国際戦略車として斬新なデザインでデビューしたイグニス。その造形の核心を知るべく担当デザイナーに直撃インタビュー!を敢行しました。

【語る人】
スズキ株式会社 四輪技術本部
四輪デザイン部 エクステリア課 新居武仁係長

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── まずはじめにイグニスの立ち位置から。特徴的なショルダーラインとサイドグラフィックは新型アルトと同一のモチーフですが、なぜ2台は連作に?

「いえ、デザイン部に連作という認識はないですね。ソリオのようなスペース追求型やスイフト風のスポーティなものなど、異なるいくつかの提案の中で役員に選ばれたのがこれだったと。まあ、この辺はいろいろと事情があるんですけど…」

イグニス

──セルボやフロンテなど、今回は過去のモチーフを散りばめましたが、なぜイグニスでそういう試みを?

「イグニスという名前は歴史が浅いので、あえてヘリテッジを意識した面はありますね。ただ、エスクードのクラムシェイプなど、スズキにはアイコンを継続する手法が結構ありますから、決して特殊な例じゃないと思いますよ」

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──では具体的なカタチの話を。基本モチーフは同じでも、ボクシーなアルトに対し全体を曲面でまとめました

「たとえば、宇宙服のヘルメットのような大きな球体を、横からスパッと切ったイメージです。これによって、ミッドセンチュリー的な未来感や強い塊感が期待できる。軽よりもサイズに余裕があるAセグだからできた造形ですね」

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──セルボから採った80年代風の「閉じた」フロントグリルは、デザイン的に不自由な表現と言われてきましたが?

「たしかに、異型ランプの登場は造形の自由を手に入れましたが、それもやり尽くした感がある。一方で、フォードのマスタングなど一部ではグリルの原点回帰が見られます。それに同じシールドビームでも、いまはLEDなどパーツの技術が進化してますから、グリル内の表現の幅もずいぶん広がっているんです」

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──東京モーターショーに出展の特別仕様ではホイールアーチモールが付いていましたが、市販版はありません

「デザイナーとしては四駆らしく見せるために是非付けたいところですが、日本ではこの部分にエアロパーツを付けたいという要望が多いんです。ただ、モールがなくても貧弱に見えないよう、ホイールアーチは強い折り返しのプレスを使い、また単純な円ではなく少しだけ角を持たせた安定感のある形状にしています」

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──ルーフはボディ後端まで延ばさず、スパッと斜めにカットしました

「ここはもうスタイリング優先です(笑) クロスオーバーとしてタイヤを大きく表現する一方、キャビンは小さく見せたい。軽の場合、前席からリアガラスまでの長さがカタログスペックとして必須ですが、今回はそういう制約もなかったですし。また、ここをカットしても荷室容量には直接影響がないんですよ」

──それによってできたCピラーの形状もまたアルトに準じました

「太いピラーで力強さを出しつつ、フロンテから採った軽快なクーペルックを同時に両立させてます。斜めに切ったこの形状があるからこそ、フロンテの3本ラインがちゃんと収まるわけです」

──縦・横ともナナメに切ったリアランプは、動きがあって実に特徴的です

「このクルマは、前後だけでなく上下にも大きくボディを絞っています。これはボディ断面の張りをしっかり出すためで、それを支えるタイヤはさらにグッと張り出す。実は初代のVWゴルフも同じで、絞りが大きくリアパネルは結構縦長なんですけど、やはりタイヤが張り出していて安定感がある。今回のリアランプは絞ったボディ面に沿わせ、かつ下開きの安定感のある形状にしました」

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──リアバンパーは厚みもスゴイですが、ボディ同色が一般的な中でわざわざ素材色にしましたね

「狙いはワイド感とプロテクト感です。イグニスはAセグとしては異例にコストをかけていて、たとえばリアランプを2分割構造にしています。バンパーも、ここはボディ同色に塗った方が安上がりなんですけど、あえて別材にしました。これは初期スケッチ段階からの提案ですね」

──では、そろそろまとめです。リアビューをはじめイグニスは欧州車のイメージが強く、いい意味で日本車離れしていますが、これは最初から狙ったものですか?

「狙ってましたね(笑) ラテン系だけでなく、up!などドイツ車の雰囲気もあるでしょう? 先のボディの絞りがいい例ですが、このクルマは欧州で認められること優先していますから、ある意味日本車とは考えていないんです」

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──その違いの肝はどこにあるんでしょう?

「たとえば居住空間の寸法など、カタログ値にこだわるのではなく、クルマ本来の姿を追求すると。先代のスイフトが、居住性を割り切りながらも、しっかりしたショルダーラインや塊感のある面などで欧州に認められたのがいい例です。」

──最後に、過去のモチーフを使ったことで得られたことは?

「80年代前後の、クルマのデザインが楽しかった頃の時代が一巡したかたような表現はアリだなと。単にクリーンなデザインというのではなく、そこにヘリテッジを採り入れる、あるいはアイコンを継続することで積み重ねられた魅力ある造形ですね」

(すぎもとたかよし)

イグニス革新のデザイン。これはもう日本車じゃないですから(笑)(http://clicccar.com/2016/02/19/354323/)