この体勢が脳卒中を招く!(shutterstock.com)

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 美容室や理容室でのシャンプーは、実に気持がいい。うたた寝しそうになることもある。だが、気分が悪くなる人も少なくない。なぜだろう? 原因は、美容室では主流の「首を反らした状態で洗髪」することに関係があるらしい。

 東京医科大学の遠藤健司医師によれば、シャンプー台の上に首を乗せたまま後ろに反らす状態が長時間続くと、血管内に血栓ができやすくなり、脳卒中(脳出血、クモ膜下出血、脳梗塞)を起こす恐れがあるという。

脳卒中を起こしやすい美容室脳卒中症候群とは?

 頸部の両脇には、小脳、脳幹、後頭葉などに血液を運ぶ椎骨(ついこつ)動脈がある。椎骨動脈は、椎骨と密接につながっているため、首を後ろに強く反らすと血管が圧迫されるので、血流が一時的に低減する。その結果、血小板の流れが滞るので、血栓ができる。再び首の位置を元に戻して血流が回復すると、せき止められていた血液が一気に流出するため、押し流された血栓は、脳内の枝分かれした毛細血管内に詰まり、脳卒中に繋がる。

 これが「美容室脳卒中症候群(Beauty Salon Stroke Syndrome)」と呼ばれる症状だ。

 美容室脳卒中症候群は、頭痛、吐き気、めまい、手足のしびれ、冷や汗、首や後頭部の痛み、失神などの症状を示す。病院で診察を受ける人もいれば、体を休めるだけで回復する人もいる。

 美容室脳卒中症候群は、スタンダール症候群(The Stendhal Syndrome)ともいう。スタンダール症候群は、高い位置に飾られた彫像や壁画などの芸術作品を長時間にわたって見上げながら鑑賞している時に起きやすい。頸部の動脈が圧迫され、脳への血流が一時的に阻害されるので、動悸、目まい、失神、錯乱、幻覚などを伴う。

 1817年、フランスの作家スタンダールは、フィレンツェのサンタ・クローチェ聖堂を訪ねた。ジョットのフレスコ画を見上げた時に、至福感と激しい動悸に突然襲われた。その卒倒寸前になった恐怖を『イタリア紀行』に残している。

 1989年、イタリアの心理学者グラツィエラ・マゲリーニは、多くの外国人観光客が崇高な充実感とともに、強い動悸、目まい、圧迫感などの症状を現したことから、スタンダール症候群と命名した。

 先日の遠藤医師によれば、ほとんどの観光客は見上げたままの姿勢を続けているものの、症状が起きない人も多いという。血栓ができやすいのは、大量に汗をかいて血液中のミネラル成分の濃度が高まったり、5分以上も首を反らしたままでいるため、血流が急激に悪化する場合だ。

 つまり、水分不足や首への長時間の圧迫によって発生した血栓が脳卒中の元凶である。
首を圧迫しない、首に負担をかけない、水分補給や運動も大切

 美容室のシャンプーや美術館の鑑賞だけでなく、次のような状況でも起きやすいので、充分に注意が必要だ。

 たとえば、天井の電球の取り替え作業なら、ソケットまでギリギリ届く高さの足場ではなく、余裕を持って取り替えられるような足場を確保する。草むしりをする際は、1ヵ所に止まらずにこまめに移動し、手元の草だけを取る。劇場での映画鑑賞なら、ときどき首を元に戻して血流を改善したり、首に負担をかけないようにスクリーンから離れた席で観るなどだ。

 全日本美容業生活衛生同業組合連合会は、洗髪中は首の血管への圧迫を避ける、首を左右に揺らさない、洗髪後にチェアを起こす時は一声かけて首に急激な負担をかけないなど、全国の美容室に呼びかけている。また、首の負担軽減を考慮したシャンプー台を使用している美容室もあるので、気になれば美容室へ問い合わるのもいいだろう。

 また、シャンプー中に目まいや吐き気などを感じたら、すぐに美容師さんに伝え、休ませてもらえば、症状が回復する場合も多い。だが、手足がしびれる、手足が動かせない、ろれつがまわらない、激しい頭痛があるなどの症状があれば、神経内科や脳神経外科をすぐに受診してほしい。

 日々の注意としては、水分をしっかりと補給する、酒の飲み過ぎに注意する、ストレスを溜め込まない、ウォーキングや水泳などの適度の運動を続けるなどに留意し、コンディションを整えておきたい。
(文=編集部)