「正論」(産経新聞社)16年3月号

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 先日、安倍首相お抱えの文芸評論家で、メディアへ報道圧力をかけている「放送法遵守を求める視聴者の会」事務局長・小川榮太郎氏が、現在発売中の「正論」(産経新聞社)3月号に寄稿、吉永小百合氏をターゲットにし「共産党の広告塔」と陰謀論丸出しの論考を発表したことを本サイトで紹介したところ、大きな反響が寄せられた。多くの意見は「小川氏のトチ狂いっぷりが見苦しい」というものだったが、なかには「「正論」の記事のクオリティが泣ける」という意見も散見された。

 が、しかし。じつはこの小川氏の論考の次のページにも、かなり衝撃的な記事が掲載されているのだ。タイトルは、『第1回せいろん女子会 気づいていますか? あなたが「保守オヤジ」です』。

 これは女子会と称して、外資系勤務の佐々木さん、アパレル勤務の米田さん、金融機関勤務の石野さん、フリーターの北川さんという女性4人が座談会を開催(といっても顔出しはなく萌絵っぽいイラストでごまかされているが)。この4人は「ある保守系の講演会で知り合」い、「保守の主張に共感し、左の言うことは嫌い!(笑)という集まり」なる設定らしい。

 で、何が衝撃的かというと、この保守女子たちがやり玉にあげているのが、タイトル通り保守オヤジたち。「正論」読者のオジサンたちを、ことごとく血祭りにあげているのである。たとえば、こんな具合だ。

「保守のおじさんたちが聞き上手じゃない、聞き上手になってくれたら、ってことです。会場に入った途端、聞いてもいないのに話し始かけてくる人がいるんですよね。しかも上から目線で、知識を押し付けてくる」(原文ママ)
「ユーモアがないのもそんなオヤジの特徴ですよね。ユーモアがない話を延々とされると、「この人、何言ってるんだろう」「この話はいつ終わるの?」って思っちゃう」
「話が長い人も多くないですか? 要点がはっきりしない。講演後の質疑応答タイムに、頓珍漢な話をしたり、自分の知識や意見をひけらかしたりするオヤジもいて、司会者が困った顔をしている事がよくありますよね」

 上から目線、ユーモアがない、話が長い、知識を押し付ける......。かなり言いたい放題だが、たしかに頷ける部分も。だが、これはまだ序の口。彼女たちがヒートアップするのは、ズバリ、保守オヤジは「正直言ってダサい」という話題だ。

「私は女子大出身で、周りもきらびやかな格好の女の子ばかりでしたから、集会に参加して保守オヤジの格好を見たときに、「あれ? パジャマ着てきちゃったの?」「ズボン、ずり落ちてますけど」みたいな人が多くて...。申し訳ないですけど引いちゃいました」
「自分は国の事を思って活動しているんだから、見た目は関係ない、というふうな人もいるよね」
「そういう保守オヤジが一般女性からどう見られているのかっていうと、「仕事ができない」「家庭でも相手にされていないだろう」ですね。そんな保守オヤジが集まっているところに、若い人や女性が来ると思う?」

 念のため言っておくが、これは左翼雑誌が保守を印象論で攻撃しているのではない。ネトウヨ愛読誌の「正論」が、読者の保守オヤジたちに提供している記事である。しかも、同グループの産経新聞が目の敵にしてきたSEALDsの活躍にも彼女たちはふれ、「保守オヤジたちは、「あんなやつらは偏差値が低い」と批判するだけ。そうした態度が「保守は、若者に冷たい」というメッセージを周りに送っているということに気付いていない」と批判するのだ。

 その上、保守オヤジの最低さが如実に表れた、こんなえげつないエピソードまで彼女たちは紹介する。

「保守系の会合のあと懇親会に行ったら、横に座ったオヤジがいきなり、「在日の芸能人リスト」を見せて、在日批判を始めたんだって。初対面の女性に対してですよ。ドン引きするよね」

「保守オヤジ」などと多少かわいげがあるように言い換えているものの、保守オヤジたちの本質はネトウヨそのものだ、というわけである。そして彼女たちは、SMAPの解散騒動でもネット上で「「(メンバーは)在日だ」と根も葉もない情報で騒いでいた人たちがいた」ことを挙げ、「「保守は気に入らない人たちに《在日》というレッテルを貼って喜んでる」というイメージを持たれているのは事実」と嘆くのだ。

「思想の右左の前に、社会性、一般常識があってしかるべきでしょ。非常識な態度をとるから、「政治にかかわる人」イコール「変な人」と見られてしまう」

 だったら、そのネトウヨおじさんとつるまざるを得ない、思想をともにしていることに疑問を抱くべきでは?と思うのだが、彼女たちの苦言は「主催や運営をされている方々の中にも、問題がある人が多いでしょ」「保守オヤジには、女性に偏見がある人が多いと思わない?」「この私たちのトークにも、保守オヤジたちは「何も知らないのに偉そうに言うな」って批判するんでしょうけど、そんな姿勢が味方を失っているんです」と、果てしなくつづいていくのであった。

 それにしても、この記事を読むほとんどの読者が、彼女たちの言う「保守オヤジ=ネトウヨおじさん」だと思われるが、一体、「正論」はどうしてこんな"自虐"記事を掲載したのか。「やっぱり僕たちってダサくて話が上から目線でヘイト満載らしいですよ!」と猛省しようとでも考えたのだろうか。

 だが、答えはもっと単純である。というのも、現在、保守派の最大のターゲットは、"女子"だからだ。

 実際、日本会議は、日本会議御用達の出版社・明成社が昨年発売した『女子の集まる憲法おしゃべりカフェ』(監修は安倍首相シンパの百地章・日本大学教授)を猛プッシュ。同書をテキストにして、「憲法おしゃべりカフェ」なる女性向けイベントを全国各地で開催している。しかも同書は初っ端から「首都直下地震とか南海トラフ地震とか怖いわよねぇ...」と題し、緊急事態条項の創設を煽るほか、「まさか!? 中国は沖縄まで狙っているの!?」「えっ! 日本国憲法ってアメリカ人が作ったの!?」と、日本会議および右派の主張がてんこ盛り。ついでにいうと、「やった!自衛官との合コン決定♪ 自衛隊ってかっこいいよね!」なんて項目があることからもわかるように、完全に女を小バカにしたつくりだ。

 安保法制の議論では、母親をはじめとする多くの女性たちが危機感をもち、行動に出た。この動きに対して右派側は「それならこちらも女子を取り込まなくては」と躍起なのだ。つまり、今回の「正論」記事の狙いも同じで、「自分たちはダサくて話が上から目線でヘイト満載な部分もあるけど、女子の意見も聞くんですよ!」というポーズをとってみたのだろう。

 でも、まさか一方的に非難されっぱなしのこの記事を読んで「おれも知識を押し付けず、女子の話をきちんと聞こう」と反省する「正論」読者のおじさんは皆無だろうし、肝心の女子側も、「保守女子って楽しそうだな♪」などと思う人はいないはず。結局、「保守女子になればこんな気持ちの悪いおじさんたちに囲まれるのか!」というおぞましさだけが読後に残る「誰トク?」な記事に仕上がってしまった。

 そう考えると、「正論」編集部も本質は保守オヤジと同じ、やっぱりズレてるってことなのだろう。
(大方 草)