IDEOは、デザイン企業は、どこへ行く?

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世界最高のデザインファーム「IDEO」が、博報堂DYホールディングスに事業の一部を売却した。それは、より大きく、複雑な世界の問題を解決するために、彼らが踏み出した一歩だった。

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世界最大級、かつ最も高名なデザイン会社のひとつである「IDEO」が事業を売却し、クリエイティヴコレクティヴに参加したというニュースは、デザイン界の多くの者に驚きを与えた。

「ワー、というのが最初に思ったことです」。アルゴデザインの創設者で、フロッグデザインの前最高開発責任者であるマーク・ゲイジャーは語る。「大きなデザイン会社が消え、こうした動きを見せるのはニュース、です」

こうした発表は通常、会社の運営状態に疑問を生じさせる。他企業との協業や自社事業の売却は多くの場合、トラブルの証と見られるのだ。ならば心配の種があるのかとIDEOのCEO、ティム・ブラウンに尋ねてみるといい。彼は笑うだけだろう。

ブラウン氏は、同社はこれまでの自社の歴史で最高かつ最重要の仕事を行っていると言う。何年にもわたり彼らは戦略的に拡大してきた。いまでは、ヴェンチャー投資部門、非営利部門を有し、「IDEO U」のプラットフォームを使って「デザイン思考」をオンラインで教えている。

今回の動きは財政面での「救命ボート」ではない、とブラウンは語る。IDEOは過度な成長には興味がない。そのインパクトにこそ関心をもっている。それこそが、IDEOが日本のクリエイティヴ共同体「kyu」に合流した理由だと説明する。

kyuは、日本最大級の広告代理店である博報堂DYホールディングスの1部門だ。kyuがIDEOに投資した額は公表されていないが、投資そのものが衝撃なのではない。またそうした前例がないわけでもない。多くのデザイン会社が過去に行ってきたことを、IDEOは多様なやり方で行っているだけなのだ。彼らは規模よりも重要な「野心」において、会社を拡張させるために株式を提供することにしたということだ。

IDEOはkyuという名の共同体に参加することで、Red Peak、SYPartners、シドリー、デジタルキッチン、C2 Internationalに合流することになる。これらのデザインエージェンシー/クリエイティヴエージェンシーは、ブランディングやマーケティングに特化した存在だ。そこにはさまざまな利害関係があるが、IDEOはその創設者によって経営される独立した法人としての地位を保ち、自らの顧客を獲得し続けるだろう。

また必要なときは、新たな専門知識を求めて共同体内の他社を指名することになる(逆も同様)。IDEOが向かう先は明らかで、その場所のヒントとしてブラウン氏は人工知能やゲノミクス、ロボティクス、データサイエンスといったバズワードを挙げるが、これらの領域に進むにあたってkyuが助けとなるのだ。

【下記は、IDEOがこれまで手がけたプロジェクトのフォトギャラリー】
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1/24高齢化する世界をデザインで考え直す:IDEO6つのコンセプトより。何年間にもわたって考えや知識の断片を留めることができるキット、オウル(Owl)。オウルは80本のガラス製の筒を備えており、それぞれが人生における1年を表している。PHOTOGRAPH COURTESY OF IDEO

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2/24自分の考えや記憶を紙に書き、丸めて筒の中に入れる。デザインに凝ったタイムカプセルだと考えてほしい。記憶のほとんどがデジタル化された時代におけるオウルの目的は、時の流れをゆるめ、手に触れられる形でエイジングのプロセスを表現することだ。PHOTOGRAPH COURTESY OF IDEO

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3/24ピルネックレス (Pill Necklace):IDEOロンドンにより考案されたこのネックレスは、薬に関する会話を促すことを目的としている。キャンディーネックレスに似たこのアクセサリーにより、身につけた人の周りにいる人々は、これまでどれほど多くの錠剤を飲んできたかを思い出すことになる。錠剤はディバイダーにより1日単位に分けることができる。利便性の点でいうと、このネックレスは多少手間がかかるものではあるが、この問題に関する会話を誘発するにはうってつけのアイテムだ。アッディは「少し挑発的な作品です」と語る。PHOTOGRAPH COURTESY OF IDEO

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4/24グーフィーフットウォーカー (Goofy Foot Walker ):歩行器を使うと老けこんでしまったように感じられる。「誰もそれを使っているところを見られたくないのです」とアッディは語る。しかし持ち物に手を加えることができれば──それが歩行器であっても──面白みがない状況にちょっとしたユーモアをもちこむことができる。アッディが話すように「このライフステージに至ると、自分を存在否定したり、自己卑下することがある」のだ。PHOTOGRAPH COURTESY OF IDEO

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5/24グレーミラー (Grey Mirror):IDEOボストンによって考案されたグレーミラーは、私たちがいま行う選択が、実際にその後の生活に影響を与えるということを思い起こさせてくれる。この鏡は、人工的に加齢させた写真を映すことで、数十年後に自分がどのように見えるかを示す。IDEOの願いは、現在におけるより良い選択を促すことだった。しかし、驚くまでもないことだが、複数の美容関係の企業がこのアイデアに強く興味を示した。「これはどの程度コンセプチュアルなものなのですか、とよく聞かれました」とアッディは話す。PHOTOGRAPH COURTESY OF IDEO

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6/24オーヴァーデリヴァリー (Overdelivery):コンセプトの中には物質的な形をとっていないものもある。オーバーデリヴァリーは、物を届ける際にちょっとした配慮を加えるサービスだ。経歴に問題なしと認証されたスタッフが、重い箱を運んだり機器をセットアップしたりといった簡単な作業を行うことで高齢者を助ける。そのうちスタッフは利用者の健康に気を配るようになる──運送会社のユニフォームを着た孫であるかのように。PHOTOGRAPH COURTESY OF IDEO

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7/24アップインイヤーズ (Up In Years):IDEOボストンにより考案されたキャンペーンは、ある隠された真実に目を向けさせる――あなたのおばあさんは、いまも色事が好きなのだ。IDEOは、高齢者の間で性病が深刻な問題になっているという事実を (多少の気まずさはあるかもしれないが) 率直に喚起する。「私たちはこのような事実があることを認識していて、解決策を探っているところです」とアッディは話す。PHOTOGRAPH COURTESY OF IDEO

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8/24グローバル・デザインファーム、IDEOの日本オフィス、IDEO Tokyo。コーヒーが「働く」を変える、IDEO Tokyoのワークデザインより。PHOTOGRAPH BY HIROTAKA HASHIMOTO

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9/24発想を止めないチームづくりのために「コーヒー」はいかに作用するのか。ワークスペースにおけるコミュニケーションの理想のかたちを探った。PHOTOGRAPH BY HIROTAKA HASHIMOTO

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10/24コーヒー片手にディスカッションも進行する。PHOTOGRAPH BY HIROTAKA HASHIMOTO

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11/24PHOTOGRAPH BY HIROTAKA HASHIMOTO

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12/24PHOTOGRAPH BY HIROTAKA HASHIMOTO

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13/24IDEOがデザインした「憂鬱な月曜日を少し楽しくする」3つのアイテムより。ひとつめは、丸みを帯びた形の目覚まし時計で、前後に揺れ動いて起こしてくれる。PHOTOGRAPH COURTESY OF IDEO

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14/24会議の時間を教えてくれる、本物のシャボン玉を吹き出すオブジェ。PHOTOGRAPH COURTESY OF IDEO

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15/24ツライ月曜日のことを考える代わりに、IDEOがつくったアプリは、あなたが感謝するべきものを知らせてくれる。アプリ「Sincerely」が作られた。このアプリは、日曜日の夜になると、あなたが大切に思う誰かに送る感謝のメッセージを書くように促すのだ。PHOTOGRAPH COURTESY OF IDEO

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16/24空き缶型の電話。PHOTOGRAPH COURTESY OF IDEO

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17/24携帯ケースメーカーのポング社とデザインファームのIDEOが共同開発した新たなiPhoneケース「Gold Reveal」。電磁波を低減する、IDEOデザインのiPhoneケースより。PHOTOGRAPH BY PONG RESEARCH CORPORATION

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テーブルに席をもつために

いま一度、「デザイナーたちによる会社」というものについて論じよう。アルゴのゲイジャー氏はブラウン氏を擁護する。

「ビジネスがうまくいっていないからだと見なされるこうした動きの多くは、実際にはその反対のものです。彼らが見ているのは機会だと思います。そして、その機会を手に入れる方法を理解しているのです」

ブラウンが描くビッグアイデアを生み出すために、共同体の才能たちがどのように一体化できるのかはわからない。IDEOを含む全企業は、それぞれが少しばかり異なるアプローチで異なる顧客基盤を有してはいるものの、クリエイティヴコンサルティングという同じスキルセットをもっているからだ。

コンサルティングの巨人、マッキンゼーが昨年買収したLUNARのデザイン担当副社長ジェフ・サラザールによると、長い間デザイナーは業界で脇役を演じてきた。企業はLUNARにやってきて提案を求め、LUNARのデザイナーはそれに従って行動していた。だが今日では、デザイナーはその求めに応答することは望まない。自ら創造することを望むのだ。

「マッキンゼーのような潜在的なパートナーと会話をしているとき、自分の“絞り”がとても大きく開くことは明らかです」。サラザール氏は語る。彼は「テーブルに席をもつ」と表現したが、デザイナーが企業と協力することで、事業と影響の両方が拡張するのである。

デザイナーに求められる「3ポイント・シュート」

デザイン会社の役割は実際に進化しており、従来の範囲を超えてしまっている。成功のためには、デザインスタジオは輝かしいプレゼンテーションでアイデアを提供するだけではもはや通用しない。大手コンサルティング会社のデジタル部門の責任者に聞いたところによれば、「わたしたちのクライアントは、3ポイント・シュートを求めている」という。3ポイント・シュートとは、アイデア、クリエイティヴにおけるノウハウ、それを実行するためのビジネス戦略の3つのことだ。デザイン会社はプロジェクトの開始時から関与し、市場に至るまでの全過程にわたって従事することが求められている。これにはまったく新しいスキルセットが必要とされる。

IDEOの状況は、記憶する限りはほかのどんなパートナーシップとも少しばかり異なっているように見える。彼らは名声の高いコンサルティング会社に入ったわけではない。ビジネスを積み重ねてきたIDEOの山の頂上にかける「デザイン思考のソース」があるわけでもない。

多くの場合、パートナーシップとは既存の能力を拡張しようとする試みであるとブラウン氏は語る。しかし、「今回の強力は、これまでの能力の拡張を求めてのものではありません」と彼は言う。

「kyuは世界で最もクリエイティヴな企業が集まり、最先端で複雑な問題に取り組む場なのです」。IDEOは伝統的なビジネスの考え方ではなく、「創造性こそが社会の変化をもたらす」という信念に従って今回の参加を決めたように思える。

ブラウンはMediumへの投稿で、「デザインはもはや製品の革新や小さな問題の解決についてのものではない」と述べている。それらはすでになされてしまった。IBMやゼネラル・エレクトリック(GE)が、その企業構造にどのようにデザイン思考を適用しているかを考えてみるといい。その段階を超えたIDEOはいま、より大きな問題に取り組んでいる。まず手始めに、IDEOはSyPartnersと協働して老化プロセスをリデザインしている。しかし彼らは、手がける範囲を都市や政府にまで拡張するという、ずっと大きな目標を抱いているようだ。

「これは大変複雑な問題です」とブラウンは語る。IDEO自体が認めるこの複雑な問題を解決するためには、支援が必要だ。そう、デザイン会社は自社のみですべてを行うことは、おそらくできないだろう。しかし、適切なパートナーシップの下であれば、きっと大丈夫だ。

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