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宇宙航空研究開発機構(JAXA)と三菱重工業(MHI)は2月10日、種子島宇宙センターにてY-1ブリーフィングを開催、X線天文衛星「ASTRO-H」を搭載したH-IIAロケット30号機の準備状況について説明した。同ロケットの打ち上げ時刻は12日の17時45分に決定。打ち上げウィンドウは17時45分〜18時30分に設定されている。

本日の種子島の天候は快晴。気温も暖かく、絶好の打ち上げ日和だったが、心配なのは、今後、天候の悪化が予想されていることだ。種子島宇宙センターが発表している気象情報によれば、11日夜から曇り始め、12日の打ち上げ時間帯には、風速10〜13m/s程度の強風になる見込みだ。

小惑星探査機「はやぶさ2」を打ち上げたH-IIAロケット26号機のときは、打ち上げの2日前に延期が決まっていた。筆者は今回も延期になるのでは……と思っていたのだが、今回、延期せずに打ち上げを決定したのは、同じように見える悪天候でも、上空の雲の氷結層に決定的な違いがあったからだ。

H-IIAロケットの打ち上げには、風速、雨量、発雷など、天候による制約条件がある。ただ、雨や風については、それほど問題になることはない。この時期の種子島で延期の原因になることが多いのは、氷結層を含んだ雲が上空にあることだ。この中にロケットが突っ込むと、機体に雷を受ける恐れがあるため、打ち上げることが出来ない。

MHIの平嶋秀俊・MILSET長によれば、今回は氷結層の心配はなく、「予報としては打ち上げ可能な状態」と判断、打ち上げの実施を決めたという。

なお、今回の判断に直接影響は無かったが、氷結層に関する天候制約を見直したとのことだ。これまでは、氷結層を含む雲の厚さが1.8km以上あるときに打ち上げを延期していたが、今回からは、レーダーで雲の内部状態を測定。もし厚さが1.8km以上だったときでも、反射強度が規定以下であれば、打ち上げを可能とした。

今までH-IIAロケットでは、氷結層による延期が8機で発生していたそうだ。これを改めて評価したところ、その半分は打ち上げが可能なケースだったとのことで、より確度を高めるために、新方式を導入したというわけだ。延期を減らすことができれば、コストダウンに繋がるというメリットがある。

また、今回の打ち上げにおいて、ロケット側で注目したいのは、低衝撃型衛星分離部の試験が実施されることだ。従来、衛星の分離には火工品が使われていたが、ボルトを切断するときの衝撃が大きく、その衝撃に耐えられるように衛星を開発する必要があった。新方式では、これをラッチ機構に変更。ゆっくり解放されるため、衝撃が小さい。

今回は初の軌道上実証ということで、ASTRO-Hの分離には使用しない。ASTRO-Hを従来型の装置で分離した後で、新型の装置によるダミー衛星の分離試験を行い、衝撃を計測する計画だ。なおダミー衛星は実際に分離を行うものの、機械的な仕組みで飛び出さないように設計されており、デブリが増えることは無い。

低衝撃型衛星分離部の開発は、「基幹ロケット高度化」プロジェクトの一環として実施されているもの。同プロジェクトの中の、「静止衛星打ち上げ対応能力の向上」と「地上設備の簡素化」の2項目は29号機ですでに実施済みであり、今回の分離試験で、実機によるデータ取得が全て完了することになる。

搭載するASTRO-Hに関しては、プレス公開時の記事を参照して欲しい。JAXAの高橋忠幸・ASTRO-Hプロジェクトマネージャは、ASTRO-Hを「X線天文学の旗艦ミッション」と表現。現在の心境を「ASTRO-Hがもたらす新しいデータは、世界中の科学者が待ち望んでいる。彼らの顔を思い浮かべながら、打ち上げと、それから始まる運用に集中したい」と述べた。

(大塚実)