アリゾナ州のTPCスコッツデール(パー71)で行なわれたウエイストマネジメント・フェニックスオープンで、松山英樹(23歳)が米ツアー2度目の優勝を飾った。首位のダニー・リー(25歳/韓国)と3打差の2位タイで迎えた最終日、序盤で崩れたリーに代わって、途中からトップに立った同組のリッキー・ファウラー(27歳/アメリカ)に土壇場で追いつくと、そのファウラーとの4ホールに及ぶプレーオフを見事に制した。

「今季は『シーズン中に2勝目を挙げる』というのを目標としていましたが、今回思わぬ形で優勝することができました。結果としては、時の運というか、たまたまリッキーが2回もミスをしてくれたので勝てた、というだけ。自分から引き寄せた優勝という感覚はまったくないですね。でもまあ、"勝つ"ことはすごく大変なことなんだな、という思いがずっとあったので、どんな形であれ、勝てたことに関しては本当にうれしいです」

 松山にとって、2016年初戦となった前週のファーマーズ・インシュランスオープン(1月28日〜31日/カリフォルニア州)は、まさかの予選落ちを喫した。不安視していたショットが乱れて、2日目に大きくスコアを崩してしまったのだ。そして今大会でも、試合前はショットに不安を抱えたままだった。

「ショットに悩んでいる? そうですね。ショットも、アプローチも、パターも......。ショットが安定していれば、自然と成績もよくなると思うんです。そのうえで、微妙なパットが入れば、一昨年(4位タイ)、昨年(2位タイ)のように上位に行ける。でも今は......。試合になってみないとわからないけど、先週よりも自信を持てずに試合に臨む感じですね」

 ところが初日、前週と同様、言葉とは裏腹に松山は絶好のスタートを切った。10番スタートの2ホール目、11番(パー4)で7mのバーディーパットを決めると流れをつかんだ。1万5000人収容のスタンドがある名物ホールの16番(パー3)でも、「ショットが不調だったから緊張した」というティーショットをピンハイ2mにピタリ。大観衆の中でバーディーを奪って、さらに勢いに乗った。最終的には8つのバーディーを積み上げて(2ボギー)、暫定ながら(※)6アンダーでトップタイに立った。
※早朝、霜が降りた影響でスタートが1時間遅れて、日没により33名の選手がホールアウトできなかった。

「(ショットに関しては) う〜ん......いいところも増えてきていると思うんですけど、不安を抱えながら打っている。それでも微妙なパットが決まってくれた分、スコアが伸びた。まあ、先週も初日はよかったですからね。そういう意味では、明日がカギになる。明日も出足からいいスタートが切れるように、しっかりと準備していきたい」

 2日目、心配していたショットがやや乱れた。しかし、アプローチとパッティングでしのいで、大きく崩れることはなかった。7アンダーとひとつスコアを伸ばして、トップと3打差の4位タイという好位置をキープした。

「(後半は風も強くなり)コンディション的にも少し難しくなりましたけど、自分の状態がよくないので、ほんとパーを取るのに一生懸命だった。ショットはぜんぜんですね。フェアウェーには半分しか行っていないし、たとえフェアウェーに行っても、そこから打ったショットがまともにピンまで飛んでいかなかった。その中で、よくこの順位に踏みとどまれたな、という感じ。

(優勝については)チャンスはあるかなと思うけど、優勝争いというプレッシャーがかかった状況で、今のようなしのぐゴルフではなかなか勝てないと思う。まあ、あまり高望みせずにやっていけたらな、と。それでも昨年、ここで負けたことはすごく悔しかった。それ以降、常に勝てる準備をしっかりしてきたつもりだったけど、なかなか勝つチャンスを作れなかった。そして今年になって、再びこの試合でいいチャンスが巡ってきた。そんな感じもしているので、昨年の悔しさを晴らせるようにがんばりたい」

 3日目は、これまで不調なショットをカバーしてきたパットが不振だった。1番(パー4)で9mのバーディーパットを沈めて幸先のいいスタートを切ったものの、以降は3パットを重ねて、ラウンド中も苛立ちの表情を隠さなかった。ただ、そんな中にあっても、この日はグリーンを外したのがわずかに2回と、ショットが冴えて「68」をマーク。10アンダーまでスコアを伸ばして、順位もトップと3打差の2位タイに浮上した。

「アイアンショットがだいぶ戻ってきたというか、なんとかグリーンをとらえられるレベルにはなったんで、それで何とか踏ん張れたと思います。逆に(この2日間と違って)今日はパットが入らなかった。それが、残念だったな、と。(パットは)そんなに悪くはないんですけど、3パットが増えると、不安にもなってきますからね。

(2位タイという)この位置は悪くないと思います。これだけティーショットに不安を抱えていたら話にならないかもしれないけど、最後まで優勝争いに加わっていけるようにがんばりたい。そうした状況の中でプレーできるのも本当に楽しみですから」

 迎えた最終日。トップのリーが、2番、3番と連続ボギーを叩いて後退。代わって、後半の10番、13番、15番とバーディーを重ねたファウラーが一歩抜け出した。が、1オン可能な17番(パー4)のティーショットで、ファウラーのボールは無情にもグリーン奥の池へ。2打差で追う松山がここでファウラーをとらえると、プレーオフに入ってからも粘り強いゴルフを見せた松山がファウラーを振り切った。

「15番で(バーディーを奪ったトップの)リッキーと2打差になって、16番で(自分が)バーディーパットを決められなかった時点で、『やっぱり今年も(優勝は)無理かな』と思った。でもそのあと、17番でリッキーがティーショットで思わぬミスをした。まさか池に入るとは思っていなかったけど、あれで『まだ(優勝も)いけるかな』と気持ちを切り替えられた。それが、大きかったですね。プレーオフでは、99%僕(の応援)じゃない雰囲気になっていましたけど(笑)、それで逆に『勝ってやる』という強気な気持ちになれて、がんばることができました。

 最後は(バーディーパットを外して)いい終わり方ではなかった。負けた人のような(ウイニング)パットでしたけど(笑)、こんな勝ち方もあるんだな、という感じでした。まだまだ自信を持てないところもあるので、今後はどれだけ自信を持ってやっていけるかがポイント。今度(勝つとき)は、リードした展開で優勝できるようにやっていけたらいい。次はメジャー制覇? そこを目指してがんばりたい、というのはあるけど、それに向けても自分が課題としているものがあるので、それを克服できるかどうか。それには、まだまだやるべきことがたくさんあると思う」

 決して万全な状態ではなかった。松山はずっと不安を抱えていた。にもかかわらず、米ツアーで2度目の優勝という快挙を遂げた。こうなると、いよいよ日本人初のメジャー制覇という期待も高まってくる。ゴルフジャーナリストの三田村昌鳳氏は、その可能性についてこう語った。

「今回の優勝では、松山自身がやろうとしてきたスイングと、それに伴う肉体的なものが、試合でもだんだんとうまく出せるようになってきた、というのが大きい。これまでは、練習ではできても、いざと言うとき、例えば優勝争いでプレッシャーがかかったときには、昔のスイングの癖とかが出てしまっていた。体の向きであったり、構えであったり、何かしらね。それが出ないように、ずっと我慢して、一生懸命練習してきて、今やっと求めてきたスイング、体の使い方が自分のモノになりつつある。それで、結果が出た。

 これは、本当に大きなこと。プロにとって、自分がやりたいことができて、結果が出るということは、一番いいことだから。もちろん本人的には、まだ満足できなかったり、半信半疑だったりする部分はあるだろうけど、これまで我慢してやってきたことが実を結んだわけだからね。『これでいいんだ』という自信にもつながったはず。ということは、新たな指針というか、次のステップに向かうことができる。今回の優勝で、間違いなく松山は変わる。もともと勝てるポテンシャルは持っているわけだから、メジャー大会制覇への期待もすごく膨らむよね。下手をすれば、マスターズの前にももう1勝くらいする感じがするし、それだけの勢いが松山にはついたと思う」

 またひとつ階段を上がった松山。今季メジャー第1弾のマスターズ(4月7日〜10日/ジョージア州)では、どんなプレーを見せてくれるのか。その日が来るのが待ち遠しい。

武川玲子●協力 cooperation by Takekawa Reiko text by Sportiva