写真提供:マイナビニュース

写真拡大

●アニメの「CGっぽさ」、その違和感の理由を解剖
意思を持つ武器「ブブキ」と謎の人型巨大生命体「ブランキ」を中心に展開される重厚なSFファンタジーアニメ『ブブキ・ブランキ』。3DCGを用いた制作を得意とするアニメスタジオ「サンジゲン」の設立10周年を記念したオリジナルTVアニメが話題を呼んでいる。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』の副監督や、『キルラキル』の演出などを手がけた小松田大全氏を監督に起用し、キャラクターデザインをコザキユースケ氏、シリーズ構成・脚本をイシイジロウ氏、北島行徳氏が手がけるなど制作陣の豪華さにも目がいくが、特筆すべきはフルCGにも関わらずセル画のような感覚で違和感なく鑑賞できる「セルルック」技術の高さだ。

そこにはいったいどんな技術が使われているのか。そして、CGアニメとデジタル作画は日本のアニメ業界をどう変えていくのか。サンジゲン代表の松浦裕暁氏に聞いた。

○「CGっぽい」とはどういうことなのか

――本日はよろしくお願いします。まずは『ブブキ・ブランキ』のお話から聞かせてください。本作はフルCGでありながら、セル画に見える表現、いわゆる「セルルック」で制作された作品ですよね。見ていてCGっぽさを感じなかったので驚きました。そこでふと疑問に思ったのですが、私たちがアニメのCGから感じる「CGっぽさ」というのは何なのでしょうか。

松浦:「CGっぽさ」というのは、子どもの頃から僕たちが刷り込まれてきた日本のアニメとの違いからくる違和感です。具体的にいうと、まずは「形」。CGでいうモデリングですね。セルアニメでは一枚一枚を手描きで作っていくため、完璧に同じ絵は二度と描けません。

しかし、CGではすべてのカットに同じモデリングが使えて、ポンっとボタンを押せばつねに同じキャラクターが出せます。形としてはCGの方が正確なはずなのですが、僕たちは一枚一枚異なる形の絵を何枚も重ねて表現している日本のアニメに慣れ親しんできたので、CGの方がおかしいと感じるのです。

――なるほど。背景がCGでもそれほど違和感がないのに、キャラクターには違和感を覚えるのはそういうわけですか。

松浦:もう一つの理由は「動き」です。日本のアニメは1秒間に24コマで絵を動かしているのですが、手描きの場合、そこまで秒間のコマ数は増やしておらず、実際には1秒間に8コマくらいで描かれています。ところが、CGではコンピュータで計算して動きをつけられるので、ボタンを押せば1秒24コマの絵がすぐにできるのです。この動きのなめらかさが「CGっぽさ」を生んでいるのです。

――これも面白いですね。本来であれば、1秒間に24コマでぬるぬる動く方が映像表現としてはリッチといえるわけですが、私たちは日本のアニメで8コマ/秒の動きに慣れてしまっているわけですね。

松浦:そうです。だから日本のアニメ以外、たとえばディズニーなんかだとぬるぬる動いても違和感はないですよね。それはディズニーがそういう文化を作ることに成功しているからです。本当は日本もディズニーのようにしたかったのでしょうけど、コストや人手不足などいろいろな問題で8コマ/秒が定着したのでしょう。

(c)Quadrangle / BBKBRNK Partners

●3DCGの"落とし穴"を回避した『ブブキ・ブランキ』
――いわゆる「CGっぽさ」の正体はよくわかりました。しかし『ブブキ・ブランキ』からはCGっぽさをそれほど感じません。その理由は?

松浦:一つにはお客さんが育ったということがあります。我々が本格的にTVシリーズを始めたのは2011年で、その頃はまだ「違和感がある」と言われていました。それでも続けているうちに、お客さんが慣れてくれたのでしょう。

余談ですが、僕はアニメをぜんぜん見ていなかった人間で、東京にきて最初に入った会社でアニメが原作のゲームを作ることになってから勉強しました。最初はどのアニメのキャラクターもぜんぶ同じに見えましたが、だんだんわかるようになってきました。「慣れ」の問題は大きいんですよ。

――それはありそうですね。しかし、『ブブキ・ブランキ』は「慣れ」でカバーしている範囲を超えて、明らかにこれまでのセルルックアニメよりもセル画に近い印象を受けるのですが。

松浦:それはふたつ目の理由で、モデリングの動かし方に個性が出せるようになったからです。セルアニメだと原画担当が違うとタッチも微妙に変わったりしますよね。CGだとそういう個性を出すのが難しかったのですが、最近はできるようになってきたのです。

――CGで個性を出すというと?

松浦:3DCGを使ったアニメにはよくやりがちな落とし穴があります。それは、一つのモデルをすべてのカットで使おうとすることです。

モデラーが作ったモデルなんだから、これが正解だ。動きをつけるアニメーターは、一切形を変えてはいけない――そういうポリシーを持っているスタジオも多いのですが、僕らは違います。カット単位でモデルをデフォルメするし、どんどん変形させていきます。

形は「正しい」はずなのになぜかキャラがかわいくない時には、アニメーター自身がモデルを直します。そのシーンでどうすれば良くなるのかは、アニメーターの方がモデラーよりもわかっているはずだからです。これをやらないと、形は正しいんだけど、いかにもCGという感じになってしまいます。自分がかわいいと思う表情や動きをアニメーター自身が作ることで、そこにセル画の原画担当のような個性が生まれるのです。

――なるほど。しかしセル画らしくするだけなら、CGを使わずにこれまで通り2Dの作画をすればいいだけですよね。あえてCGを使ってセルルックにしているということは、CGだからこその良さがそこにあるからでしょうか。

松浦:もちろんです。先ほどとは逆に、形が変わらないことがCGの武器になります。

たとえば手描きの作画だと避ける方法の一つにスローモーションがあります。なぜ避けるかというと、1枚1枚手描きすると、どうしてもズレが目立ってしまって動きがビヨンビヨンしてしまうんですね。これは手描きである以上、仕方ないことなんです。しかし、CGなら簡単です。僕らは『009 RE:CYBORG』の加速装置でこの演出を使いました。

それから『新劇場版 頭文字D』では、漫画の演出を再現するために大量の細かい縦線を加えて動かし続けました。これも手描きでは難しく、CGで計算してやっています。漫画家さんには独自のタッチがあって、それをアニメで再現するためにはCGが不可欠なことがあるのです。

――たしかに、今までだと「漫画のあの効果をアニメ向けにどう演出するんだろう」と考えていたと思います。つまり漫画そのままの演出は無理だから、アニメ向けに「変換」しないといけなかったわけですよね。

松浦:ええ。だから演出さんは喜んでいますね。今まで手描きアニメではできなかった演出をあきらめなくていいわけですから。不可能ではないけど大変だった演出も、CGのおかげでグッと手間を減らすことができるようになりました。

たとえばCGならではの演出の一つにカメラワークがあります。CGなら簡単に回りこむカメラワークが使えるんですね。これは作画でも不可能ではありませんが、ものすごい手間がかかります。手描きだと僕たちにはできない演出です。でもCGならできるのです。

後編では、松浦代表から見た日本のアニメ業界の現状、そして「これから」について語られる。乞うご期待。

○ブブキ・ブランキ

意思を持つ武器「ブブキ」と心を通わせる少年少女が、それぞれの願いを叶えるため、悪逆で老練な大人たちに立ち向かう、異能力戦隊バトルロマン。 2016年1月9日より毎週土曜日夜10:00からTOKYO MX / AT-Xほかにて放送中。

(c)Quadrangle / BBKBRNK Partners

(山田井ユウキ)