俳優としてはハードボイルドなイメージが強いクリント・イーストウッド御大ですが、そんな御大のキャリアの中でも珍しいコメディ寄りの作品が『ダーティファイター』(1978)と続編『ダーティファイター 燃えよ鉄拳』(1980)。

 御大演じる主人公ファイロは、長距離トラック運転手のかたわら、工事現場や工場で非公式に行われる賭けストリートファイトに熱意を燃やす荒くれ者。喧嘩と酒と美女に目がない典型的レッドネック(米南部の肉体労働者層の俗称)というワケです。

 しかも相棒はオランウータンのクライド。自慢の怪力で車の解体をしたり、ファイロの試合を手助けしたりと、コメディリリーフの役回りを担います。ちなみに動物園でメスとアバンチュールしたりと(続編では動物園から拉致して来てモーテルでフィーバーします)、性欲も旺盛です。

 マネージャー代わりの親友オービルも良い味を出しているんですが、1作目では彼女をゲットしたのに、2作目では独り身に......。
 そのオービルのママさんがこれまた強烈で、暴走族相手にショットガンをぶっぱなしたり、続編の方ではモーテルの店主とのロマンスを演じたりと、無駄にトンガッた存在感を放っているのです。

 プロレスでいえば主人公ファイロは、"狂犬"とも呼ばれたディック・マードックでしょうか。無欲故に当時の最高峰王座(NWA世界ヘビー級王座)に縁がなかった辺り、金よりただ闘いたいだけのファイロと同じ感覚を覚えるのです。
 クライドに関しては試合に介入したり、笑いを取る役割からしてWWEのホーンスワグル的ですね。オービルのカーチャンは、WWEで数多の出オチ伝説を残したメイ・ヤングといったところ。

 そして、ファイロにコケにされて以来、復讐心を燃やす暴走族「ブラックウィドウ」がもう徹底してジョバーなのが素晴らしい。
 幾度もファイロに挑んではボコられるだけなんですが、続編でタールまみれになって全身の毛を失い、全員ヅラになったくだりは、丸坊主にされ、ヅラを被って誤魔化そうとしたカート・アングルを思い出します。

 あらすじとしては、1作目ではファイロが恋した歌姫リンに裏切られ、最後の試合で自ら敗北するという結末。
 続編ではその小悪魔リンが「あれは終わったことよ」と復活愛が実現。これで日和ってしまったファイロは、東部から来た強豪ジャックとの試合をドタキャンするも、試合を企画したマフィア幹部にリンが拉致され事態は急転。リンを救出し、ジャックとも友情が芽生えますが、男同士、勝負だけは着けようと結局試合をすることに。

 で、のどかな田舎町を舞台に、あちらこちらの店や軒先を転戦。それに合せて野次馬たちも一緒に移動して行くんですが、それはまさにプロレスでいう、高野拳磁やミスター・ポーゴが生み出した「路上プロレス(マラソンマッチ)」!
 この路上プロレス状態のクライマックスでは、ブラックウィドウがキーマンになったりと、シリーズを通して観るとちょっと感慨深い気持ちになったりしちゃったり。

 コメディとしてはそれほど面白い作品ではありませんが、登場人物たちのキャラ立ち具合は見事で、難しいことを考えずに観られる作品としてオススメ出来るシリーズです。

(文/シングウヤスアキ)