「本当にこの時期の私はダメ。もう当分、クラブは握りたくないです」

 そう言って、藤田光里はペロッと舌を出しておどけて見せた。

 1月に行なわれたグアム知事杯女子ゴルフトーナメント(1月21日〜22日/アメリカ・グアム)に出場した藤田。通算7オーバー、29位タイという不本意な結果を受けて、自ら呆れている様子だった。ただ、その表情は昨年のオフとは明らかに違った。

「昨年のオフは、シーズンが始まるのがすごく怖かったんです。でも今年は、ちょっと楽しみな思いのほうが強いですね。私は結構、『不安だ』とか『シーズンが始まるのが怖い』とか言っているほうが、調子がよかったりするので、逆に空回りしないか心配なんですが(笑)」

 一昨年の2014年シーズンは、「大型ルーキー」として注目を浴びた。優勝こそなかったものの、賞金ランキング38位という成績を収めて、1年目からシード権を獲得した。しかし後半戦は大不振に陥って、それが2015年シーズンを前にしての不安につながった。

 そうして2年目の昨季は不安を抱きながら臨んだが、フジサンケイレディス(4月24日〜26日/静岡県)でツアー初優勝。早々に悲願を達成すると、賞金ランキングも最終的には18位という成績を残して、心配された"2年目のジンクス"など味わうことなく、さらなる飛躍を果たした。

 また、優勝したからこそ得た、喜びもあった。

「昨年は(ツアー優勝を飾って)最終戦のLPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ(11月26日〜29日/宮崎県)に出場できた。それで、相当な達成感を得ることができました。初めて最終戦に出場してみて、『ここまで来たんだ』という実感がすごくありましたから。だから、今年もまた、そこに出たいんです」

 最終戦のツアーチャンピオンシップは、その年のツアー優勝者と、大会前週までの賞金ランキング25位以内の選手といった出場制限がある。それだけ特別な試合となるが、実際に出場することによって、その"特別感"を身にしみて感じることができたようだ。

 そんな充実感を得る一方で、昨季も少なからず苦労があった。「早く勝ちたい」と思うあまり、序盤戦は精神的にかなり切羽詰まっていたという。

「正直『勝ちたい』という気持ちは、1年目よりも2年目の昨季のほうが強かったかもしれません。開幕からずっと『早く優勝しないといけない』って思っていました。周囲からもせかされましたし......。結果的には、早く勝ててよかったんですけどね。ただ、問題は次。2勝目です」

 優勝を手にすることができるのは、もちろん実力があってこそだが、初優勝というのは、運や勢いで転がり込んでくることがある。しかし、2勝目を手にすることは、そう簡単なことではない。事実、初優勝を遂げてから、2勝目を挙げられずに苦しんでいる選手は数多くいる。藤田も1勝目を挙げて以降、2勝目を目指してきたが、そのチャンスさえなかなか得られず、その難しさを痛切に感じている。

 だからこそ、2勝目にかける藤田の思いはかなり強い。今季の目標も「2勝目です」と言い切る。

「今季の目標は、2勝目です。それ以上の結果も求めていますけど、2勝目の"壁"を破らない限り、その先はないのかなって思っています。それだけ、その"壁"が厚いこともよくわかっています」

 その"壁"、2勝目を手にするためにはどうすればいいのか。藤田は、苦手なシチュエーションを克服することが近道であると、考えている。

「昨年から徹底して練習しているのが、ピンまで残り30〜80ヤードくらいまでのショットを、その距離に合わせて正確に打ち分けることです。昨年は80ヤード以内の距離を残すと、そのホールはすべてボギーになるんじゃないかっていうほど、その距離のショットが下手だったんですよね......」

 微妙な距離のショットやアプローチが課題であると感じたのは、プロになってからだという。それは、藤田にとって大きな悩みだったが、容易に克服できるような課題ではなかった。そのため、昨季までは「基本的に無理。ピンに寄せられない」と考えて、その距離をできるだけ残さないように心掛けてプレーしてきた。だが、そうしたマネージメントを続けていては、コース攻略がままならないうえ、限界もある。

「例えば、ティーショットで会心の当たりをして、普段よりも10ヤード先に飛んでしまったら、そのせいで苦手な中途半端な距離が残って、ボギーを叩いたりしてしまうんです。それは、技術不足の私の責任なんですが、いいショットをしておきながら、それでスコアが伸ばせないなんて、おかしな話だし、私にとってはすごく悔しいこと。ですから、80ヤード以内の距離でも、確実にパー、さらにバーディーがとれる技術を身につけなければいけないと思っています」

 そして今、まだ完全とまでは言えないものの、練習を積み重ねてきた成果は出始めているという。それによって、自信も芽生え始めている。

「苦手な距離からも、ようやくパーがとれるようになってきたのは、昨年の暮れくらいからですかね。それで、自分なりに自信がついてきました。そこをさらに強化していけば、ロングホールでもしっかり攻めていけるのかなって思っています」

 克服すべき課題は、もうひとつある。

「ここぞ、というときに決め切れるパッティングです。長い距離のパットをひとつ入れるのと入れないのとでは、まったく違います。長い距離のパットが入るのは運もあると思いますが、今の自分には運も実力もありませんから、パット技術は高めていきたい。それには練習を重ねることも大切ですが、気持ちの面も大事なのかな、と思っています」

 それらの課題を克服すれば、2勝目の"壁"を乗り越えられるのか。藤田は、「さらに必要なことがある」と言って、こう続けた。

「悩まないこと、です。初優勝してから、特にショットで悩むことがすごく多かったですから。プロになるまでは、あまり悩んだことはなかったんですけどね。とにかく今年は、ワンショットごとに、納得しながら打てるようにしたい。それが、毎試合できればいいと考えています。そういったプレーを続けることができれば、優勝できなくても、上位争いには絡んでいけると思うんです。昨季の後半は、それができていないことがすごく悔しかったですから」

 ツアー参戦1年目でシード権を獲得し、2年目で初優勝を飾った。ここまでの道のりは、若手プロとして十分に評価できるものだ。が、藤田はその結果に決して満足していない。人知れず、悔しい思いをしていることが多かった。

 常に貪欲な姿勢を見せる藤田。3年目を迎える今季、より成長した彼女がこれまで以上にスポットライトを浴びて、女子ゴルフ界を一段と沸かせてくれるに違いない。

text by Kim Myung-Wook