時に老親が服用している薬の多さに驚く──「逆に身体に悪くないの?」と。

 実際、高齢者の緊急入院の3〜6%は薬剤が原因といわれ、75歳以上の後期高齢者では15%を超える。背景には、加齢に伴う代謝能力の低下や多剤併用による「思わぬ副作用」の発症がある。つまり、高齢者は薬の代謝(解毒)、排せつ機能が衰えるため、薬の効果が予想外に強くでてしまうのだ。また、複数の薬剤を飲むことで互いの効果を増強したり、逆に打ち消したりすることもある。

 東京大学医学部附属病院老年病科の研究では、6剤以上を併用すると副作用が生じる頻度が有意に上昇することが示された。

 昨年末、一般社団法人日本老年医学会は「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」を発刊した。ガイドライン自体は医療者向けだが、高齢者に対して「特に慎重な投与を要する薬」のリストが掲載されており、高齢者を抱える家族も一読に値する。

 リストには依存性や副作用が強い睡眠薬のほか、口が渇く、便秘、目のかすみや認知機能低下といった症状がでる「抗コリン作用」を持つ抗精神病薬などが並んだ。

 このほか、高齢者によく処方される降圧剤や抗不整脈薬、経口糖尿病治療薬などもリストアップされた点は注目される。より副作用の少ない薬への切り替えや飲む量を減らすことで、対応できることも明記された。

 実はこのリストの当初の名称は「中止を考慮すべき薬」だったのだが、医師や患者家族から「使用が禁じられていると誤解を招く」との意見が多く「慎重な投与」という穏当な表現にとどまった。

「慎重な投与」とされた睡眠薬や抗精神病薬は認知症に伴う徘徊、妄想・攻撃性などを鎮めるために使われることが多い。本人の苦痛を緩和するより、家族や介護者の負担を減らす側面が強い点は否定できない。しかし、そこには副作用を解っていても「薬を使わざるを得ない」悲痛な現状がある。

 高齢社会の日本には単純な減薬ではなく、本人と家族双方にとって「適正な高齢者医療とは何か」という議論が必要だ。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)