日本ラグビーの礎(いしずえ)となるサンウルブズの船出である。その魅力とは?と聞くと、日本代表ウイングの山田章仁はこう言った。

「ほかのスーパーラグビーのチームに比べて、しっかりシェープを作ってやろうとしているし、一人ひとりのリアクションが速いところですかね。そういうところで勝負していけば、結果はついてくると思います」

 日本から今季、サンウルブズが世界最高峰のスーパーラグビーに初参戦する。13日、トップリーグ選抜とのチャリティーマッチが行なわれた。日本代表のごとく、各チームからの寄せ集め、しかも合同練習は実質5日間のチームだった。戦術、戦略の落とし込みや連係プレーはまだ無理だと思っていたが、やろうとするスタイルは少し見えていた。

 基本線はワールドカップ(W杯)で活躍した日本代表の『ジャパン・ウェイ(日本流)』とそう変わらない。山田のいうシェープとは、連動した攻撃で相手守備網を崩すことを意味する。この日はフィジカル勝負となったけれど、要はスピードと体力勝負。シェープを重ねてトライを奪うことであろう。

 冷たい雨が降る豊田スタジアムには、2、3分の入りとはいえ、熱心な約1万人のファンが駆けつけていた。そのスタンドが沸いたのが、後半13分の山田のトライだった。相手にチャージされ、自陣のインゴールにこぼれたボールをバックスが拾って一気に逆襲、フォワード(FW)、バックス一体となって10人余りがつなぎにつなぎ、最後は山田がクルリと体を回してタックラーをはじき、右隅にダイビングトライをした。

「僕は走っただけですよ」と、山田は謙遜してみせた。「相手が(タックルに)きてそうだったので、クルッと回って。ははは。よかったですね」

 このレベルのチームになると、何より実戦が最高のチーム練習となる。収穫はディフェンスラインで、外からしっかりと出られたことと山田は振り返った。

「課題は、まだみんなの特徴を把握しきれていないことですかね。練習とか、試合とかを重ねながら、みんなの特徴を見ていきたい」

 この日は、アタックもディフェンスもやろうとすることはシンプルだった。ボールを持った選手はコンタクトエリアで前に出る。ブレイクダウン(タックル後のボール争奪戦)ではファイトする。ボールを早く動かす。リロード(素早く立ち上がり、次のプレーに移ること)を意識する......。アタックのポイントは相手にターゲットを絞らせないこと。FW、バックス一体となって、複数による波状攻撃を仕掛け、しつこく攻めていくことである。

 前半はチームのタテのライン、すなわち、2番のフッカー堀江翔太、8番のナンバー8、エドワード・カーク、9番のスクラムハーフ、日和佐篤、10番のスタンドオフ、トゥシ・ピシらの動きが効いていた。特にコンディションのいいピシは自在な個人技を再三披露してスタンドを沸かし、MVPを獲得した。

 やはり外国人選手はプロである。こういった試合で自分を懸命にアピールする。むろん、日本人とて、体を張った。37歳、百戦錬磨のロック大野均は珍しく、試合前、ナーバスになったという。

「サンウルブズって新しいチームで、まだ歴史がないじゃないですか。だから、今日の試合って大事だなって。開幕までこの1試合だけ。だから1選手として、(レギュラー)ジャージをつかむため、アピールするしかないと思っていました」

 選手との契約問題などチーム編成に苦労しながらも、ようやくサンウルブズが動き出した。結局、52−24の勝利だった。相手チームの戦力を考えると、スコアにはさほど意味はない。サンウルブズのマーク・ハメットヘッドコーチ(HC)は「何より、やっと開始できたことをうれしく思います」と言いながらも、本音を漏らした。

「できれば、(開幕までの)準備期間としては5、6週間、スーパーラグビーと同じクオリティの実戦が2試合は必要でしょう。これから、フィジカル面をアップするため、コンタクト練習、ライブ形式の練習を多く入れていきたいと思います」

 課題でいえば、連係の薄さはともかく、セットプレーのスクラムが不安定だった。8人で組む練習が少なかったのだろうが、それでもモロ過ぎる。この相手に何度もコラプシング(スクラムを故意に崩す反則)を取られるとは。「スクラムの安定」なくして、日本のリズムは生まれない。

 今季のスーパーラグビーには、南アフリカ、ニュージーランド、豪州などの強豪18チームが参加する。他チームはすべてプロ選手で固める。相手チームはどこも、体が大きく、フィジカル、スピードに長けている。コンタクトエリア、ディフェンスでの圧力もこの日の試合とは段違いとなるだろう。まずはフィジカル面で、ある程度、対抗できないと話にならない。

 サンウルブズとしては、個のフィジカル、スタミナをアップさせ、どうチームとして結束させていくのか。戦術、戦略の徹底、連係アップもマストだろう。

 スポンサー獲得や集客、チームマネジメントなどの運営面の課題もあるが、まずはチームのパフォーマンスを上げ、サンウルブズの価値をどう創造していくのか。やはり勝負事。負けてはならない。

 サンウルブズは沖縄合宿を経て、27日、東京・秩父宮ラグビー場でライオンズ(南アフリカ)とのリーグ開幕戦に挑む。計15試合のタフな試合がつづく。

 サンウルブズの堀江主将は記者会見の最後、こう言い切った。

「最初から白旗を上げるようなことはしない。すべて勝ちにいく気持ちです。メンタル、体、スキルの部分を毎試合、どんどん成長できるようにしてきたい」

 課題は山積ながら、サンウルブズの魅力は「未完の魅力」か。日本ラグビーの壮大なるチャレンジが始まる。

松瀬学●文 text by Matsuse Manabu