福士加代子の無謀な挑戦の裏に何が?(ワコールHPより)

写真拡大

 1月31日に開催された大阪国際女子マラソンで優勝した福士加代子(ワコール)が叩き出したタイムは、2時間22分17秒。リオ五輪派遣設定記録より13秒早い自己ベストだった。福士はお立ち台で「リオ決定だべ〜!」と歓喜の雄叫びを上げ、観客やテレビ中継の視聴者は天真爛漫に喜ぶ彼女を祝福した。

 ところが翌日、ワコールの永山忠幸監督は、選考レースで設定記録をクリアして優勝したにもかかわらず、「日本陸連から『当確』という言葉がない」と不満を表明。わずか42日後に開催される3月13日の名古屋ウィメンズマラソンへの出場を明らかにした。

 2月7日にはスポーツ紙に、「生きるか死ぬかでやっている。我々は攻めるしかない」と語った。その言葉には、何としても福士を念願の五輪ランナーにしたいという思いが溢れている。

 永山監督は本誌の取材に対し、「すでにエントリーも済ませていますし、合宿にも入ります。今、我々はその準備を進めるだけ」とコメントした。

 しかし、記録をクリアして優勝したランナーが再び選考レースを走るのは前代未聞。なぜ福士は名古屋も出場しようとしているのか。スポーツライターの酒井政人氏が解説する。

「リオ五輪の女子マラソン代表は、昨年8月の世界選手権、昨年11月のさいたま国際、1月の大阪国際女子、そして3月の名古屋ウィメンズ、計4つの選考レースを経て、3人を選ぶことになっています」

 陸連が2013年6月に示した選考基準では、どのレースをどのように走ればいいかが明らかになっている。まず、世界選手権で入賞(8位以内)し、日本選手最上位になれば、自動的にリオ五輪の代表に内定する。

 国内開催の3大会は少し基準が違う。この3つのレースそれぞれで3位以内の選手から、【1】日本陸連設定記録(2時間22分30秒)を満たした選手(ただし各レースにつき最大1人)、【2】各レースでの記録、順位、レース展開、タイム差、気象条件等を総合的に勘案し、本大会で活躍が期待されると評価された選手を選ぶ、というものだ。

「世界選手権で7位の伊藤舞がすでに内定しています。さいたまでは設定記録に達した選手がいませんでした。残りは2枠ですが、最後の名古屋で福士の記録を大幅に上回る選手が複数出てくると、福士の五輪出場は危うくなります」(酒井氏)

 いっそのこと、1大会で決着をつけてはどうかと思うが、陸連には選考レースを一本化する考えがない。スポーツ紙記者が明かす。

「各大会の主催者である新聞社やテレビ局から、選手を独占的に取材・放送するための“上納金”が陸連に入る。これが選手の強化費になるため、大会を一つに絞って上納金を減らすわけにはいかないのです」

※週刊ポスト2016年2月26日号