「『やったぜ!』というより、『ありがとう』という感じです」

 第33回全農 日本カーリング選手権(2月6日〜13日/青森・みちぎんドリームスタジアム)は、ロコ・ソラーレ北見(LS北見)が悲願の初優勝。大会MVPを獲得したLS北見のスキップ・藤澤五月は、女王の座に就いた実感をそう表現した。

 富士急と対戦した決勝では、リードの吉田夕梨花、セカンドの鈴木夕湖、サードの吉田知那美の3人がそれぞれの"仕事"をきっちりと遂行し、LS北見が常にゲームの主導権を握っていた。今季は出産もあってリザーブとしてチームを支えた本橋麻里が、「安心して見られた」と語るほど、磐石のゲーム運びだった。

 その結果、スキップの藤澤が狙うショットは、「シンプルショット」と呼ばれる、さほどリスクを必要とせず、プレッシャーの小さいショットで済むことが多かった。キーショットとなった第3エンドのヒットステイ(※1)も、2点をスチール(※2)した第4エンドのドロー(※3)も、藤澤の技術であれば、決して難易度の高いものではなかった。
※1=相手のストーンに自分のストーンを当てて、相手のストーンを動かす、あるいは弾き出して、自分のストーンをその場に残すショット。※2=不利な先攻で得点を奪うこと。※3=狙った場所に自分の石を止めるショット。

 ゆえに藤澤は、冒頭のコメントも含め、「私は(ショットを)決めるだけでよかった。チームに勝たせてもらいました」と、チームメイトに感謝しきりだった。

 また、藤澤は「大会を通して、みんなのスイープ(アイスを掃くこと)にかなり助けられました」と、チームのスイーピングの質の高さについて言及した。

 LS北見に限らず、今季から多くのチームが新たなスイーピングを導入している。昨季までは、ふたりのスイーパーが同時にアイスを履いてストーンを運んでいたが、今季からは世界でも主流になりつつある、ひとりがメインでブラシで履いて、もうひとりがサポートするスタイルが、日本でも採用され始めた。

 LS北見は、11月にカザフスタンで行なわれたパシフィックアジアカーリング選手権(PACC)のあとから、そのスタイルを試し始めた。12月のアメリカ遠征や軽井沢国際、年明けのスイス、スコットランドなどの欧州遠征で、試行錯誤を繰り返しながら実践し続けていった。

「最初は迷いながらスイーピングしていましたが、1月の欧州遠征でやっとまとまりました。それぞれの役割もクリアになって、今大会ではこのやり方の効果や、(スイーピングで)うまく石を運ぶ感覚が改めて実感できました」

 吉田知がそう言って胸を張ったように、この日本選手権では7日間で10試合というハードスケジュールにもかかわらず、吉田知、吉田夕、鈴木らのパフォーマンスは最後まで落ちることなく、力強いスイープを維持し続けた。ややショート気味なショットでも、パワフルなスイープでストーンを狙いどおりのポイントに運ぶ、スイーパーの隠れたファインプレーが何度も見られた。

 そんな力強いスイーピングを可能にしたのは、オフアイスでのハードなトレーニングの賜物でもあった。そのトレーニング量は、今春中部電力から移籍してきた藤澤が、LS北見に合流して「本当にこんなに練習するの?」と驚愕したほどだ。さらにそのメニューを毎日、集中して消化していくメンバーの姿にも、藤澤はかつてない衝撃を受けたという。

「体幹からアウター(マッスル)、ランニングまで、淡々とこなしていくチームメイトに刺激を受けて、私もがんばりました」(藤澤)

 過去に日本選手権4連覇を果たした中部電力の主戦であった藤澤が悲鳴を上げるほどのトレーニングをLS北見はこなしてきた。日本一に上り詰めた大きな理由が、そこにあることは明らかだ。

 今回の優勝でLS北見は、3月の世界選手権(カナダ・スウィフトカレント)、11月のPACC(中国・北京)、来年2月に開催されるアジア冬季競技大会(札幌)の出場権を獲得した。そして、来年の日本選手権で連覇を果たすと、日本が五輪出場権を獲得した場合、2018年平昌五輪(韓国)の日本代表チームとして内定される。

 しかし、LS北見に慢心はない。鈴木が語る。

「今大会で、また新しい課題も見えた。今後に向けて、しっかりと練習して(各大会で結果を出す)準備を重ねていきたい」

 夢の舞台へ――。再びハードなトレーニングを重ねていくLS北見の、新たな挑戦が始まる。

竹田聡一郎●文 text by Takeda Soichiro