18番でフィルは3Wをチョイス その姿は岩田に攻めることの意味を見つめなおさせた(撮影:岩本芳弘)

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 アメリカの国民的スター、フィル・ミケルソンとともに回る最終日最終組。戦いの舞台は名門ペブルビーチ。その真っ只中でプレーするルーキーの岩田寛。想像しただけでも、しびれるシチュエーションだが、彼はきわめて冷静だった。
フィル・ミケルソンと健闘を称えあう岩田
 前半を1アンダーで回り、迎えた後半。岩田は11番のバーディーで首位に立った。12番と14番は新岡隆三郎キャディが「ほとんどミラクルでした」と振り返った見事なバンカーショットでパーを拾い、13番でも難しいパーパットを沈めると、ミケルソン贔屓のギャラリーから「ウェルダン(よくやった)」の声が飛んだ。
 そのころから風は終始アゲンストになったが、その逆風の中で岩田はしぶとくパーを拾い続けた。風の強さや向きを岩田に目で確認させるため、ほぼ毎回、新岡キャディが岩田の前方に立ち、芝の切れ端を風になびかせた。
 またアゲンスト。かなり強いアゲンスト。今度は嫌なアゲンスト。そんな連続だったが、岩田は執拗にパーセーブ。その様子を何度も眺めていると、新岡キャディがパラパラと風になびかせる芝の切れ端が、パーを拾うための魔法のパウダーにさえ見えてきた。
 だが、肝心の岩田自身は「12番から1回もパーオンしてない」「凌ぐことしかできない」と感じ、だからこそ彼は上がり3ホールで勝負に出ようと意を決した。
 「気持ちを切り替えて16番から攻めようとした。でも、思った通りにショットできなくて……」
 16番はフェアウエイの絶好の位置を捉えた。「ライは良かったんです。でも思ったより飛んで左足下がりで……」。第2打でグリーンを捉えられず、ボールは右手前に止まった。第3打はピンを2メートル半ほどオーバーし、結果はボギー。「悔やまれるのはセカンド?」と尋ねると、岩田は無言で頷いた。
 バンカーにつかまった17番はパー。
 そして最終ホールの18番(パー5)。単独首位でホールアウトしているボーン・テイラーに追い付くためにはイーグル以外に道はない。グリーン左手前からの第3打はピンまで33ヤード。最後の望みをかけた一打は「チップインを狙っていった」(新岡キャディ)。しかし、不可解な飛び出し方と跳ね方でグリーンにすら乗らず、そのとき岩田の万事が休した。
 攻めに出た岩田の上がり3ホールは2つのボギーで萎み、勝利への道は閉ざされた。振り返れば、アゲンストの風の中、「凌ぐことしかできない」と感じていたあのころは、パーを拾い続ける執拗さが光っていたが、攻めに出ようとした途端、彼の光はフェードアウトしていった。
そんな岩田とは正反対に、ミケルソンは16番と17番で2連続バーディーを奪い、勝利への可能性を膨らませていった。
岩田の痛恨は16番の第2打と18番の第3打。だが、その2つのショットの成否を取り沙汰するより、岩田はミケルソンの上がり3ホールに「さすがです」と敬意を表した。岩田の驚きはミケルソンが勝負をかけた最終ホールのティショット。「3Wで打っていた。意外に堅いんだな」。それを見たとき、岩田は攻めることの意味、攻めるための術を驚きながらも見つめ直した。
 ミケルソンも優勝は逃したが、上がり3ホールで勝負したという実感を得ていた彼の表情は明るかった。
「僕は最終日の上がり3ホールのためにツアーで戦っている。上がり3ホールで首位を捉えるチャンスとプレッシャー。最近、僕はそこからちょっと離れていたけど、僕はその感覚を愛している。僕はそのために戦っている」
 ミケルソンは惜敗しても上がり3ホールに「LOVE」を贈った。岩田の上がり3ホールは「情けない」と振り返るビターテイストに終わった。
 しかし、ミケルソンに学んだ岩田が、これからの自身の攻め方を広げ、上がり3ホールに「LOVE」を感じ始めたら、きっと彼は強くなる。今回の4位は、そのためのステップ。
そう思えば、悔しさも糧になる。
文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)
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