「アリさんマークの引越社」今度は「雇用契約書」に問題?

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2015年の第4回ブラック企業大賞にノミネートされた「アリさんマークの引越社」(引越社関東)で、今度は「社員2人以上での飲酒を禁止する」という契約書を社員やアルバイトに書かせていたことがわかった。

これに違反すると「懲戒解雇」になるともしている。インターネットには、「社員は酒飲んでグチる権利もないのか?」といった声が広がっているが、契約書の有効性をめぐり様々な議論も起きている。

「会社の愚痴言って、他の客に聞かれるとまずいってこと?」

過重労働や残業代の未払いなどの違法行為で訴えられたり、副社長が労働組合員らを恫喝する様子がユーチューブに投稿されて物議を呼んだりと、「騒動」が続いている「アリさんマークの引越社」(社名=引越社関東)で、今度は「引越アシスタント(準社員)契約書」の内容がネット上で問題になっている。

どんな会社にも雇用契約書はあるが、一般的には雇用の期間や勤務地、賃金の支払い、就業規則などが記されている。引越社関東のそれにも雇用期間や身だしなみなどがあるものの、気になるのは「勤務姿勢」の項目。「仕事中の私語は慎んでください」「社内規定を遵守してください」といったことに加えて、「社員及びアルバイトとの複数(2人以上)での飲酒は禁止します」とある。

引っ越しのトラックを運転するのだから、就業時間の飲酒を禁じるのは当然だが、とらえ方によっては私生活でも社員同士が2人以上での飲酒することを禁止しているように読める。しかも「発覚した場合は懲戒解雇処分とします」と、厳しい処分が下されるというのだ。

インターネットには、就業規則や雇用契約書に私生活にまで介入して、きまりを破ったら懲戒解雇というのは、さすがにやり過ぎではないのか、この契約書は無効ではないのか、といった声が少なくない。

「仲間で飲みに行くなってこと? こわっ」
「愚痴るの禁止って、なんかの拷問かよ」
「酒飲んだ席で会社の愚痴を言って、他の客とかに聞かれたまずいってことだろうな」
「運転の問題だったら『2人以上』とか関係ないもんなwww」
「仕事帰りの1杯がダメなん? それはやり過ぎ」

といった具合だ。

その一方で、

「飲みに行って翌日に穴開ける奴が多いからだろ。どこの引越業者も悩みの一つだろな」
「飲酒しなけりゃいいんでないの? 仕事終わったらみんなで烏龍茶のみ行くぞ。マジメな運送屋はそんな感じやで」

などと、会社側を支持する声がないわけではない。

J‐CASTニュースは、引越社関東に真意を聞こうと取材を申し入れたが、「聞きたいことがあれば、質問状を送ってほしい」と話し、ファクス番号を尋ねると「よくわからない。郵送でかまいません」とだけ言って電話を切った。

飲酒を禁じても直ちに法律違反ではない?

この契約書について、引越社関東の不当労働行為と闘っている労働組合、プレカリアートユニオンは「(社員などから)直接こちらに相談が寄せられたことはありません」という。そのうえで、「はっきりしたことはわかりませんが、この規則に違反して懲戒解雇されたケースがあったと聞いています」と話した。

ブラック企業被害対策弁護団代表の佐々木亮弁護士は、2016年2月17日付のYAHOO!ニュース「【アリさんマークの引越社】アルバイトに『2人以上で飲酒したら懲戒解雇』という誓約書にサインさせる」の記事で、こう指摘している。

「そもそも、労働者に対して飲酒を禁止することができるのか?という問題があります。 まず、いくら使用者だからといって、労働者の私生活に立ち入ってその生活を制限するようなことは許されません。これが原則です」

さらに、「もちろん、こんな理由で懲戒解雇できません。ほぼ100%に近い確率で、これを理由とした懲戒解雇は無効になるでしょう」と、言い切っている。

一方、東京労働局総合労働相談コーナーは、「雇用契約書に『飲酒を禁止する』ことが書かれていたとしても、それが直ちに法律違反とは言いきれません」という。「運送業であれば、飲酒は重要な労務条件になりますから、たとえ社員同士でも翌日の業務に差し支えるような飲酒は避けてもらいたいと考えるのは、むしろよくあることです」と説明。まずは会社に真意を確かめる必要がある、と話す。

ただ、「労働法規のうえでは違法とは言いきれませんが、『個人の生活に会社がどこまで踏み込んでいいのか』という、別の問題はあります」とも。「(会社側は)勝手に個人の生活を制限したとして、人権蹂躙と訴えられないとも限りません」と話し、その決着は「裁判に委ねられるとしか言えません」。