中国国営通信社・新華社は8日付で、中国共産党の習近平総書記(国家主席)が、6日に台湾南部で発生した震災について「見舞いと哀悼の言葉」を発表したことで、「台湾各界の人士が絶賛した」と報じた。しかし10日になっても、台湾政府で大陸側との窓口である行政院大陸委員会は、大陸側の各界の支援については感謝のメッセージを示したものの、習氏の「見舞いと哀悼」については言及していない。(イメージ写真提供:123RF)

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 中国国営通信社・新華社は8日付で、中国共産党の習近平総書記(国家主席)が、6日に台湾南部で発生した震災に対して「見舞いと哀悼の言葉」を発表したことで、「台湾各界の人士が絶賛した」と報じた。しかし10日になっても、台湾政府で大陸側との窓口である行政院大陸委員会は、大陸側の各界の支援については感謝のメッセージを示したものの、習氏の「見舞いと哀悼」については言及していない。

 台湾南部でマグニチュード6.7の地震が発生したのは6日未明だった。被害が特に大きかったのは台南市で、17階建てのビル倒壊では、10日前後も行方不明者の捜索が続いている。

 日本の安倍首相の反応は極めて早く、6日午前の時点で「亡くなられた方々へのご冥福を心からお祈りするとともに、被害に遭われた方に対し、心からお見舞い申し上げます」、「この困難な時に日本は台湾に必要な支援を何でも供与する用意があります」とのメッセージを発表した。

 習氏の談話は翌7日に発表された。習氏は「犠牲者に沈痛な哀悼の意を表し、被災した人々にお見舞いを申し上げます」、「(台湾海峡)両岸の同胞は、血は水よりも濃いという一家の人々です。(私は、あるいは中国共産党は)各方面の援助を提供したいと望んでいます」などと語った。

 新華社は8日付の記事冒頭部分で「(習氏の発言にたいして)台湾各界の人士は絶賛した」と紹介。例としてまず、台湾を訪問した大陸側のキリスト教団体の幹部に対して、台湾側団体の責任者が、習氏の談話に「非常に感動した。習近平先生が台湾の同胞に関心を寄せ、大切に思っていることを感謝します」と述べたと紹介した。

 新華社によると、台湾側団体の中華両岸労働関係発展協会の姚江臨理事長も、習氏の言葉に対して「私個人としては、非常に敬服した」と述べたという。姚理事長は、震災発生時の台湾側と大陸側の連携には、すでに実績があると説明。2008年の四川大震災の際に中華両岸労働関係発展協会は大陸側に支援物資を提供した。6日の地震では、直後に四川省総工会(四川省労組)から電話があり、必要とする支援はないかと尋ねられたという。

 しかし、新華社記事の「派手な見出し」とは裏腹に、台湾側の政府機関は、それほど大げさな反応を示していない。大陸との窓口機関である行政院大陸委員会は8日、「われわれは、大陸側が義捐(義援)などでわが方が震災への対応に協力してくれていることを感謝します」とのメッセージを発表したが、習氏の「お見舞い」の言葉には言及しなかった。

 行政院大陸委員会は、大陸側から差しのべられた支援の例として、大陸側の赤十字に義捐金200万元、08年の四川大地震で被害を受けた同省北川県と蘆山県がそれぞれ義捐金100万元を挙げ、謝意を示した。

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◆解説◆
 かつて、中国の胡錦濤国家主席が、下野中の国民党の連戦主席と会談した時には、双方が「共産党総書記」、「国民党主席」の肩書を使った。双方とも相手側を「国家」として認めてない以上、「国家主席」、「総統」の呼称は使えないからだ。共産党と国民党という政党の存在は双方とも認めているため「総書記」や「主席」の肩書には問題がない。

 習近平主席が2015年11月に台湾の馬英九総統とシンガポールで会談した際には、双方が「大陸の指導者」、「台湾の指導者」と呼ばれた。双方の統治機構における正式な肩書は使えなかったが、「党の指導者」ではなく「地域を実行支配している組織の指導者」との言い方は、それまでよりも一歩、踏み込んだ形だった。

 しかし、習近平主席は上記の「見舞いと哀悼」の言葉で、「共産党総書記」の肩書を使った。台湾側に「震災を政治目的で利用」との見方が発生することを予防したと考えられる。

 しかし台湾側の反応はなく、8日になって新華社が「台湾各界の人士が絶賛」との記事を発表することになった。(編集担当:如月隼人)(イメージ写真提供:123RF)