米類やめん類は一切ダメ、というのは極端すぎるかも

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食事の際に炭水化物や砂糖を極力控える「糖質制限ダイエット」の伝道師として知られていた作家が、2016年2月に急死した。死因との因果関係は否定されたが、改めて糖質制限ダイエットの「安全性」に人々の関心が集まっている。

短期間で大幅な減量をしたという成功談がある半面、ダイエット後に体に大きなダメージが残ったという失敗談も聞こえてくる。極端で誤った方法を続けると、深刻な事態を招きかねない。

1か月で10キロ減、食事を戻したら1か月で10キロ増

糖質をコントロールする「糖質制限食」は、糖尿病治療が専門の高雄病院(京都市)の江部康二医師が提唱する。糖尿病やメタボリックシンドローム改善が目的だ。高雄病院のウェブサイトによると、できるだけ糖質の摂取を抑えて食後高血糖を防ぐもので、米類やめん類、パンといった主食を抜いておかずばかりを食べるようにする。

同病院で「糖尿病患者に推奨」の「スーパー糖質制限食」では、1日3食すべて主食抜きにすると紹介されている。ほかにも、朝と夜に主食抜きや、またダイエット目的の人向けに夜だけ主食なし、といった実践パターンを挙げている。

江部医師は、作家の急死を受けて糖質制限ダイエット問題を取り上げた2016年2月16日放送の「とくダネ!」(フジテレビ系)の取材に対して、2013年10月に米糖尿病学会の栄養療法に関する声明が5年ぶりに改定され、糖質制限食が正式に糖尿病の治療法として認められたと説明した。

一方で番組では、日本糖尿病学会が2013年、「カロリーを制限せずに炭水化物のみを極端に制限することは、安全性を担保する科学的根拠が不足している」と指摘したことも合わせて紹介した。

J-CASTヘルスケア編集部は、5年前に糖質制限ダイエットを体験した40代男性を取材した。当時、禁煙のストレスから食事量が増え、「人生初めてダイエットの必要性を感じた」ほど太ってしまったのがきっかけだったという。インターネットで効果が出そうな減量法を調べると、「ローカーボンダイエット」が目に留まった。周囲の人の評判も上々だったので、「炭水化物を多く含む食品は、とにかく制限しよう」と「自己ルール」を決めて実践を始めた。米飯やパンなどの主食や揚げ物の衣は徹底的に避ける、根菜類も極力食べない、代わりに肉や魚、野菜は腹いっぱい食べて良いという内容だ。

すると1か月で体重は10キロ減った。「もういいかな」と、ダイエット前と比べて8割程度の量にしつつ食事内容を戻した。ところが1か月後、体重が10キロ増えてしまった。もう一度炭水化物を抜くと、1か月で10キロ減、戻したらまた1か月で10キロ増とリバウンドを繰り返した。これが、体に大きな負担としてのしかかってきたという。

肝臓の病気を悪化させた男性、脳梗塞一歩手前だった女医

ダイエット開始当時、男性は肝臓を患って通院していた。短期間に10キロの体重増減を2度繰り返したことで肝臓にさらに負荷がかかり、病気を悪化させた。以後、2年間は完全に禁酒せざるを得なくなった。現在はある程度「解禁」しているが、酒量は以前の3分の1程度で、それを超えると「翌々日まで全身がだるい」そうだ。

男性は、本来「ローカーボン」、つまり最低限は炭水化物を摂取すべきだったのだが、炭水化物を一切やめてしまった。このため、ダイエット自体がうまくいかなかったうえ体にも悪影響をもたらしてしまった。

「とくダネ!」でも、10年前に糖質ダイエットにより、3か月で15キロ減量したという「Rサイエンスクリニック広尾」の日比野佐和子医師が経験を語った。3年ほどダイエットを続けていたある朝、目覚めると右腕と右足が全然動かなくなっていたという。

MRI(磁気共鳴画像)検査の結果、「一過性の脳虚血発作」と診断された。脳の細い血管が詰まり、脳梗塞の一歩手前だったのだ。日比野医師は「野菜をいっぱい食べていなかった」と当時を振り返る。バランスの悪い食事が、こうした事態を招いた点は否定できない。そのうえで、糖質を「一切とらない」という過度なダイエットはリスクが高いのではないかと疑問を呈した。

半面、インターネット上には糖質制限ダイエットの効果を称賛する書き込みが少なくない。「2か月で7キロやせた」と成果を喜ぶだけでなく、「糖質抜きなら好きなものが罪悪感抜きに食べられることはうれしい」という声もある。主食は我慢するが唐揚げをはじめ肉料理をたっぷり食べ、晩酌もほぼ毎日との投稿もあった。「とくダネ!」では、極端な低炭水化物食のために高脂肪食になり、その結果、動脈硬化を招きかねないと医師が警鐘を鳴らしていた。

野菜をはじめ食事のバランスを取りながらダイエットに励む人は少なくない。一方で糖質制限に気を取られるあまり、本来必要な栄養を十分とらないで体調を崩しては、元も子もない。