、菌が繁殖しており、これが臭気を吸収して汚染物に代わる臭気の発生源となるので徹底的に除去される。

 上記の作業後は「敗血症」につながりかねない大腸菌や「レジオネラ肺炎」を引き起こす菌などの繁殖ぶりを水質検査するため、最速でも2週間(A社例)を要する。特殊清掃という近隣に悟られたくない隠密作業なども24時間対応で相談に乗ってくれるようだ。

 もう一つ、浴槽死の場合は保険金の支払いもどこか曖昧だ。事件性がなければ検案医からは「急性心不全」とか「虚血性心疾患」と診断されやすい。基本的に生命保険は支払われても、これらの浴室内の病死では「急激・外来・偶然」を要件とする傷害保険の支払いは原則なし。

 仮に病名を否定し、足を滑らせての転倒死などを立証するにも遺体のCT検査は保険請求者側の負担。結果もあくまでも推測の範囲と保健会社から突かれて支払われない例が大勢だ。かように浴槽死の悲劇に伴う意外な負担や不測の落胆は少なくない。まだ寒い季節が続く、湯温41℃以下/浸かるのは10分未満を守ろう。
(文=編集部)