たかがランチ、されどランチ

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職場でのランチ。同僚とわいわい食べるのもいいが、微妙な人間関係が煩わしいという人も。たかがランチ、されど仕事のパフォーマンスにも関わってくるとしたら、侮れない。

同僚とのランチは「必要」?

第一生命経済研究所が2014年に全国の企業に勤務する男女1440人(大企業と中小企業それぞれ720人ずつ)を対象に行った調査によると、職場でのランチタイムを「職場の人と過ごすことが多い」と答えた人は、男性が40%未満、女性が約52%で、大企業よりも中小企業で割合が低く、全体に2010年に比べて減少傾向にあることがわかった。また、同僚とのランチが「必要だと思う」と回答した人は約40%、「楽しい」と答えた人は55%だった。男女とも非管理職より管理職の方が、また、中小企業より大企業に勤めている人の方が、同僚とのランチを肯定的に捉えている傾向が強かった。

海外の研究では、同僚とのランチが生産性向上につながる可能性も報告されている。

米コーネル大学のケビン・ニッフィン客員准教授ら研究チームは、大都市圏にある50以上の消防署を対象にアンケート調査を実施。管理職395人から回答を得た。消防隊の成果に対する評価と、週4日勤務のうち一緒に食事をする回数を聞いたところ、一緒に食事をする頻度が高いチームは総じて評価が高く、逆に、あまり一緒に食事をとらないチームの評価は低い傾向にあった。とくに協力が必要な作業では、評価に倍近く差がついた。

消防署を調査対象に選んだのは、消防士は緊急時に備えて食事をとるときも署内で過ごすことが多いこと、キッチン設備があることなどから、同僚と一緒に食事をする機会も多いと考えたため。実際、自分たちで食事を用意して一緒に食べるケースが多く、既婚の隊員の中には自宅で食事をして、職場で2度目の食事をとるという人もいたという。

ニッフィン氏は、「一般の企業でも、社員食堂を設けるのは『支出』ではなく、社員の生産性向上への『投資』と考えるべきだ」と語る。研究論文は2015年11月に発行された『Human Performance』誌および『Harvard Business Review』オンライン版12月号に掲載されている。

居心地のよいスタイルを模索しよう

しかし一方で、職場や学校で一人ランチをするのが怖い、あるいは誘われるのが苦痛、という「ランチメイト症候群」という言葉が生まれるほど、「職場ランチ問題」は深刻なケースに発展する場合もある。

ネット上の掲示板で「職場ランチ」と検索すると、「仲間に入れてもらえなくて辛い」という相談のほか、「いつも同じメンバーなので話題が尽き、最近は終始無言」「先輩の顔色を伺いながら、聞きたくもない話に笑顔でうなずくランチタイムは苦痛以外の何物でもない」という悩みも。

こうした悩みは主に女性に多いが、前述のニッフィン氏も「行き過ぎは禁物」と指摘している。消防隊員の間でも、いつも同じメンバーで食事しているため社会から孤立してしまう、新しいメンバーが仲間に入りづらい、「ランチ派閥」ができる、といった問題が見られたという。

アンチエイジング医師団の一人で、AACクリニック銀座院長の浜中聡子医師は、「ほどよい距離を保ちつつ、同僚や上司、部下とランチで『美味しさを感じつつ楽しさを分かち合える』コミュニケーションが取れれば一番ですが、この人間関係ほど、人生の喜びにもストレスにもなるものはありません」と言う。浜中医師は、心身両面からのケアでウェルエイジングを提唱している。

「前向きに相手を受け入れる姿勢で...というスタンスは大切ですが、過剰に適応しようとする必要はありません。長い目で見て、自分がもっとも居心地のいいスタイルを模索していきたいものですね」[監修:浜中聡子 AACクリニック銀座院長]

参考文献
Eating Together at the Firehouse: How Workplace Commensality Relates to the Performance of Firefighters
DOI: 10.1080/08959285.2015.1021049

(Aging Style)