初心者が読んでも「こじれない」恋愛マニュアルの選び方

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恋愛で1冊本が書ける人というのは、だいたい生まれもっての恋愛上手ではない。どこかしら恋愛にコンプレックスや歪みがあり、それを技術で乗り越えたり恋愛について延々と悩んだりしたからこそ、1冊分の分量が生まれる。
元恋愛下手が書く、恋愛下手に向けた、誰も答えがわからない自己啓発書──それが恋愛本の普遍的な正体だ。
悪いフォームが身に着くとスポーツの成績が伸び悩むように、変な恋愛論がしみつくとズレた行動を繰り返し、まっとうな恋愛がしにくくなる。

私の黒歴史を開陳すると、中学生の時にネット上の「No.1ホストが教える恋愛術」みたいなサイトを見て、「男性とデートするときは冬は絶対ブーツ! ミュールなんて色気がない! 待ち合わせの時に脚をクロスして立っているとグッと来る」というのを真に受け、実行に移していた。
今思うと「お前がブーツ好きなだけじゃん……」。
その他にもメールの「あいうえお」を「ぁぃぅぇぉ」にしてみたりね、しましたね。古傷がどんどん痛んできたのでこの話はこれで終わりです。


そんなトラップだらけの恋愛マニュアルの中で、恋愛初心者の女性が買って読んでも「変にこじれない」本の条件は以下の3つだ。

1.筆者が既婚者である(もしくは長く安定したパートナーがいる)


多くの女性は「不特定多数とやりまくりたい」ではなく、「彼氏を作りたい」「付き合った人とうまくやっていきたい」と考えている。
その場合、たとえば一時期大流行した「小悪魔」系──銀座のホステスが教える男心の掴み方というのは一部しか参考にならない。不特定多数の(ほぼ初対面の)相手の心を瞬間に掴むことはできても、そこからいかにパートナーとして成長していくかは書いていない(書けない)からだ。
その点、既婚者や長く安定したパートナーがいる筆者だと、「付き合い始めたあと」のことも教えてくれる。
また、いわゆる恋愛の「アガリ」に達した人だと、周囲の恋愛談の聞き役になっていることが多い。リアルタイムの「実践者」よりも「俯瞰者」のほうが冷静な立場で話をしてくれる。

2.かつて恋愛に関する様々な失敗をしたり、失敗談を聞いているが、それらを「今思うといい経験だった」とまとめていない


失敗を認めるのは難しいし、正当化したくなってしまうのは世の常。でも「失恋があなたをキレイにする」や「不倫や浮気は女を上げる」などのワードを見たら要注意。特に、過去に浮気や不倫をしていたうえでそういったキラキラな表現をしていたらレッドカードだ。
恋愛でやらかしてしまったときに、「死ぬほど反省した」という箱に入れる人と、「いい思い出だった」という箱に入れる人……後者は同じことを繰り返しがちだ。
自分を正当化したいがためのキラキラワードに惑わされてはいけない。「複雑な関係だった人と紆余曲折あってエモーショナルに別れ今もよい関係です」なんかも同じだ。

3.対象者を限定している


恋愛本そのものには普遍性があるが、恋愛の形は十人十色。「ずっと共学で趣味はスポーツ」の人間と「ずっと女子校で趣味は同人誌制作」という人間では好きになるタイプもぴったりくるタイプもまったく違う。
もちろん、読者層を広くとった方が商売的にはいい。でも内容は「これは当てはまらないな……」「これは誰にでも当てはまるじゃん……」というパターンを増やしてしまう。
読者の幅を狭めるリスクを冒しても、より対象者に的確に届くような内容になっている。そんな本を見つけられるといい。
また、読者の悩み相談に直接答えているタイプのものもいい。究極的には相手だけにしか役に立たないアドバイスだが、とにかく濃いため、読者はその中から自分と共通するメッセージを読み取ることができる。
とにかく、専門性と濃度が重要だ。

さて、実はここまでが前置き。最近出た恋愛本で、この条件をすべて満たしている本がある。それは『オクテ女子のための恋愛基礎講座』だ。筆者のアルテイシアはオタク格闘家と結婚しており(このエピソードは『59番目のプロポーズ』に詳しい)、恋愛に悩めるオタクの男女に向けて檄を飛ばし続けている。
この本は、

・オタク気質
・恋愛経験が少ない
・これまでの人生の中で(女子校出身など)男性と接する機会が少ない
・女友達といる時には最高に愉快な女

に向けて書かれている。この条件に当てはまらない人にとってはほぼ全く役に立たないが、当てはまってなおかつ恋愛に悩んでいる人には「あるあ……死にたい……」となる。
たとえば、「ブストーク」。
「綺麗ですね」と言われて、「はっ? ちょ、何言ってるんですか! 目悪いんじゃないですか? そんなお世辞言われても何も出ませんよ〜!」と返してしまう人のブスさ(顔ではなくて、トークのブスさ)が綴られている。
それからこんな文章も。
〈自分に自信がないと、好きになってくれる男が現れても「こんな私を好きになるなんてレベルが低いんじゃないの?」と相手を見下してしまいます。また「この人、私のこと勘違いしてんじゃないの?」と好意を素直に受け取れなかったりとか〉
ウウッ……(古傷が軋む音)。

この本で目指せと言われているのは、「他人に自慢できるハイスぺ彼氏を作ること」ではなく、「自分にぴったり合う男性と付き合うこと」と「自分に自信をもつこと」。
「王道じゃない自分はマニアックな男を探すべき」
「世の中にはキラキラ女子やゆるふわ女子が苦手な男も存在する、自分にも票田がある」
このメッセージにハッとした人は読んでみて損がない。
自信がない、出会いがない、付き合えない、好きにならない、もう若くない、幸せな恋ができない、男性と関係を持ったことがない、女らしくできない、結婚できない……そんな悩みが解決に近づくかもしれない。

アルテイシア『オクテ女子のための恋愛基礎講座』 Kindle版

(青柳美帆子)