「Gizmag」より。

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 昨今の人工知能の進化にはめざましいものがあるが、ゲーム好きな人工知能もどんどんその腕を上げているようだ。今ではマリオのキャラクターたちが、みずから学び他のキャラと協力しながら大活躍しているというから驚きだ。


■観察、コミュニケーション、模倣、協力を通じて自ら学ぶAI

 ドイツ・テュービンゲン大学の認知モデル研究チームの人工知能は現在『スーパーマリオブラザース』に夢中だ。それというのも、研究チームが開発したアルゴリズムがゲームのキャラクターたちに自ら学ぶことを教え、その結果ゲームの腕前がめきめきと向上しているからだ。

 研究チームが開発しているのは知的ソーシャルサポートシステム(intelligent social support systems)と呼ぶアルゴリズムで、人間の学びの行為である観察、コミュニケーション、模倣、協力といった能力を人工知能に与えて自習を促すいわば人工知能の“成長促進剤”だ。驚くことに簡単な英語のセンテンスを発信し、また理解することができるということで、例えばゲームの中のマリオはキノピオからコインの集めかたを訊ねて教えてもらい、その後の行動に生かすことができるのだ。

 さらに協力プレイではお互いのキャラクターがそれぞれの特性を良く理解して効果的にコインを集めたり、敵を倒していくことができるという。そしてゲームを繰り返すほどに、キャラクターの動きは効率の良いものになっていくということだ。つまりお互いの動きを観察して学習しているのである。

「キャラクターは例えばゲーム内の箱の壊し方などの物事の因果関係を確率として素早く学びます。(原則ではなく)確率として学んでいるので、次の面に行って世界が変わっても素早く適応できるのです」と、研究チームを主導するマーチン・ブッツ教授は情報サイト「Gizmag」の取材に応えている。このマリオはまさに子どものように好奇心をいっぱいにして周囲を観察し、模倣し、柔軟に学んでいるのだ。

 この研究はもちろん人工知能をゲーマーに仕立て上げるのが目的というわけではない。将来的には自動車の自動運転システムをサポートしたり、人工知能と人間の間を取り持つ高次元のインターフェイス機能が期待されているということだ。よく頑固で融通がきかない人間のことを“ロボットのようだ”と表現するが、このような技術がめざましい進化を遂げているところを見るとそれはもう過去のことになるのかもしれない。


■世界トップクラスのプロ棋士に挑む囲碁ソフト「AlphaGo」

 最近の人工知能の話題でゲーマーとして見過ごせないのはなんといってもGoogle傘下のDeepMindが開発した囲碁ソフト「AlphaGo」だろう。この囲碁ソフトは昨年10月に当時の欧州チャンピオンと対戦し5戦全勝していたことが先頃発表されたのだ。

 オセロやチェスはもはやコンピュータの独壇場だが、最近は将棋でも人間の立場がかなり危うくなってきているのはご存知の通り。それでもマス目の多い囲碁は手数の変化が飛躍的に多いことからまだまだ人間(プロ棋士レベル)に勝つことはできないだろうと考えられてきたのだが、幸か不幸かその差は一気に埋まってしまったことになる。そして今回の件は、技術的にも人工知能の考え方が人間に近づいたことの証になるというのだ。

 人工知能に人間に近い考え方をさせているのがDeepMindの「ディープラーニング」の技術だ。この技術は人工知能に膨大なデータを学習させて総合的な判断能力を高める技術で、将棋や囲碁でいうところの“大局観”を形成するものであるという。つまり一から順番にすべての手を高速で計算するのではなく、形勢に応じて“ざっくりと”有効な手と思われる範囲を限定してその中で集中的に計算するということだろう。

 そして「AlphaGo」は来月に世界トップクラスのプロ棋士である韓国のイ・セドル九段との対局が控えている。はたして勝負の結果やいかに。もちろん今現在でも「AlphaGo」は日々大量の棋譜データを学習して“成長中”であるため、まったく予断を許さないものになりそうだ。
(文/仲田しんじ)


【参考】

・Gizmag
http://www.gizmag.com/mario-video-game-social-ai-humanlike-learning/41637/

・DeepMind
http://deepmind.com/alpha-go.html