思考錯誤しながら、自分に合った洗髪方法を見つけよう

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シャンプーを使わず髪を洗う「ノー・プー」。10年以上前に米国で始まり、日本にもそのムーブメントは押し寄せている。「頭髪にいい」という意見もあるが、「臭そう」「フケが出るのでは?」と懐疑的な声も。本当に髪にいいのか、専門家の意見を聞いた。

黒髪セレブの洗髪は5日に1回

始まりは米国。ヘアスタイリストのロレイン・マッセイさんが2001年に出版した著書『カーリーガール・ザ・ハンドブック』の中で「ノー・プー」という言葉を使ったのが最初だと言われている。縮毛に悩む女性のためのバイブル的な本で、「シャンプーをやめたら髪の調子がよくなる」としてノー・プーを提唱。その後、縮毛の人に限らず女優やモデルなどセレブの間でノー・プーを実践する人が増え、ムーブメントは広がっていった。

日本では「湯シャン」とも呼ばれ、主にお湯で洗髪することを指す。「ノー・プー」は、シャンプーを使わないことが基本だが、お湯だけで洗う方法のほか、重曹とレモン汁(またはリンゴ酢)で代用する、パウダーシャンプーや石けんを使う、コンディショナーで洗髪するなど、何通りかのやり方がある。なかには、黒髪が魅力の米女優キム・カーダシアンのように、5日に1回しか「洗わない」という人も。

ノー・プーが広がった背景には、シャンプー剤の洗浄成分が頭皮から必要な皮脂をも洗い流してしまうという考え方がある。毛髪に自然な皮脂を残せば髪や地肌が健康になるというのがノー・プー支持者の意見だ。実際に「十代のころのツヤが戻った」「髪にボリュームが出た」「スタイリング剤を使わずに済むようになった」などの声も多く聞かれる。

一方で、海外の専門家からは「頭皮からは皮脂や汗、汚れ、死んだ皮膚細胞を定期的に洗い落す必要があるが、『ノー・プー』をうたう製品ではこうした汚れを十分に落とせない」「真菌や細菌への感染リスクがある」「頭皮の炎症やフケ、ニキビなどが生じる可能性がある」という指摘も。定期的にシャンプーをする必要性はあるという。

自分に合う洗髪方法を探す

日本の専門家は「ノー・プー」の動きをどのように見ているのだろうか。アンチエイジング医師団のメンバーに意見を聞いた。

北里大学名誉教授でアンチエイジング医師団代表の塩谷信幸氏は、自身も長年、ノー・プーを実践しているという。「床屋でしかシャンプーはしたことがないので、ひと月半に一回程度。私の場合は毛髪のためというより無精なだけですが...」と断りながらも、こう指摘する。

「頭皮に限らず皮膚全般にいえることですが、洗いすぎは良くありません。過度な機械的刺激と洗剤の化学的な刺激はかえって皮膚にダメージを与えることもあるので、注意が必要です」

近畿大学奈良病院教授で皮膚科専門の山田秀和氏は、「脂性肌、乾燥肌など地肌のタイプによっても、ノー・プーが合う人と合わない人がいるでしょうね。臭いやシラミの問題もありますから、一概にいいとはいえません」と言う。

美容・医療ジャーナリストの海野由利子氏も「臭いの原因は雑菌が繁殖するためですから、高温多湿で通勤時間の長い日本では難しいのでは」とノー・プーには懐疑的だ。ただし、シャンプーの中には頭皮のかゆみや痛みを引き起こすものもあるので、慎重に選んだほうがよいと言う。

女性専門の頭髪外来を設ける銀座AACクリニック院長の浜中聡子氏は、「(ノー・プーもそうだが)シャンプーにも頭皮にやさしいとか、髪にやさしいなど、低刺激をうたったものもいろいろありますが、万人に合うものはありません」と、ノー・プーに限らずどの洗髪方法がよいかは「人による」と強調する。

「洗い上がりの頭皮や髪の状態と、翌日の夕方、べたつきの気になりやすい時間帯の状態を総合的に判断して、自分に合った洗髪方法を見つけると良いと思います(浜中氏)」

セレブのつややかな黒髪がノー・プーの賜物だったとしても、自分にも当てはまるとは限らない。しかし、毎日シャンプーをするのがベストかどうかもわからない。自分の髪に合った洗髪方法は、試行錯誤の中から見つけていくしかない。そのためには一度、ノー・プー生活を試みるのもいいかもしれない。[監修:山田秀和 近畿大学医学部 奈良病院皮膚科教授、近畿大学アンチエイジングセンター 副センター長/浜中聡子 AACクリニック銀座院長]

(Aging Style)