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昨今、地方活性化のために「ゲーム」や「アニメ」とコラボする自治体が増えている。中でも存在感をあらわにしているのは、「佐賀県」だ。

率直に言えば地味な印象の県だが、ゲームコンテンツとのコラボレーションは作品ファンから歓迎され、SNSを中心に話題を呼びグッズは即完売するなど、大きな成功を収めている。直近で行われた「Splatoon」とのコラボ「Sagakeen」は、冬の港町・佐賀県の呼子まで1万人を超えるゲームファンを連れてきた。

ストレートなダジャレをタイトルとして一躍話題となった「ロマンシング佐賀(サガ)」。その第二弾の後に、まったく違うゲームメーカーと協業し、またも成功を収めるその裏には、どんな仕掛けがあったのか。エピソードを伺う中で明らかになったのは、「対等」に「本気」でやることの大切さだった。

「ロマンシング佐賀(サガ)」、「Sagakeen」をはじめ、佐賀県の情報発信企画を手がけるプロジェクト「サガプライズ!」より、プロジェクトリーダーの金子氏とプロデューサーの田中氏 に、「Sagakeen」成功の裏話を聞いた。

――佐賀県と人気ゲーム「Splatoon」のコラボ「Sagakeen」、大きな話題になりましたね。

田中:はい、おかげさまで、2カ月で1万3,577人の方にお越しいただけました。特にお正月付近がピークになっておりまして、里帰りや冬休み中の方などに来ていただけました。

最終週は寒波の影響もあったのですが、それでもコンスタントに足を運んでいただけており、改めてSplatoonの人気の凄さを実感しました。

――佐賀県と任天堂のゲーム「Splatoon」、コラボレーションのきっかけは何だったのでしょうか?

田中:毎朝スタッフ同士顔を合わせて、今流行っているモノゴトの情報を共有し、アイデアを出す時間を持っているのですが、企画の発端はここから生まれました。「Splatoon」は発売前からゲームファンの間での盛り上がりがあり、発売直後からSNSなどで多くの投稿を見かけましたし、さらにはゲームメディアだけでなく、経済メディアなどもその状況をレポートしていたので、「これは流行るのでは」と注目していたんです。

そして何より、主人公が「イカ」じゃないですか。イカといえば、佐賀県には”呼子のイカ”という名産品がございますので、これをフックに何か面白い企画ができたらいいよねと話していました。その後、企画のたたき台を作って、ダメ元でも任天堂さんにお話をしてみようと。

――それはいつ頃のお話ですか?

田中:6月にオフィス内でたたき台を作って、7月に任天堂さんまでお伺いして、お話したという流れですね。

――「Sagakeen」の企画立ち上げタイミングは、実施よりかなり前、Splatoonがヒットのきざしを見せていた頃だったのですね。自治体の企画としてはものすごい速さで立ち上げられたのだな、というのが率直な感想です。これだけ早く「動ける」のはなぜなのでしょうか。

金子:コラボレーションというのは、あくまでお互いが対等であることが大切なんです。対等に運営するためには、アプローチするスピードというのはとても重要です。だからこそ、今回も(ゲームソフトが)発売してから間を置かず、任天堂さんに企画を持ち込ませていただいたんです。

すでにパッケージが「できあがった」コンテンツと一緒にやるとなると、自治体がお金を払って、キャラクターを乗せた企画を"やらせてもらう"座組になりかねません。集客は可能だと思いますが、お互いの本気感が見えづらいため、驚きや意外性による話題拡散が小さいかなと。あと、何というか、良い結果にならないように思います。

――具体的には、どういったところで「良い結果」にならないのでしょうか。

金子:パッケージが「できあがった」コンテンツとのコラボでは、どうしてもコンテンツ側の目的が優先されますから、自治体側の表現したいことは制限されやすいです。今回のコラボでは”スプラ丸”というラッピング観光船を走らせていますが、もし出来上がった商品パッケージのような"やらせてもらう"座組で実施していたら、船の運航は難しかったのではないかと思います。

というのも、ヒットコンテンツには、「全国どこでも、同じようにできる」イベントパッケージが完成されていたりします。そのためイレギュラーな要素は入れづらく、「地方の魅力の顕在化・情報発信」というよりは、「ヒットコンテンツのプロモーション」という色が強くなってしまいます。「サガプライズ!」事業が目指すのは「驚き」の情報発信事業ですので、そのような座組はなるべく避けたいと思っています。

――なるほど。確かに、「Sagakeen」にはコントロールされたような形跡をほとんど感じないのはそういった進め方があったからなんですね。フェス用のTシャツもオリジナルの絵柄を用意されているなど、コラボの「本気」度合いが話題にもなっていました。

田中:コラボという座組なので、先ほど金子がお話した"やらせてもらう"座組ではなく、佐賀県と任天堂さん、お互いに出せるものを持ちよって企画を成功させましょうという姿勢で進めさせていただきました。

フェス用のオリジナルイラストも、その象徴的なものかもしれません。具体的な企画のイメージを共有してからすぐに、任天堂さんから、こういったビジュアルではどうですか、とご提案いただいたんです。フェスTのイラストだけでなく、フェスの告知画面のイメージまで見せてくださって、その仕事の速さにとても驚きました。

金子:フェスTのデザインにしても、「Tシャツのソデに佐賀県のシンボルマークが入ってる!」とこちらが驚いたくらいで(笑)、決してこちらの意図を指示して作っていただいた訳ではないです。任天堂さんが尽力してくださったのだと思います。

――ゲーム開発の中心となる方々も、今回のコラボでは動いてたんですね。

金子:こうした取り組み方ができたのは、やはりパッケージとして売られているものとは違うところだと思います。

任天堂さんにもファンの方々に面白い企画をお届けしたいという目的があって、われわれも佐賀県の魅力を多くの方に知っていただきたいという目的がある。それを達成するために人やコンテンツ、場所など、お互いが出しうるものを出し合って、対等にやらないとコラボというのは成功しないんです。

TwitterやFacebookに、「Sagakeen」に対して「本気なんですね」とお褒めいただくつぶやきを拝見したことがあります。これまでの経験から、「対等に」「本気で」進めないかぎり、こうした評価はいただけないのは承知しておりましたので、大変嬉しかったです。

次回は、『Sagakeen』が東京タワーに特設ショップを出店した意図、ひいては都内に多くある「アンテナショップ」を起点としないイベント展開の狙いについて聞いていく。

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(杉浦志保)