『王とサーカス』米澤 穂信 東京創元社

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 BOOKSTANDがお届けする「本屋大賞2016」ノミネート全10作の紹介。今回、取り上げるのは米澤穂信・著『王とサーカス』です。

 国王をはじめとした王族を、皇太子が晩餐会で射殺。皇太子自身も、殺害に使用したその銃を自分へ向け、自殺する――2001年に起きた衝撃的な「ネパール王族殺害事件」。本作はフィクションではありますが、この事件を下敷きとし、物語の世界が史実とリンクする内容となっています。

 ワケあって、新聞記者からフリーライターに転身した主人公・大刀洗万智は『月刊深層』海外旅行特集のための事前取材で、ネパール・カトマンズを訪問。彼女が宿に決めた「トーキョーロッジ」で、アメリカ人学生のロブ、日本人僧侶の八津田、インド人ビジネスマンのシュクマルといった宿泊客たち、そしてストリートチルドレン同然である物売りの少年・サガルと出会います。

 そんな中で王族殺害事件が発生。万智は、トーキョーロッジの経営者・チャメリの紹介で、宮殿の警備に就いていたラジェスワル准尉に単独インタビューするチャンスを掴みますが、大きな情報を得ることができなかっただけでなく、インタビュー後、准尉が何者かに殺されてしまいます。遺体の背中には「INFORMER」(密告者)の傷文字......。彼を殺したのは、誰なのか? そして、この事件と王族殺害事件とは、どう関係するのか? 万智は、真相を記事にすべく調査を開始します。

 著者の米澤穂信さんは、1978年生まれで、大学卒業後まもない01年、『氷菓』が角川学園小説大賞奨励賞を受賞。14年には、山本周五郎賞を『満願』で受賞しており、エンタメ小説界の第一線に立つ作家といえるでしょう。

 また、本作の主人公・大刀洗万智は、04年に出版された米澤さんの小説『さよなら妖精』の登場人物でもあり、さらに昨年12月には彼女を主人公としたシリーズ第2作『真実の10メートル手前』も発売されています。これらのシリーズと併せて読めば、より本作を楽しめるのではないでしょうか。