藤田孝典 NPO法人ほっとプラス代表理事が、「下流老人の現状と対策」と題し、日本記者クラブで講演した。日本の貧困率は16.1%でOECD加盟34カ国のうち6番目に高く、特に高齢の貧困者は700万人に達すると指摘した。「

写真拡大

藤田孝典 NPO法人ほっとプラス代表理事(聖学院大特任准教授)が、「下流老人の現状と対策―知っておきたい知識とノウハウ」と題し、日本記者クラブで講演した。日本の貧困率は16.1%でOECD加盟34カ国のうち6番目に高く、特に高齢の貧困者は700万人に達すると指摘。「下流老人」化を防ぐためには、社会保障・福祉制度の活用が不可欠であり、まず生活保護制度を正しく理解する必要がある。正当な理由があり、収入が最低生活費に達していなければ、「他人に迷惑をかけない」「お上の世話にはならない」と言う意識は捨て、生活保護を受給すべきだと訴えた。

藤田孝典氏は、生活困窮者を支援する反貧困ネットワーク埼玉代表で、厚生労働省社会保障審議会特別部会委員も務める。昨年発売された『下流老人・一億総老後崩壊の衝撃』(朝日新書)がベストセラーとなった。発言要旨は次の通り。

日本全体の貧困率(統計上の中央値の半分に満たない所得しか得られない人の割合)は16.1%で、OECD加盟34カ国のうち6番目に高い。所得は1人暮らしの場合約122万円未満、2人暮らしで約170万円未満、3人世帯では約210万円未満に相当する。生活保護費(首都圏在住の1人暮らし高齢者で約150万円、2人暮らし、3人暮らしだと増額される)よりむしろ低い水準だ。

特に高齢者(65歳以上)の貧困率は22.0%と高く、単身の高齢者の貧困率は4割以上に上る。これら「下流老人」は約700万人存在すると見られ、今後も増える傾向にある。その暮らしは、家賃が払えず、友人宅やネットカフェ、近所の公園などで漂流生活をしている。病気になっても、医療費が払えないため通院や入院治療を拒否し、痛みに苦しみながら自宅療養をしている。

15年5月の高齢者11人が犠牲になった川崎市簡易宿泊所火災事件は、多くの高齢者が住居を追われ、狭く危険な簡易宿泊所へ追い込まれる実態を象徴。同年6月の東海道新幹線で高齢男性が自殺を図った事件は、低い年金支給額による経済的困窮が要因となった。生活困窮高齢者の心中事件も後を絶たない。

普通の市民が下流老人へ転落する要因として、(1)病気や事故による高額な医療費の支払い、(2)子供のパラサイトによる共倒れ、(3)熟年離婚による資産分与、(4)認知症による防衛力の低下―など4つのパターンがある。

下流老人化を防ぐためには、社会保障・福祉制度の活用が不可欠であり、まず生活保護制度を正しく理解する必要がある。正当な理由があり、収入が最低生活費に達していなければ、生活保護を受けられる。住民票(住所)がなくても申請でき、労働収入や年金があっても受けられ、生活に必要な資産は手放す必要はない。家族や親族と同居していてもOK。最寄りの福祉事務所に相談してほしい。「下流老人」(約700万人)のうち生活保護を受けているのは100万人程度にとどまっていると推計される。国は「国民の健康で文化的な最低限度の暮らしに必要な費用や生活水準」を規定し、憲法にも定められている。

「他人に迷惑をかけない」「お上の世話にはならない」と言う意識は捨て、「お互いさま」の精神で助け合うべきだ。一方的な「自己責任論」は排す必要がある。助けたい、支援したい人も大勢いる。若い世代も、老後に必要となる生活費をシミュレーションし、想定外の事態に備え、可能な限り貯蓄する必要がある。(八牧浩行)